百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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最終章

276.予想

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 まさに奈落の底まで続くのではとの想像を掻き立てられるほどに、真っ暗な階段を降りてゆく一行。

 この不死宮へと突入した時には三十人以上の大所帯だったのが、現在ではクローバーの六人とプリュフォールの五人、計十一人だけとなった。
 しかしそれは、今も上の階で命懸けで奮戦してくれているであろうエタンセル、グロワール、クラージュ、そしてツヴァイフェッターの皆のお陰だ。彼、彼女らのお陰でこうしてここまで、MPもSPも消耗せずにこの階段を降る事が出来ている。


(あの時は溜め息しか出なかったけど……陛下の判断は結果的に正しかったんだよね)


 それはあの死霊王討伐隊が結成された時。あの時愛莉は、当然だが死霊王討伐へはクローバーだけで向かおうとしていた。
 しかしそこで声を上げたのがリズの父にして、皇帝であるアルベルト。自分もプリュフォールを再結成し、今回の戦いに参戦する事を独自に決定。その流れで、ツヴァイフェッター、エタンセル、グロワール、クラージュもあれよあれよと参戦表明し、他のパーティ分の魔車も作る羽目になった愛莉は人知れず嘆息していた。

 
(魔車も思ってたより短い日数で作れたし、今のこの状況は凄く助かってる)


 当初思い描いていた通り、クローバーだけでこの不死宮へ乗り込んでいたのなら、あの百体を超えるスケルトンを撃破し、先ほどの魔竜も撃破する必要があった。
 もちろん勝ててはいただろうが、如何にクローバーとは言え、それなりの消耗は避けられなかっただろう。
 未来は案外余裕で死霊王を倒せるかもと、天性の勘の良さでそんな事を言っていたが、それも万全の状態で臨むのと、消耗している状態で臨むのでは戦況は大きく変わる。
 だが仮に、次に待つのが死霊王だとしたら、このままクローバーとプリュフォール、総勢十一人で総攻撃を仕掛けられる。そうなれば勝てる確率は更に跳ね上がるだろう。


(って、流石にそこまで楽観視はしてないけど)


 逆に、今までのは序の口で、まだまだ多くの強敵が待ち構えていて、全て撃破する頃には大きく消耗してしまっているという、最悪の事態も想定はしている。
 もしもその最悪の事態が現実になった場合は、取るべき行動は二つしかない。

 一つはポーションを飲んで回復を待ちながらの長期戦に突入する事。だがポーション一本で回復出来るMPやSPの量などたかが知れている。ならばたくさん飲めば良いのではという意見もあるが、ポーションとて飲めば腹に溜まるのだ。未来はともかくとして、華奢な少女達が一度に飲める量など限られている。必然的に回復に時間を掛ける必要があるが、回復する前に死霊王が自ら出張って来た場合は、おそらく勝ちの目は無い。

 死霊王の攻撃を無効化する『アルテナの加護』を付与されているのは異世界人である自分と未来だけだ。なので自分達が盾となり、リーシャ達を上の階へと逃さなければならない。その場合、当然自分達の命の保証は無い。『アルテナの加護』が死霊王の攻撃を無限に無効化してくれるなど、おそらく無いからだ。
 どんな力も有限であり、制約が存在するのだと愛莉は思っている。○回までは無効化してくれる、○○の威力までは無効化出来るなど、必ず制約が存在する。処女で無くなった瞬間に加護が消滅するのも、その制約の一部だろう。

 そして二つ目の選択として、ある程度消耗した時点で諦めて、引き返すというものだ。だがそれは最悪の悪手である事も愛莉は理解している。
 そもそもこの不死宮への入口は、死霊王本人にしか開けない。もし一度でもこの不死宮の外へと出てしまうと、二度と挑戦権が与えられない可能性もある。そうなったら元の世界に帰る事も、皇家の悲願を果たす事も、何もかもが絶望的になってしまう。
 更に、死霊王は宣言通り人間の街への攻撃を開始するだろう。それらの最悪を回避する手段は、結局は死霊王を倒す事のみ。
 つまりこの不死宮へと足を踏み入れた瞬間、クローバーは『逃げる』という選択を封殺されてしまったのだ。死霊王と戦い、勝って生きて帰るか負けて命を散らすか、そのどちらかしかない。


「愛莉?少し緊張してる?」
「……そんな顔してた?」
「うん。顔固まってた」


 どうやら最悪の想定をしていて、それが表情に出てしまっていたらしい。と言っても、常にポーカーフェイスな愛莉の微妙な表情の違いを読み取れるのは、愛莉の事を誰よりも理解し、愛している未来以外には居ない。


「どしたの?らしくないじゃん」
「死霊王が……消耗戦を仕掛けて来たらどうしようって考えてた」
「消耗戦?」


 そこで愛莉は自分の考えを未来に伝える。もちろん他の者達にも愛莉の声が届いているので、愛莉の話を聞き終えた時には、誰もが愛莉同様に表情を固くしていた。


「そういう可能性もあるのね……」
「ってかそういう可能性の方が高いわよね……」
「う、うん……どうしよう……」


 皆が一様に不安の声を上げる。愛莉とて皆を不安にさせる為にこんな話をした訳ではないのだが、結果的にそうなってしまったのは、誰も愛莉が想定していた事を想定出来ていなかったからだ。
 だがそんな皆の中にあって、未来は面白そうに声を上げて笑い出す。


「あっははは!無い無い、今さらそんな姑息な事なんて絶対にして来ないよアイツ!」
「何で……?何でそう思うの?」


 未来が突然笑い出し、そんな事を言い出す根拠が愛莉には分からない。なので訊ねてみると、未来は淀み無く答えた。


「アイツって存在は陰気臭いけどさ、自分の強さに絶対的な自信持ってる感じじゃん?『俺様ツエェェェから、勘違いしてる全力のお前らをぶっ倒して、アルテナをガッカリさせてやんぜ!』みたいな!?」
「え……そ、そう?」
「そうそう!ってか本当に消耗戦したいならさ、そもそも帝都の空にアイツが出て来た時に『必ずクローバーだけで来い!仲間とか連れて来たら人間の街滅ぼすぞゴラァァ!!』とか言うじゃん」
「あっ………」


 思わず立ち止まる愛莉。その表情は珍しく、目から鱗が落ちたような驚きの表情を浮かべている。そしてそれは、未来の言う通りだと思ったからだ。消耗戦を仕掛けたいなら、確かに仲間の同伴を認める筈が無い。


「まあ、モンスターの大群居たじゃん?中ボスっぽい竜も居たじゃん?あたしの予想だと次に出て来るのは、最後の部下的な側近みたいな奴。んでその次はご本人様がお待ちって感じだと思う!」
「あはは……何だかミクが言うと、本当にその通りになりそうだから不思議」


 リズが半笑いの表情を浮かべる。今までも、突拍子も無い事を言ったかと思えば、本当にその通りだったという事が多々あった。本人はあくまで勘で喋っているだけなのだが、それがいつも何故か当たるのだ。


「ところで未来」
「ん?」
「何で死霊王の台詞、不良みたいな言葉だったの?」
「だってヤンキーじゃんアイツ。黒いし悪い事ばっかりしてるし」


 こんな時なのに、こんな場所なのに、クスクスと笑い合う二人。何だか真剣に悩んでいた事が馬鹿らしくなるくらい、未来の言う通りになるような気がした。そしてーーーーー



「何よアイツ……まさか人間……?」


 辿り着いた部屋の中央には、肌の黒い細身で長身の人間らしき者が静かに佇んでいた。


「その通りだ人間の小娘よ。とは言っても、この世界の人間ではなく、冥界の人間だがな」
「冥界って……確か死霊王が来たっていう世界………」
「ほう、我らが故郷である冥界を知っているのか?」


 切れ長の目。一見すると優男だが、物凄い威圧感と魔力を誰もが感じている。


「愛莉、アイツのレベルは?」
「レベル120。名前はーーー」
「その先は言わなくていい。我が名はネクロマンサー。リッチ様にこの世界に召喚された冥界の覇者にして、リッチ様を御守りする最強の側近なり」


 側近。その単語を聞いた瞬間ーーーーー


「はい側近来たぁぁぁーーッ!!あたしの予想通り!!」
「む……何が可笑しい小娘よ」


 まったく、こんなにも一緒に居て、何もかも知っている筈なのに、未だに未来には驚かされてばかりだ。
 そんな未来が可笑しくて、頼もしくて、愛おしくてーーーー




 ーー愛莉は口元を優しく緩めたのだった。




※いつもお読みくださりありがとうございます。物語も最終回が近づいて来ており、おそらくですが、あと二十話くらいで完結します。皆様、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

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