百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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帝国激震の章

233.救援

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 時は少しだけ巻き戻り、クローバーの六人が帝都近くの森に設置してある転移魔法陣に転移して来た時合。


「ん?んーーッ!?」


 転移するなり、未来が素っ頓狂な声を上げる。何事かと訝しげる皆に対し、未来は帝都の方を指差した。


「何かすっごい強い気配を感じるよ!かなりヤバそうな奴!!」


 パッシブスキルの『気配察知』で瞬時に気配を悟った未来。その未来が「ヤバそうを奴」と言うくらいなので、相当危険な何かが居るのだろうと皆は顔を見合わせる。


「それって……帝都が何かに襲われてるって事?」
「え…………」


 思わず絶句してしまうリズ。リズにとって帝都とは生まれ育った街であり、家族が暮らす街だ。そして皇女である自分を慕ってくれる人々が大勢住む、大切な街なのだ。その帝都が襲われているなど、あってはならない事だった。


「うーん、此処からだとちょっと………」


 一言そう呟き、未来が森を出る為に走り出す。愛莉達は再び互いの顔を見合わせ、すぐに未来を追った。
 元々あまり森の深い場所ではなく、比較的入口に近い場所に魔法陣を設置している為、少し走るとすぐに森を抜ける。森を抜けた瞬間、帝都の巨大な外壁が視界に映り込んだ。


「どう未来?」
「あっち!帝都の中じゃなくて外っぽい!でも結構近いかも!」


 そう言って未来が再び指差したのは、北の方角。とりあえず帝都の中では無いと聞き、リズは胸を撫で下ろす。とは言え、クローバー最強の実力者である未来が「すっごい強い気配」とまで言い切ったのだ。つまりかなりの危険が帝都に迫っている事になる。


「アイリ、どうするの?」
「未来の話は当然信じるとして、相当強いモンスターか何かがすぐ近くに居て、誰かが戦ってる可能性が高いよね」


 未来の話では、一応帝都の外ではあるものの、帝都にほど近い場所から気配を感じるのだという。そんな距離に強力なモンスターが居て、冒険者達が迎撃に出ていない訳が無い。


「もしかしたら例の六ツ星モンスターかもしれないから、とりあえず様子だけでも見に行こっか。横取りは出来ないけど、苦戦してるようなら助けに入った方がいいし」


 愛莉の提案に頷く未来達。どの道、今日この帝都に来たのは、六ツ星モンスターの情報を求めて来たのだ。それがもしかすると実物が近くに居て、状況次第では自分達が戦闘に介入出来るかもしれない。もちろん横取りをする事は出来ないし、そんなつもりは微塵も無いが、仮に苦戦していた場合は共闘してでも倒さなければ、目と鼻の先にある帝都に危険が及ぶ。

 魔法鞄マジックバッグから『魔車』を取り出し、急いで乗り込む少女達。未来が運転席に座り、急いで走り出す。
 

「レッツ・ゴーーー!」


 いつも向かう東門では無く、気配のする北側に向かって魔車を走らせる未来。既にギアは高速に入れているので、速度は40キロ以上出ている。
 最初はスピードに怖がっていたリーシャやサフィー、エストだったが、流石に慣れたらしく、以前のように騒いだりしない。

 外壁に沿うようにして魔車を走らせると、やがて外壁の角へと到達する。その先は広大な平野が続き、更に気配のする方へ走ると、何やら黒い物体がフロントガラス越しに見えた。


「何よあれ」
「ん~……モンスターかしら?」


 まだ遠くてよく分からない。だが距離が縮まるにつれて、それは鮮明になって来る。


「うぉぉぉーーーッ!!ドラゴンじゃないのアレ!?ブラックドラゴンじゃん!!」


 ファンタジー世界ではおそらく、スライムに並んで最も有名な存在。ゲームなんかだと、レベルの低い序盤には出て来ず、終盤に差し掛かった辺りから登場する超強力モンスター。もちろん未来のテンションは無駄に上がってゆく。


「誰か戦ってる………」


 そのブラックドラゴンと戦っている一組のパーティ。遠目からだが、あのパーティには見覚えがあった。


「あっ!あれって前に帝都のギルドで会った、ナントカナントカって人達じゃん!」
「ナントカナントカって何よ!?ツヴァイハンターでしょ!」
「違うわサフィー、ツヴァイファンタよ~」
「あの……ツヴァイフェッターなのだけど」


 何とも緊張感の無い会話を続ける未来達だが、事態は急変する。黒き竜の翼が光った次の瞬間、ツヴァイフェッターの五人の手足が切断され、地面に転がったのだ。


「え………」
「嘘……でしょ……」


 驚愕の表情を浮かべるクローバーの少女達。だがすぐに事の重大さに気付き、未来が魔車を停める。
 そしてすぐさま全員降りると、愛莉が急いで魔車を魔法瓶マジックバッグに収納。そして全員で手を繋ぎ、未来の短距離転移ショートワープで近くまで転移し、身体の欠損したツヴァイフェッターの五人をエストのエクストラスキル【身体回生リザレクション】で回復したのだ。

 
「貴女たちは……クローバー……」


 自分の身体が完全に回復している事に驚きながらも、ミルファが何とか口を開く。


「ツヴァイフェッターの皆さん、あの黒い竜との戦闘ですけど、わたし達クローバーが代わってもいいですか?」


 愛莉の言葉を聞き、目を見開くミルファ。だがすぐに、ゼレットが怒りの形相で大声を上げる。


「ふ、ふざけんな!!俺達ツヴァイフェッターでも勝てなかった相手だぞ!?てめえ等みてぇな雑魚が勝てる筈無えだろうが!!」
「ま、待ってゼレット!」


 今にも飛び掛かって来そうな勢いのゼレットだが、リュアーネが腕を引っ張って止める。


「離せよリュアーネ!」
「もう!こんな事をしてる場合じゃないでしょ!!?」


 思わず大声を上げるリュアーネ。いつも穏やかな笑顔を浮かべているリュアーネが大声を上げたのを初めて聞いたゼレットは、目を大きく見開いて驚く。


「クローバーの皆さん、先ずは助けてくれてありがとうございます」


 そう言って深々と頭を下げるリュアーネを見て、ゼレットがバツの悪そうな表情を浮かべる。
 そう、自分達はたった今、この少女達に救われたのだ。それなのに礼の一つも言わずにいきなり怒鳴りつけるなど、我ながら最低だったと珍しく反省する。


「でも……残念だけどゼレットの言う通りなの。先ほどの奇跡のような回復魔法は凄かったけど……バルやミルファの攻撃もほとんど効かなかった相手だもの……貴女達が勝てるとは思えないわ。それよりも、わたし達と一緒に今すぐ逃げーーーーー」


 その時、無数の紫電を食らっている黒き竜の口から、苦しそうな咆哮が上がった。


『ギャオォォォォォォーーーーッ!!』


「………え?」
「まさか……苦しんでるというの?」


 痛覚など無い筈の黒き竜が、明らかに苦しそうな声を上げている。


「何なのだあの召喚獣……我の魔法を遥かに超える威力の攻撃を……」


 ラギアの視線の先で、黒き竜に無数の紫電による攻撃を行っているのは、赤、紫、青の三尾を持つ、同じく三色の羽に覆われた美しい巨鳥。
 これはリーシャの使役する『雷鳥』が、リーシャのエクストラスキル『召喚獣神化』により文字通り神化した『雷鳥』改め『雷鳳』。その攻撃力は今までの比ではなく、中聖霊の力もあって更に凄まじい攻撃力を実現している。


「任せて貰えますか?」


 誰もが雷鳳ライの攻撃に目を奪われる中、愛莉が再度訊ねる。すると、バルムンクは「ふぅ……」っと小さく息を吐き出し、クローバーの皆に視線を向けた。


「ああ、この場は君たちに任せるよ。残念だけど我々では、何度戦ってもあの竜には勝てない」


 一言そう発し、踵を返すバルムンク。


「お、おいバル!?」
「行こう。ここに居ては、彼女達の邪魔になる」


 そう言って歩き出すバルムンクを、ゼレットとラギアが渋々と追う。そして最後に残ったミルファとリュアーネがーーーー


「同じ女性として、貴女達の勝利を祈っているわ」
「失礼な事を言ってごめんなさい……みんな気をつけてね」


 最後にそう告げて、バルムンク達の後を追うように去って行った。


「うーん、実はそんなに嫌な人達じゃないのかな?」
「かもね」
「そう?あたしはあの筋肉ムキムキの男がムカつくわよ」
「あらあら、サフィーの男性嫌いが益々膨れてしまうわね~」
「サフィーちゃんは今のままでいいと思う」
「そうよね。男性を好きになるサフィーなんて想像出来ないもの」
「あんたらぁ~~ッ好き勝手言ってくれるじゃないのよ!!」

 そう言って笑い合う少女達。ツヴァイフェッターですら完敗した相手を前にしてもなお、誰も恐怖を感じていない。
 レベルが上がり、エクストラスキルを使いこなせるようになった今の彼女達、更には朝から愛する恋人と身体を重ね、気力充分の今の彼女達に、恐れるモノなど何も無い。


「んじゃ、やろっか!」
「うん」
「とりあえず一体目の六ツ星モンスターね!」
「幸先がいいわよね~」
「サポートは任せてください」
「頼りにしてるねエスト」


 そして始まる少女達の戦い。目の前の相手は伝説の黒き竜で、『災厄』と呼ばれる七ツ星モンスターなのだが、今の彼女達はそれを知る由もなかったーーーーーー


    
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