百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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最終章

242.談笑

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 その日、帝国の首都である帝都アルフォリアは歓喜に包まれた。


「クローバーが化物を倒したらしいぞ!!?」
「帝都の近くでクローバーっていう皇女殿下が加入してるパーティが大きな竜を倒したらしいわ!!」
「あのツヴァイフェッターでも敵わなかったモンスターを、クローバーが倒したんだってよ!?」
「もう帝都は安全みたい!非常事態宣言解除だってさーーッ!!」


 クローバーが黒き竜を倒したという話は、実際にその光景を見ていた兵士達の口によって、瞬く間に帝都中へと広がった。


「何でも北門から凱旋して来るらしいぞ!」
「見に行かなくちゃ!」


 話を聞いた者から我先にと、北門へと詰めかける帝都の人々。誰もが再び帝都に平和が訪れ日常が戻った事に安堵し、心の底からの笑顔を浮かべて駆け出している。手を繋ぐ親子、手を繋ぐ恋人、手を繋ぐ友人。誰もがこの瞬間を噛み締めながら、北門へと駆ける。
 


 一方、そんな事態になっているとは夢にも思っていないクローバーの少女達は、近くでクローバーの戦闘を見ていたツヴァイフェッターの五人と共に、何故かのんびりと徒歩で帝都へと向かっていた。


「いやいや、しっかしスゲーなお前ら!あのクソ強え竜に勝っちまうんだからよ!!」


 赤い髪の巨漢、”破壊王”ゼレットがやけに馴れ馴れしく話し掛けて来て、少女達は少し引いてしまう。


「はぁ……」
「あ?何だその反応は?お前らはスゲーって褒めてんだぞ?」
「………ウザ」


 一層げんなりとするサフィー。ただでさえ苦手な男性というであり、さらには男臭い。
 筋肉ムキムキなのも相当嫌なのに、この距離感は本当に無理だ。


「ふふぅ、ゼレット、皆さん怖がっているわよ」


 見かねたリュアーネが助け舟を出してくれる。正直言って、これはとても有り難い。


「怖がるってお前……コイツ等の方が俺達より強えんだぞ!?」
「んん~……女の子ってね、そういう物理的な事より精神的な圧迫の方が辛いのよね」


 リュアーネの言っている意味が全く分からないゼレット。遠回しに暑苦しい、馴れ馴れしいと言われているのだが、巨漢の脳筋には当然響く事は無い。


「おいお前」


 そんな微妙な空気の中、おそらくこの中では一番無口な”魔導大帝”ラギアがサフィーに声を掛ける。


「は?」
「あの魔法陣を発生させるのは何だ?あんな技法、我が師でも出来なかったのだが」
「………答える必要ある?」
「無い。気になるので訪ねてみただけだ」


 根っからの男嫌いのサフィーと、そもそも誰にも興味の無さそうな無口のラギア。どう考えても二人が折り合う訳が無い。


「……エクストラスキルよ。詳しくは言えないけど、あたし達は全員エクストラスキルっていう特殊なスキルを持ってて、普通の固有スキルよりも強力な能力を発揮出来るわ」
「エクストラ……スキル?」


 聞いた事も無いその名を聞いて、思わず顔を見合わせるツヴァイフェッターの五人。だが、確かにこの少女達が黒き竜との戦闘で見せた能力の数々は、まさに見た事も無い強力なものばかりだった。


「それは……殿下のお姿が変化したのも、そのエクストラスキルという特殊能力なのですか?」


 今度はバルムンクがリズに訊ねる。


「はい。あれは『竜人化』というわたしのエクストラスキルです」


 竜人化と聞き、なるほどと納得するバルムンク。確かにあの時の姿は、何処か竜を彷彿とさせる容姿だった。何故帝国の第一皇女が竜の化身へと変貌を遂げたのかについては、あえて訊ねない。


「えっと、貴女が一瞬で違う場所に転移していたのもエクストラスキルなの?」
「ん?あれは普通のスキルだよ綺麗なお姉さん!ショートワープっていうあたしの固有スキル!」


 今度はリュアーネが未来に短距離転移ショートワープについて訊ねるが、思っていた答えとは違う答えが返って来て思わず驚く。
 転移など、およそ人知を超えた能力である。それがまさか件のエクストラスキルではなく、普通の固有スキルだと言うのだから、とても信じられない気持ちだった。


「そ、そうなのね……凄いわぁ貴女」
「えっへっへ、褒められた!あ、あたし未来って言うんだ綺麗なお姉さん!」
「ミクね。わたしはリュアーネよ。一応回復術士なの」
「そうなんだ!お姉さんチョー美人だから、回復して貰う方はめっちゃ嬉しいよね!」
「ふふぅ、嬉しい事を言ってくれるのね~。でもミクだって凄く可愛いわよ」


 相変わらず、僅かな時間で誰とでもすぐに仲良くなる未来のコミュニケーション能力を見て、サフィーの頬がピクピクと震える。
 自分の方はと言えば、何やら脳筋そうな筋肉ムキムキ男と、無愛想な魔道士が話し掛けて来て、嫌いな『男性』という事もあり、とてもではないが仲良く出来る気がしない。


「あのスキルが固有スキルかよ!?すげーなお前!」


 今度はゼレットが未来とリュアーネの会話に割り込んで来る。純粋に未来のスキルに興味があったのと、やはりリュアーネと絡みたいという小さくない思いも密かにあっての行動だ。


「ありがとうおじさん!このスキルめっちゃ便利なんだよね!」


 何気ない一言。いつもの屈託の無い笑顔で返事をする未来だが、耐えきれない者が二人居た。


「ぶふっ……」
「くく………」


 思わず吹き出してしまったラギアと、必死に笑いを堪えているバルムンク。


「おじさんじゃねぇ!!俺はこう見えてまだ二十四………って!笑ってんじゃねぇよラギア!!バルも、笑いを堪えてんじゃねぇ!!」


 普段は人前で笑う事などほとんど無いバルムンクとラギアが、よほどツボに嵌ってしまったのか、プルプルと震えながら静かに笑っている。


「ははははっ!いや、すまない。こんなに可笑しかったのは久しぶりで」
「我など……初めてかもしれ……ぷっ!」
「おいこらテメェ等!」
「あー、二十四かぁ……ごめんねおじ……お兄さん。チョー筋肉ムキムキだし、髭生えてるし、顔恐いし、やっぱあたしら乙女から見てあんまり若く見えなくてさー」


 ここで未来がとどめを刺す。


「ぶふぅぅぅ!!」
「くくっ………あははははははは!!」


 もはやどうやっても堪えきれないバルムンクとラギアが、腹を抱えて爆笑する。そんな二人の前で、怒りと羞恥心で顔を真っ赤にするゼレット。


「て・め・え・らーーーーッ!!」


 ゼレットの言う「てめえら」の中には、当然だが未来も含まれている。ブンブンと腕を回しながら未来、バルムンク、ラギアを追い掛けるゼレットという、何だかよく分からない構図。


「ふふぅ、みんながあんなにはしゃいでいるのを見るなんて、初めてかもしれないわ」
「あはは……そうなのね~」
「まったく……ミクはなんであんなにコミュ力が高いのかしら……」
「サフィーちゃん?何か言った?」
「な、何でもないわよ!!」


 いつの間にか完全に打ち解けている未来と、リーシャ、サフィー、エスト、リズの四人も、リュアーネと一緒にその光景を眺めながら楽しそうに談笑している。


「いつの間にか……随分と打ち解けたみたいね」
「そうですね」


 そんな賑やかな皆の後ろで、ツヴァイフェッターで一番冷静なミルファと、クローバーで一番冷静な愛莉が、その光景を眺める。


「貴女達……本当に何者なの?見た事も無いスキル…聞いた事も無いエクストラスキル、そしてその常軌をを逸しているとしか思えない強さ。とてもこの世のモノとは思えないわよ」
「はは……色んな偶然と色んな経験が重なって、こうなったとしか………」


 それは半分は偽りであり、半分は本当の事。自分と未来は死霊王を倒す為に、この世界の神である女神アルテナにこの世界に呼ばれた。これは必然。
 だが、アルテナがこの世界に異世界人を呼ぶのには幾つもの条件がある。その条件を満たしたのが自分達だったというのは、愛莉の言うとおり偶然だったのだ。


「そう。そういう事にしておくわ」
「……ありがとうございます」


 おそらく黒き竜を倒した事で、自分達を取り巻く運命は更に加速するのだと愛莉は予想している。全てを語る事はまだ出来ないが、もしも必要とあらば全てを白日の元に晒す事も厭わない覚悟は既に出来ている。


「そろそろ帝都に着くわ」


 ミルファの言うとおり、帝都がすぐ目の前の距離に迫っていた。この先に自分達の運命が加速度的に動き出す未来みらいが待っている事に、クローバーの少女達はまだ誰も知る由もなかったーーーーー




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