百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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最終章

246.討伐戦に向けて

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 一先ず冒険者ギルドへと場を移したクローバーと皇帝アルベルト、グランドマスターのマディアスや、ツヴァイフェッターを含めた冒険者達。


「残念ながら時間は無い」


 ギルドに到着するなり、アルベルトが開口一番そう言い放った。


「距離的な意味ですか?」


 愛莉が訊ねると、ゆっくりと頷くアルベルト。


「奴は、死霊王は自らの居城があるのは北の山脈だと言った。そして猶予はひと月だとも。馬車で急いで、到着するのが大体ひと月ほどの距離だ」


 つまり今すぐ出発してギリギリ到着出来るかという距離だが、そこに関しては何も心配していない。
 クローバーには皆の知らない愛莉特製の『魔車』がある。通常の馬車の何倍もの速度で移動出来るので、早ければ十日かそこらで到着出来るだろう、そう思っていたのだがーーーーー


「私もすぐに皇宮へと戻り、急ぎ出発の準備をする。マディアス、お前も準備を進めておいてくれ」
「はい陛下。まあ、私は今すぐにでも出発出来ますが」
「え?陛下とマディアスさんも着いて来るんですか?」
「無論だ。死霊王討伐は私にとっても一命を掛けた悲願。もちろんプリュフォールにとってもだ」


 まさに寝耳に水だったが、一応あの魔車は八人乗り。二人増えるだけならとりあえず何とかーーーーー


「陛下、そしてクローバーのみんな、今回の死霊王討伐戦、是非とも我々ツヴァイフェッターも参戦させていただきたい」
「え…………」


 思わず絶句する愛莉。


「向かうのは敵の総本山。おそらく死霊王の配下が相当数居ると予想出来る」


 誰もがバルムンクの言葉に頷く。向かう先は死霊王の居城。死霊系モンスターがどれほど居るか想像もつかない。


「悔しいけど……あの死霊王を倒せる可能性があるのは君たちクローバーだけだ。ならば我々には、君たちを消耗させる事なく死霊王の元へと送り届けるサポートをさせて欲しい。勝率を僅かにでも上げる為に」
「うむ。其方達が来てくれるのであれば、これほど頼もしい事は無い」


(うわぁ……勝手に承諾しちゃったよ……)


 こちらにはこちらの都合があるのだが、そんな都合など知る由もないアルベルトがツヴァイフェッターの参戦を承諾してしまう。
 こうなったら仕方ない。もう一台、ツヴァイフェッター用に魔車を作るしかない。以前は完成までに五日を要したが、今なら材料さえあればおそらく三日程度で出来る筈。それなら時間的には十分に余裕がある。


「陛下!そういう事でしたら我々もお連れください!これでもAランクパーティ、その辺のモンスター程度なら数を減らしてみせます!」


 更に名乗りを上げたのは、この帝都で活動する三組のAランク冒険者パーティ。それぞれ『エタンセル』『グロワール』『クラージュ』の三組。
 どのパーティも先ほどの死霊王消失後に、自分の足で立っていた者達。つまり死霊王の恐怖と絶望の波動に屈しなかった強者達である。


「よくぞ申した!期待しておるぞ!」


 思わずこめかみを押さえる愛莉。これで四組。つまり魔車を四台作らなければならない。
 一応遅くとも期限の十五日前、つまり半月後には旅立とうと思っているので、仮に一台につき三日を要したとして、完成は十三日後(さすがに今日は疲れたので作る気になれない)で、一応間に合うが、あまり時間は無い。それなのにーーーーー


「あの……陛下。わたしと……わたしとアルダーも連れて行っていただけませんか!?」


 それはゼノンとティリスの娘であり、Bランク回復術士のレイナ。彼女とアルダーもまた、死霊王の波動に屈しなかった者達。


「私からもお願い申し上げます陛下。死霊王討伐は私とレイナの両親にとっても人生を掛けた悲願でした。亡き父と戦えぬ母に代わって、私達が悲願を成就したいのです!」


 思わず目頭が熱くなるアルベルト。そう、かつての仲間達は、プリュフォールの仲間達は、当時皇太子だった自分を温かく迎え入れてくれて、死霊王討伐という自分の使命を全身全霊を掛けて協力してくれた。
 そんなかつての仲間達の、ゼノンとバックスの忘れ形見であるレイナとアルダーが、両親の意思を引き継いでくれている。そう思うと、魂が震えた。


「共に行こうぞレイナ、アルダーよ。今この時よりプリュフォール再結成だ」
「はい陛下!」
「はっ!必ずお役に立ってみせます!」
「いやはや、これは面白い展開になって来た」


 どことなく楽しそうな笑顔を浮かべるマディアスだが、全く楽しくない者が一人。


「あのー……水を差すようで言い難いんですけど………」


 ここに至って愛莉が自身の『錬金術』の能力と魔車についての説明をする。通常の馬車よりもかなり速い速度で移動出来る魔車という乗り物を作った事。討伐戦に参加する新たな五組の為に、追加で五台の魔車を作らなければならない事。
 おそらく一台に三日程度を要するので、出発までに間に合わない場合は三台か四台しか作れない可能性がある事。また、材料集めだけでもかなり大変な事などを説明する。


「えーと……錬金術……?」


 だが、説明を聞いた大半の者が顔に疑問符を浮かべている。そもそもこの国で錬金術と言えば、植物や魔物の素材から薬などを作り出す技術であり、決して乗り物を作る技術などではない。
 しかもこんなに華奢な少女が一人で、人が何人も乗れる乗り物を三日やそこらで作るなど、もはやどのように想像力を働かせていいのかも分からない。


「えっと……確か前回の魔車制作で余った素材が………」


 ガサゴソと魔法鞄マジックバッグを漁る愛莉。そして取り出したのは、魔車制作の際に余ったガルム鉄の鉄くずと、シート用の革。


「ここにガルム鉄と革があります。これを今から錬金術で形を変えます」


 ギルドのカウンターに置かれたガルム鉄と革。その二つに愛莉が手を添えると、愛莉の手のひらから光が発する。
 その光景を皆が食い入るように見つめる。一体何が起こるのか、誰もが期待に胸を踊らせる。
 そして皆の見ている目の前で完成したのは、ガルム鉄特有の白い一本の剣。柄の部分には革が巻かれた状態になっており、手になじみやすいよう作ってある。


「うおっ!マジか!!?」
「ウ、ウソ……!?」


 目の前で起こった奇跡のような光景に、誰もが驚愕の表情を浮かべる。更には驚嘆のため息も。


「これが錬金術です。魔車の場合、別々に各所のパーツを作って、最後にまとめて融合させます。あ、この剣欲しい人居ますか?」


 説明の後に愛莉がそう言うと、剣士達が顔を見合わせる。そして一人の男性が、申し訳無さそうにオズオズと手を挙げた。


「あ、はい。じゃあどうぞ」


 男はBランクパーティの剣士。愛莉から直接手渡され、愛莉の可愛さに思わず頬を染めた。


「す、すげぇ……こんなに研ぎ澄まされた剣を見るのは初めてだ………」


 それはどんな名工が打った剣よりも研ぎ澄まされた、愛莉特製の剣。鉄の数倍の強度を持つガルム鉄製なので、耐久度もある。きっと彼はこの剣を愛剣として、長い間使い続けるだろう。


 愛莉の錬金術の凄さを目の当たりにし、若干浮ついた空気になるが、アルベルトが口を開くと皆はピタッと口を閉じた。


「錬金術、素晴らしかったぞアイリ。その魔車制作に必要な材料はこちらで集めよう。後で目録を頼む」
「あ、はい。助かります」


 魔車五台分の材料など、集めるだけでも数日掛かりそうだったので、これは素直に有り難い。更にアルベルトは、作る場所として皇宮の中庭を提供してくれた。そこでなら誰の目にも止まらないだろうと。


「出立は半月後、メンバーはクローバー、ツヴァイフェッター、プリュフォール、エタンセル、グロワール、クラージュの五組。ただし、アイリの魔車制作が間に合わぬ場合は、ツヴァイフェッターを除くAランクパーティのいずれかが、帯同できない事を覚えておくように」
『はっ!承知致しました!』


 ちなみに今回のみ例外で再結成されたプリュフォールには、ランクは設定されない。既に過去に解散しているので、本格的に再結成する場合はEランクからスタートである。


「しかしこうなって来ると、プリュフォールにはもう一人Aランク相当の実力者を加えたい所ではあるな」


 Sランク冒険者のアルベルトとマディアスだが、アルベルトは十五年も前線から離れていたブランクがある。レイナとアルダーも実力はAランクに引けを取らないとは言え、基本的には二人で活動して来たので(人数の少ないパーティに助っ人として呼ばれる事はある)、即席パーティでの戦闘には不安がある。
 なので戦闘慣れしていて、且つ実力のある者をもう一人ぐらい加えたいと思うアルベルトの考えは、至極当然と言えた。

 そんなアルベルトの言葉を聞き、未来が何かを閃く。そして隣のサフィーの手を取り、ギルドの外へ向かって走り出した。


「ちょっ………ミク!?」
「リズっちのお父さん!マディアスさん!もう少しここで待ってて!」


 一言それだけ言い残し、未来とサフィーはあっという間に姿を消した。

 残された者達は皆、突然の未来の行動に呆ける事しか出来なかった。


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