百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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最終章

287.同調

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 不思議な感覚だった。まるで自分の身体の中にもう一人の自分が居るような、それでいてそれはやっぱり自分ではなく、別の誰かが共存しているような感覚。


「伝わる……未来の『気配察知』で補足してる死霊王の気配が……わたしにも伝わるよ」
「あたしも……愛莉が魔力操作で操作してる円月輪の位置が……はっきり分かる」


 それはまさに奇跡的な瞬間。愛莉の中には未来が、未来の中には愛莉が、互いが互いの中に自分と相手が共存している。
 日下未来は望月愛莉であり、望月愛莉は日下は未来である瞬間。今、二人は完全に同調シンクロしている。肉体も、精神も、魂さえも。


「やっぱり未来は凄いね。異空間でも死霊王の気配を追えてるんだから」
「あはは……アイツの気配って異質ってか、アホみたいに大きくて陰気だからね。普通のモンスターとかだと追えなかったかも」


 それは死霊王にとっては数多く積み重なった不幸の一つ。異空間への空間をすぐに閉じずにこうして開いたままにしている事、強すぎるが故の強大な気配、それが未来に気配を追われる結果になっている。


「あ、もう少し右だね」
「うん。まだ少し距離ある」
「空間が閉じたら流石に追えなくなるかもだから、急がないと」


 なかなか誰も異空間に入って来ない事に業を煮やし、死霊王がいつ異空間への入口を閉じてしまうか分からない。その前に倒さなければ、もはや気配を追う事は叶わずに逃げられる。


「大丈夫……どんどん近づいてる」


 そんな二人を見守るリーシャ、サフィー、エスト、リズの四人。いつの間にか未来と愛莉の元へと近づき、祈るような気持ちで二人を見つめる。
 お願い神様。いや、女神様。どうか二人に死霊王を倒させてあげてください。そうしないと二人は、元の世界に帰れないんです。

 誰もがそう祈るが、本音を言えば帰って欲しくない。ずっとこの世界で暮らして欲しいし、ずっと一緒に冒険していたい。
 だが、それは願ってはいけない思い。二人には二人の帰る世界があって、きっと無事だと信じて今も帰りを待っている家族が居る。
 そんな人達が居るのに、自分達の都合だけでこの世界に残って、元の世界に帰らないでなど、どうして口に出来よう。


「かなり近いね。気付かれないかな?」
「不可視で見えなくしてあるから平気だと思う。もしかしたらわたしの魔力とかに気付く可能性もあるけど」
「魔力がバレたら避けられる?」
「避けられる前に倒す。その為にも確実に一撃で『核』を破壊しないと」


 手を繋ぎ、目は閉じたままの二人。もはや自分達の手の届かない場所を飛行するオリハルコン製の円月輪を、巧みに操作する愛莉。未来のおかげで目標となる死霊王は、まるで視認しているかの如く手に取るように分かる。自分の能力と未来の能力、二人の力が一つになっているこの状況で、目標を外すなどあり得ない。


 やがてーーーーー


「「見つけた」」


 異空間を漂う死霊王に、見えない刃が襲い掛かる。



■■■



「グッ……マサカコレホド苦戦シヨウトハ………」


 自らが作り出した異空間に逃げ込み、空間内を漂う死霊王。そもそも誤算だったのは、異世界人である黒髪の少女二人以外の、全ての者に『アルテナの加護』が付与されていた事。


「アルテナメ………イツノ間ニ加護ナド……」


 リザードキングの間にて初めてクローバーと対峙した時は、間違い無く他のメンバーに加護など付与されていなかった。その証拠にあの黒髪の少女達以外は、【言霊】の術にまんまと落ちていた。もしも加護が付与されていたのなら、術には掛からなかった筈なのだ。


「ソモソモ……加護ヲ付与出来ルノガ異世界人ダケデハ無カッタトイウ事カ………」


 それもまた誤算の一つ。二千年前と今回、そのどちらも『アルテナの加護』を付与された者として自分の前に現れたのは異世界人だった。なので女神アルテナが加護を付与出来るのは異世界人だけだと勝手に思い込んでしまったのである。


「ソレニシテモ……追ッテ来ヌカ」


 わざわざこの異空間への入口を開いたままにしているのは、この異空間ではこの世界の人間は一切の活動が出来なくなる為。
 かつて異世界人アルフォリアの仲間が追って来た際にも、動けなくなった彼の四肢をもいで絶命させた。如何に深手を負っていようと、どんなに相手が強かろうと、動けない相手を殺す事ほど簡単な事は無い。
 しかし何故か一人として追って来ない。特にあの黒髪で髪の短い方など、実に短絡的な思考をしていると読んでいたのだが、思っていたよりも慎重なのか、それとも他の仲間が止めているのか。


「チッ……追ッテ来レバ皆殺シニ出来ルモノヲ………」


 忌々しそうに舌打ちする死霊王。これほどの屈辱は二千年前のあの時以来だ。いや、あの時は黒き竜との死闘の後で消耗していた為、本調子とは程遠かった。
 だが今回は万全の状態で迎え撃った。それなのにここまで追い込まれる事態になったのは、最大の屈辱を死霊王に齎した。

 何としてもこの手で、あの人間達を皆殺しにしたい。だが今さら再び奴らの前に姿を現した所で、勝つことなど叶わない。この圧倒的存在である、女神アルテナさえも手に余る存在である自分が、正面から挑んで勝てない相手。その事実が忌々しくて仕方ない。


「マア良イ……コノ異空間デ数百年ホド時ヲ過ゴセバ、コノ傷モ完全ニ癒エヨウ。ソノ時コソ、我ハ再ビコノ世界ノ掌握ヘト乗リ出ス。ソノ時ハ、アノ人間共モ既ニ生キテハイマイ」


 女神アルテナに導かれし六人の少女達。その力は絶大で、残念ながら認めざるを得ない。だが、こうして生き残りさえすれば、それは自分の勝ちだ。アルテナの願いは自分を撃ち滅ぼす事。それが叶わなかったのだから、戦いには破れたが、結果的に勝負には勝ったのだ。


「サテ……デハ空間ヲ閉ジルトスルカ。サラバダ、女神アルテナニ選バレシ小娘共ヨ。精々悔シガリナガラ、ソノ余生ヲ過ゴーーー」


 その瞬間、死霊王の身体に衝撃が走った。意識が一瞬にして遠ざかり、身体ヲ維持する事が出来ない。


「ナ……ンダ……ト………?」


 ゆっくりと自分の胸部に視線を送る死霊王。その視線の先では、自分の命の源である『核』が、真っ二つに破壊されていた。


「莫迦ナ……一体ドウヤッ……テ……」


 全く訳が分からない死霊王が僅かに感じた、誰かの小さな魔力。最後の力でソコ目掛けて弱々しい術を放つと、不可視の効果が切れた黄金色の飛翔体が視界に写り込む。それが誰かの放った武器だと気付いた時には、全てが遅かった。


「オノ…レ………オ……ノ…………レェェェェ!!!!」


 地獄の業火の如く激しく瞬いた双眸は、次の瞬間には一切の光を失う。やがて造形を維持出来なくなった骨の身体はゆっくりと、細かな灰に変わって異空間に霧散した。
 後に残ったのは黄金色に輝くオリハルコン製の円月輪のみ。それが死霊王の墓標となり、未来永劫この異空間を彷徨う事となるーーーーー




 誰もが固唾を飲んで見守る中、プリュフォール、ツヴァイフェッター、そしてエタンセル、グロワール、クラージュの五組のメンバーが雪崩込んで来る。


「何だ……?死霊王は何処行った!?」
「おーい!!みんな無事かぁぁーーー!?」


 クローバーの皆に声を掛けるが、誰も反応しない。皆の中に嫌な予感が渦巻く。もしや、死霊王の術か何かに落ちて、身体が動かなくなっているのでは?或いは既に魂を奪われてーーーーー


「どうしたのかしら……みんな動かないけど………」
「まさか……もう既に………」


 誰もが不安に駆られたその瞬間、手を繋いだまま動かなかった未来と愛莉が突然振り返る。そんな二人に、今まで動かなかったリーシャ、サフィー、エスト、リズの四人がゆっくりと近づき、未来と愛莉を抱き締める。


「はっ……うっ……終わった……のね……」
「倒した……ひっく……本当に倒せた……」
「ぐすっ……頭の中に……レベルが上がりましたってずっと………」
「………う……うう……」


 そのまま泣き崩れる四人。そんな四人に未来と愛莉が優しく微笑む。


「うん……!うん!みんなお疲れ!!」
「みんなのお陰だよ……ありがとうみんな……!!」


 そして次の瞬間には、六人で拳を突き上げ大声を上げる。
 勝った、倒した!本当に勝てた!!みんな、誰も失う事なく死霊王を倒せた!!!遂に勝てたのだ!!!!


 喜びを爆発させる六人の姿を見て、皇帝アルベルトを初めとした皆が、ゆっくりと顔を見合わせる。だが誰からともなく、クローバーの少女達同様に拳を突き上げて喜びを爆発させる。


「倒したのか!!?うぉぉぉーーーッ、マジでか!!!!」
「す、凄いわみんな!!凄い凄い!!!」
「まさか本当に倒してしまうとはな………不本意ながら脱帽だと言わざるを得なーーー」
「うるせぇよラギア!!こんな時ぐらい素直に喜べや!!!!」


 総勢三十人以上の死霊王討伐隊。その誰一人として欠ける事なく、遂に世界の元凶は倒された。


「ぐうっ……ウッ……くっ…」
「はは………喜びもひとしおですね………」


 堪えきれずに嗚咽を繰り返す皇帝アルベルト。遂にこの日が来たのだ。初代皇帝セティ以来、二千年もの月日を経て訪れたこの瞬間。
 先祖代々と一言で語るには、二千年はあまりにも長過ぎた。しかしそれも、娘であるリズの代で終止符が打たれた。異世界人である未来と愛莉が、この勝利をもたらしてくれたのだ。

 
 誰もが今回の勝利に喜びを爆発させている中、突然部屋全体が揺れ出した。そして壁や床がピキピキと、崩壊を開始した。


「う、うそ……崩れ始めてる……」
「そ、そんな……」
「お、おい!早く逃げるぞ!!」


 浮足立つ一同。しかしそこで未来がピシャリと皆に言い放つ。


「みんな大丈夫!これお決まりのヤツだから!ラスボス倒したら迷宮が崩れるけど、残りあと数秒とかで脱出出来るヤツだから!!」


 ファンタジーなゲームしかり、ファンタジーな小説しかり、大泥棒三世のアニメしかり、こういうのはお決まりなのだと力説する未来だが、当然愛莉以外には伝わらない。そしてーーーーー


「って事で全力で逃げろーーーッ!!」


 突然走り出す未来。皆は一瞬呆気にとられたが、急いで未来の後を追う。


「お、おい!ちょっと待て!!」
「ちょ………わたし達まだ体力が………」
 

 既にヘロヘロな一同だが、逃げなければ生き埋めになると必死な形相を浮かべて走る。
 そんな中、先頭を走る二人の黒髪少女は、とびっきりの笑顔を弾ませていたのだったーーーーー



 
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