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最終章
最終話.あたしと愛莉※
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硬く屹立した乳首を口に含みながら、右手を彼女の秘部へと伸ばす。
下着の上から割れ目を擦ると、すぐに硬い突起の感触が指先に伝わる。
「はっ……あっ……」
二本の指で弧を描くように突起を刺激すると、水色の下着の中央にはすぐに小さなシミが出来上がる。
口に含んだ乳首を舌先でねっとりと舐め回しながら、左手で反対側の乳首をキュッと摘む。
「はぁはぁ……んんっ!」
しばらく乳首と秘部の愛撫を続けると、下着の中央に出来上がった小さなシミは、すぐに舟形の大きなシミへと形を変える。
一度秘部から手を離し、少しだけ右手を持ち上げると、今度は下着の中に手を滑り込ませる。右手にはすぐに、恥丘に生えた茂みの感触が伝わる。さらに手を奥へと進めると、ぬるぬるとした液体の感触が指先を出迎える。
くちゅ、くちゅ、ぴちゃ
「あっ、あっ、はっ……あっ!」
指で直接秘裂を刺激すると、彼女は身体を震わせて甘い声を上げる。そう言えば今日は一泊ではなく、ご休憩で来ている事を思い出す。
つまり数時間後にはこのラブホテルを出なければならない。なので、あまり彼女の下着を汚してしまっては申し訳無いと思い、早々に下着を脱がす。
彼女の細い足からスルスルと降ろし、そのまま足首に掛けたままにしておく。最近、この方が興奮する事に気付いたのだ。
彼女の細い太ももにキスをする。一度、二度、三度、わざとチュッチュと音を立ててキスをすると、彼女の秘裂からはトロトロの液体が溢れ出す。
「はぁはぁ……あっ、ああッ」
彼女の顔を見ると、瞳に薄っすらと涙の膜が張っていた。焦らさないで、早くしてとでも言いたげな表情。その長いストレートロングの黒髪が、シーツの上で広がっている。それがとても扇情的に映り、彼女の股へと顔をうずめる。
「ふっ…うっ……」
指でゆっくり秘裂を開くと、綺麗なサーモンピンクの膣内が目に飛び込んで来る。もう既に外にまで溢れた愛液は、彼女のお尻を伝ってシーツを濡らしている。
愛液を掬うように舌を這わせると、彼女の身体がピクピクと気持ち良さそうに反応する。舌を秘裂に押し込み、膣内の浅い所を抜き差しすると、彼女の声が更に大きさを増した。
「はっ、ああっ!んっ、んっ、はぁうっ!!」
このまま続けても絶頂させられそうだが、やはり女性がみんな好きなのは、あの硬い部分。
既にパンパンに膨れ上がったクリトリスを舌先で刺激する。途端に彼女の身体が弓なりにのけ反った。
「ああっ!いや、ふっ、あっ、あんっ!あんッ!」
手のひら越しに、彼女の足に力が入るのが分かる。どうやらそろそろ限界らしく、確実に絶頂へ向かっている。
それならばと、太ももに掛けていた手を彼女の胸へと伸ばす。クリトリスを舐めながら乳首を指でコリコリ刺激すると、彼女はそのまま呆気なく果てた。
「ああっ、だめだめぇ~~!イクッ!イッちゃうイッちゃう!!ああああぁぁぁーーーーッ!!!!」
ビクンビクンと、何度も跳ねる彼女の身体。腰が何度も上下に動いて、まるで腰だけ別の生き物のようだった。
「はぁはぁはぁはぁ……!!」
荒い呼吸を繰り返す彼女。額には汗が浮かび、頬は薄紅色に染まっている。
「気持ち良かった?」
聞かなくても分かっているのに、わざと訊ねてみる。すると彼女は案の定ーーーーー
「はぁはぁ……気持ち良かったです…………………未来先輩」
と、彼女はあたしにそう答えた。
■■■
鏡に映ったあたしの髪が、ドライヤーの風を受けて舞い上がっている。
全身汗と愛液まみれになったあたし達は、えっちの後の恒例であるお風呂に一緒に入り、つい今しがた上がった所。そしてあたしが先にドライヤーを使わせて貰っている。
あたしの名前は日下未来。今年二十三歳になる社会人。結構有名なスポーツ用品メーカーの開発部、そこにあたしの席がある。
元々運動が好きだったので、好きが極まってこの仕事を選んだんだけど、これが結構大変。でも楽しいので、割と天職なのではと思っている。
そう、あたしと愛莉が異世界から無事に帰って来て、早いものでもう七年の年月が経過した。やっぱり半年間も行方不明だった事もあって、当時あたし達が無事に見つかった時は、日本中で話題になった。一体半年間も何処で何をしていたのかと。
もちろん異世界に行っていたなんて、誰に言っても信じて貰えないので、愛莉には事前にベターだけど何も覚えて無いって事にしようと言われていた。
確かに下手な嘘を付くよりは、何も覚えていない方がまだ信じて貰えると思ったので、あたしもオッケーした。
でもこれが逆に、世間を更に賑わせる事になった。誘拐説、拉致説はまだ良くて、神隠し説や、宇宙人に攫われた説まで飛び出した。まあある意味、全然的外れじゃないんだけど。異世界の神様に攫われたようなものだったし。
こうして覚えていないを突き通せば、世間はそのうちあたし達になんて興味無くなると思っていた。次から次へと色んなニュースが飛び交うこの世界で、いつまでもあたし達になんか構っていられないだろうって。
でもあたし達にとって誤算だったのは、居なくなった当日のあたし達が、防犯カメラに映っていた事。しかも例の、ラブホテル街の近くの防犯カメラに。
この事実が、あたしと愛莉に重くのしかかった。世間のあたしと愛莉を見る目が一気に、好色、喜色の目に変わった。
あの二人レズなんだって
朝からラブホでやってたらしいよ
半年間隠れてやりまくってたんじゃねぇの?
そんな声が、色んな所から聞こえて来た。道を歩いてても、駅のホームに立ってても、学校の廊下でも。
別にあたし達はそれでも良かった。むしろ「ああそうだよ、あたしらガチで愛し合ってるんだよ!」って大声で言ってやりたかった。
でも、そんな心無い声が家族にも及んでいると知った時、あたしは呆然と立ち尽くした。お父さんが、お母さんが仕事先で同じ陰口を叩かれている。
弟や妹は、それが原因でイジメられてる。そんな事実を知った瞬間、あたしは急に怖くなった。
だって、あたしの家族がそうなら、愛莉の家族だって同じ目に遭ってるって事だから。
それからはお互い、少しずつ距離が離れていった。でも当たり前だけど、相手の事を嫌いになった訳じゃない。むしろお互い、気持ちは今までと全く変わらなかった。
それを確かめるように、あたしと愛莉は一日に数分だけ、毎日電話をした。あたしの家は狭いアパートで自分の部屋なんて無いから、毎日トイレでこっそり、小声で愛莉と電話で話をした。
たった数分でも、愛莉の声が聞けるのが嬉しかった。電話で愛莉と繋がっていられるのが嬉しかった。
でも、ある日を堺にそれすらも出来なくなった。愛莉に電話を掛けたけど繋がらないし、愛莉からも電話は掛かって来なくなった。
その数日後、あたしと愛莉は学校の廊下でバッタリとすれ違った。そしてすれ違い様に愛莉があたしの耳元で、「お母さんにスマホ没収された」と、抑揚の無い声で伝えて来た。
その時に悟った。愛莉のお母さんはスマホを没収してでも、あたしと愛莉の接点を無くしたいんだ。愛莉の人生に、あたしの存在はとにかく邪魔以外の何物でも無いんだ。
悔しかった。異世界ではあたしと愛莉の関係を隠したくない、愛し合ってるんだから誰に知られてもいいって言って、実際その通りにしていた。あたしと愛莉の関係を知っても誰も陰口叩いたりしなかったし、本当に自分たちが望む事を堂々として来た。
だけどこの世界では、好きな人を好きだって叫ぶ事すら出来ない。異世界では最強まで上り詰めたあたしや愛莉も、この世界では何の力も無いただの女子高生。両親に養って貰わないと生きていけない、ただの小娘。周りと上手く付き合わないと社会から簡単に弾かれてしまう、そんな弱い存在。
早く大人になりたかった。誰の世話にもならない、自分で自由に自分の事を決められる存在になりたかった。
ずっとその思いを胸に、あたしは高校を卒業した。三年生になる頃には、愛莉とは学校で会っても会釈すらしなくなっていた。こんなに好きなのに、こんなにも遠い。
高校合格のお祝いに愛莉とお揃いで買った腕時計。愛莉のはもうこの世界には無いけど、あたしはいつもの腕に嵌めていた。でも……電池が切れたのか、もう時を刻んではくれない。
高校卒業後は、二年間専門学校へ行った。でも地元は嫌だったので、わざわざ他県の専門学校を選んだ。この街は、愛莉との思い出がいっぱい有り過ぎる。だから知らない街で一から頑張ろうと決心しての事だった。
親には少しだけ仕送りして貰いながら、基本的にはバイト代を生活費に当てた。大好きなスポーツはジョギングをするくらいで、バイトと勉強の毎日だった。
早く一人前になりたい。早く就職して、もう一度愛莉と恋人同士に戻りたい。その一心で頑張った。
そして今のスポーツ用品メーカーに内定が決まった。これでようやく愛莉を迎えに行ける。そう思ったあたしは、就職と同時にスマホに愛莉の名前を呼び出した。
「……愛莉、まだ大学生じゃん……」
噂で、愛莉は地方の四年制大学に受かったと高校生三年の時に聞いた。つまり愛莉は今年、大学三年生。
自分ばかり就職したからと言って、それでどうなるというのか。愛莉はまだ学生で、学費だって親に出して貰っている筈。まだ自立していない相手に、電話なんて掛けられる筈も無い。
いや、きっとそれは只の言い訳だ。本当はもうとっくに、電話をする勇気なんか何処かで無くして来た。
だってもう何年、会話をしていないと思っているのだ。もう何年、愛莉の声を聞いていないと思っているのだ。
仮に愛莉が自立していたとして、今さら何を話せば良いのか。何て声を掛ければいいのか。もうそれすらも分からないくらい、愛莉との時間が空いてしまったのだ。
もういい加減、愛莉の事は吹っ切らないといけない。そうしないと前に進めないし、思い出は思い出として綺麗なまま残しておきたい。
「未来先輩、ドライヤー終わりました?」
ちょうど髪を乾かし終わったあたしの元に、一人の女性が下着姿のまま現れた。
「あ、うん。先に使わせてくれてありがとね」
「ふふ、わたしのロングヘアーより未来先輩のゆるふわミディアムの方が早く乾きますからね」
彼女の名前は柚木舞香。去年入社して来たばかりで、一応職場ではあたしの後輩って事になる。
髪が長くて、身体はスラッと細くて、顔は美人。そんな如何にも男性受けしそうな彼女にいきなり告白されたのは、去年のクリスマス前。
「あの……初めて見かけた時からずっと気になってました……」
正直驚いた。こんな綺麗な娘が、まさか女性であるあたしに告白してくるなんて。彼女ならきっと、男性にモテモテだろうと思ったから。
それにあたし自身、同性に告白されるなんて中学生の時に愛莉に告白して、逆に告白され返された時以来だ。だから驚くと同時に素直に嬉しいって思った。でもあたしはーーーーー
「ごめんね……舞香の事は好きだし可愛いって思うんだけど……他に好きな人が居るんだ」
そう言って断った。愛莉の事は吹っ切らないといけないんだけど、だからといってすぐに恋人を作る気持ちにはなれなかったから。
でも彼女は……舞香は諦めなかった。最初から断られるって分かってはいたみたいなんだけど、あたしが普通に断って来た事に驚いたらしい。
「あの……気持ち悪くないんですか?わたしの事……」
「え、何で?」
「だってわたし……百合ですよ?女の子にしか興味無いんですよ……?」
素直に凄いって思った。こんなに簡単に自分は百合ですって、正直に言える事が凄いって思った。
あたしが周りに言いたくても言えなかった言葉を、舞香は簡単に言える。それが凄いって思ったし、羨ましかった。
「そんな娘いっぱい居るよ?あたしの知り合いなんかは特に多いから」
主に異世界の知り合いに、だけど。
「あの……その好きな人って先輩の……恋人ですか?」
「あ、いや………昔はそうだったんだけど……ちょっと色々あって付き合えなくなっちゃって………」
こんな事、誰かに言ったのなんて初めてだった。でも舞香には聞いて欲しいって思った。
「それじゃあ、その人とまた付き合えたら、その時にわたしをもう一度振ってください。でもそれまでは……一緒に居させて貰えませんか?わたし、未来先輩のしたい事なら何でもしますから!」
「いや、したい事って………」
「あのですね、女の子同士のえっちも……か、かなり気持ち良いんですよ?って、わたしは男の子とはした事無いから、そっちがどれくらい気持ち良いのか知りませんけど………」
うん、あたしも知らない。
「その……未来先輩さえよければ……わたしが教えてあげますから。女の子同士ってこんなに気持ち良いんだって……きっと先輩も気に入ってくれるって思うんです」
恥ずかしそうに頬を真っ赤にしながらも、必死にあたしを説得しようとする舞香。あたしはそんな舞香を優しく抱き締め、彼女の耳元で呟いた。
「うん……知ってるよ」
あの日から、あたしと舞香は定期的にえっちをしている。付き合ってる訳ではないので、いわゆるセフレってヤツなんだろうけど………不思議と罪悪感は湧かなかった。
「そう言えば未来先輩、今日ってこの後どうするんですか?」
舞香がドライヤーで髪を乾かしながら訊ねて来る。あたしはメイクをやり直しながら、舞香にこう答えた。
「実は本屋に行きたいんだよね」
先日、突然あたしのスマホが鳴った。まあ、電話なんていつも突然なんだけど、その日はいつもと違った。ディスプレイに表示された名前を見て、あたしの心臓は止まりそうになった。
『望月愛莉』
手が震えた。いや、全身が震えていた。頭の中が真っ白になって、気付いた時には通話の所をタップしていた。
そして、震える手でスマホを耳にくっつける。カラカラに乾いた口から、たった一言絞り出すのが精一杯だった。
「………はい」
「あ……えっと……日下未来さんの……番号で間違い無いでしょうか……?」
「………うん」
「あ……未来?あの、わたし……愛莉だけど」
「………ゔん……ッ!」
スマホを握りしめながら、あたしの目からはボロボロと涙が溢れた。久しぶりに聞く愛莉の声は少し大人っぽくなっていて、あたしの知らない愛莉なのに、あたしの良く知ってる愛莉本人だった。
吹っ切ろうと思った。もう愛莉とは何処にも接点なんか無いって思ってた。でも愛莉はあたしの電話番号をずっと覚えていてくれて、あたしも電話番号はずっと変えなかった。
まだ接点は残っていたのだ。
その日は色んな話をした。でも嬉しすぎて、緊張しすぎて、何を話したのかほとんど覚えていない。覚えているのはーーーーー
「あのね、今度わたしの書いた本が発売されるんだけど……未来には絶対読んで欲しくて」
「うん。絶対買う。どんなに難しくても全部読む」
「はは……多分難しくは無いと思うんだけど」
舞香とラブホテルを出た時には、時間はお昼を回っていた。さっきまでえっちしてたからってのもあるけど、結構お腹空いた。
「お腹空きません?あ、そう言えばお店って予約したんですか?確か来週ですよね、未来先輩の元恋人さんと会うのって」
「もちろん。ソッコーで次の日に予約した。あ、そう言えば今週中に髪切らないと」
先日の電話で、久しぶりに会いたいと愛莉に言われた。あたしなんてこの数年、毎日会いたいって思ってた。でももう二度と会えないんだろうって思ってた。
「髪、切っちゃうんですか?せっかく似合ってるのに……」
「あはは、ありがとう」
だってこの髪型、ゆるふわミディアムは愛莉が高校の時にしてた髪型だし。愛莉恋しさに同じ髪型にしてたなんて知られたら、恥ずかしくて死にたくなるし。ってかかなり痛い女だって思われるし。
「あーあ。未来先輩との関係ももう終わりかぁ……」
「いや……まだどうなるか分からないから」
「絶対ヨリ戻そうって話ですよ。ねえ先輩、もしそうなっても今の関係続けませんか?先輩みたいな綺麗な人で百合なんて、もう二度と出会えませんし……」
「あはは……そんな事は」
実際、そんな話になるのかどうかは愛莉に会ってみないと分からない。もちろん……期待はしてしまうけど。
「あ、本屋見えましたよ」
本屋に到着するあたしと舞香。あたしは早速、愛莉に教えて貰ったタイトルを探す。えっと……多分こっちのコーナーかな?
「あれ未来先輩、ラノベなんて読むんですか?ものすごい意外なんですけど……」
「え?いやー、普段は読まないかな」
愛莉の事だからてっきり、文学書みたいな超お堅い本でも書いたと思ってたんだけど、何と書いたのはライトノベル、つまりラノベだったらしい。
「あ、これだ」
愛莉に教えて貰ったタイトルを見つける。正真正銘、愛莉が書いたラノベ。趣味でウェブ小説書いてたらバズって、書籍化されたらしい。
「えーと……わっ、やっぱり先輩こっち系興味あるんですね!」
「そりゃあまあ……ってか舞香も興味ある奴じゃないの?」
「大好物です!読み終わったら貸してください!」
「これは家宝にするから、自分で買ってね」
「何ですか家宝って……じゃあ読み終わったら評価教えてください。あらすじとか、面白かったかイマイチだっーーーー」
「面白いよ。評価最高」
だって愛莉が書いたんだもん。面白くないなんて有り得ないんだけど。
「よ、読んだ事あるんですか?」
「無いよ。でも内容はすっごい良く知ってる」
「へ?それってどういうーーーー」
「じゃあ買ってくるね」
「あ、ちょっと先輩!未来せんぱーい!」
舞香の声を背中で聞きながら、あたしはレジの列に並ぶ。そして静かに目を閉じる。
愛莉………あたし達って、どうしてあんなにも惹かれ合ったんだろうね。相手の全てが大事で、相手の全てが好きすぎたよね。
あたしね、この間まで思っていたんだけど、あたしと愛莉が幼い頃に出会って、お互い恋に落ちたのってさ、あの世界を救うためだったんじゃないかって思ったんだ。
恋人同士だからあの世界に呼ばれて、恋人同士だからどんな困難にも一緒に打ち勝って来られた。
だからあの世界を救ってこの世界に戻って来たら、あたし達は途端に離れ離れになったんだって。もうあたしと愛莉の物語は、あの時点で終わっちゃったんだって。
でももしーーーーー
あたし達の物語に第二章があるのならーーーーー
その時、あたしのスマホがブルブル震えた。ディスプレイには『望月愛莉』と表示されている。
「もしもし愛莉?……え、あ、うん。今から買うとこ」
愛莉がわざわざ念入りの電話をして来た。もう、絶対発売日に買うってこないだの電話で言ったのに。
「うん。お店も予約したよ。あたしもその日は休暇申請出しといた」
今年の春、愛莉は大学を卒業して社会人になったらしい。やっとお互い、親元から離れて自立する事が出来た。
結構大きな会社に就職したみたいだけど、ラノベ作家と両立してやって行くのかどうかは聞いていない。もちろん愛莉なら簡単に両立しそうだけど。
「え?今の愛莉の髪型?あ、そんなに短いんだ。………え?絶対笑ったりなんかしないけど」
愛莉ならどんな髪型だって似合うから。あたしが笑ったりする筈なんて無い。
「お次でお並びのお客様ーーッ」
「あ、はーい。ごめん、順番来たから切るね。うん、来週楽しみにしてる」
店員さんに呼ばれ、あたしは急いで通話を切ってそそくさとレジへ近づく。そして手に持っていた本を、カウンターに置く。
置いた時に作者の名前がチラリと見えて、あたしは思わず泣きそうなった。
だってこの本は、あたしと愛莉の物語の第一章。あたしと愛莉が一番キラキラ輝いていた時の物語、その第一巻。
それはーーーーーー
『百合JKの異世界転移~女の子だけのパーティで最強目指します!~①』
作者:
クローバーの錬金術士
止まっていたあたしの腕時計がーーーーー
ーー再び時を刻み始めた。
※最後までお読みいただき、ありがとうございました。百合JKの異世界冒険譚、如何でしたでしょうか?なかなか思うように更新出来ない中、それでもお読みくださる皆様のお陰で何とか完走出来ました事、心よりお礼申し上げます。
ちなみに、当たり前ですがこの作品が書籍化する事はありません(笑)あくまでフィクションですのでご了承くださいませ。更に、この最終話の後に異世界側の後日談を掲載しますので、宜しければそちらもお読みください。
さて、今後の綾瀬の活動でございますけど、今後はのんびりと短編やショートを、自由に投稿しようと思っております。やはり長編は時間も気力も相当使いますので、もういいかなって思ってます。よほど書きたい題材があれば分かりませんけど、今の所は次の長編の予定はありません。ちなみに短編でもショートでも、書くのはR18作品になると思いますので、どうぞのんびりとお待ちくださいませ(笑)
それでは重ね重ねになりますが、最後までお読みいただきありがとうございました。また次回作でお会いできたら嬉しいです。ではでは。
綾瀬 猫
下着の上から割れ目を擦ると、すぐに硬い突起の感触が指先に伝わる。
「はっ……あっ……」
二本の指で弧を描くように突起を刺激すると、水色の下着の中央にはすぐに小さなシミが出来上がる。
口に含んだ乳首を舌先でねっとりと舐め回しながら、左手で反対側の乳首をキュッと摘む。
「はぁはぁ……んんっ!」
しばらく乳首と秘部の愛撫を続けると、下着の中央に出来上がった小さなシミは、すぐに舟形の大きなシミへと形を変える。
一度秘部から手を離し、少しだけ右手を持ち上げると、今度は下着の中に手を滑り込ませる。右手にはすぐに、恥丘に生えた茂みの感触が伝わる。さらに手を奥へと進めると、ぬるぬるとした液体の感触が指先を出迎える。
くちゅ、くちゅ、ぴちゃ
「あっ、あっ、はっ……あっ!」
指で直接秘裂を刺激すると、彼女は身体を震わせて甘い声を上げる。そう言えば今日は一泊ではなく、ご休憩で来ている事を思い出す。
つまり数時間後にはこのラブホテルを出なければならない。なので、あまり彼女の下着を汚してしまっては申し訳無いと思い、早々に下着を脱がす。
彼女の細い足からスルスルと降ろし、そのまま足首に掛けたままにしておく。最近、この方が興奮する事に気付いたのだ。
彼女の細い太ももにキスをする。一度、二度、三度、わざとチュッチュと音を立ててキスをすると、彼女の秘裂からはトロトロの液体が溢れ出す。
「はぁはぁ……あっ、ああッ」
彼女の顔を見ると、瞳に薄っすらと涙の膜が張っていた。焦らさないで、早くしてとでも言いたげな表情。その長いストレートロングの黒髪が、シーツの上で広がっている。それがとても扇情的に映り、彼女の股へと顔をうずめる。
「ふっ…うっ……」
指でゆっくり秘裂を開くと、綺麗なサーモンピンクの膣内が目に飛び込んで来る。もう既に外にまで溢れた愛液は、彼女のお尻を伝ってシーツを濡らしている。
愛液を掬うように舌を這わせると、彼女の身体がピクピクと気持ち良さそうに反応する。舌を秘裂に押し込み、膣内の浅い所を抜き差しすると、彼女の声が更に大きさを増した。
「はっ、ああっ!んっ、んっ、はぁうっ!!」
このまま続けても絶頂させられそうだが、やはり女性がみんな好きなのは、あの硬い部分。
既にパンパンに膨れ上がったクリトリスを舌先で刺激する。途端に彼女の身体が弓なりにのけ反った。
「ああっ!いや、ふっ、あっ、あんっ!あんッ!」
手のひら越しに、彼女の足に力が入るのが分かる。どうやらそろそろ限界らしく、確実に絶頂へ向かっている。
それならばと、太ももに掛けていた手を彼女の胸へと伸ばす。クリトリスを舐めながら乳首を指でコリコリ刺激すると、彼女はそのまま呆気なく果てた。
「ああっ、だめだめぇ~~!イクッ!イッちゃうイッちゃう!!ああああぁぁぁーーーーッ!!!!」
ビクンビクンと、何度も跳ねる彼女の身体。腰が何度も上下に動いて、まるで腰だけ別の生き物のようだった。
「はぁはぁはぁはぁ……!!」
荒い呼吸を繰り返す彼女。額には汗が浮かび、頬は薄紅色に染まっている。
「気持ち良かった?」
聞かなくても分かっているのに、わざと訊ねてみる。すると彼女は案の定ーーーーー
「はぁはぁ……気持ち良かったです…………………未来先輩」
と、彼女はあたしにそう答えた。
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鏡に映ったあたしの髪が、ドライヤーの風を受けて舞い上がっている。
全身汗と愛液まみれになったあたし達は、えっちの後の恒例であるお風呂に一緒に入り、つい今しがた上がった所。そしてあたしが先にドライヤーを使わせて貰っている。
あたしの名前は日下未来。今年二十三歳になる社会人。結構有名なスポーツ用品メーカーの開発部、そこにあたしの席がある。
元々運動が好きだったので、好きが極まってこの仕事を選んだんだけど、これが結構大変。でも楽しいので、割と天職なのではと思っている。
そう、あたしと愛莉が異世界から無事に帰って来て、早いものでもう七年の年月が経過した。やっぱり半年間も行方不明だった事もあって、当時あたし達が無事に見つかった時は、日本中で話題になった。一体半年間も何処で何をしていたのかと。
もちろん異世界に行っていたなんて、誰に言っても信じて貰えないので、愛莉には事前にベターだけど何も覚えて無いって事にしようと言われていた。
確かに下手な嘘を付くよりは、何も覚えていない方がまだ信じて貰えると思ったので、あたしもオッケーした。
でもこれが逆に、世間を更に賑わせる事になった。誘拐説、拉致説はまだ良くて、神隠し説や、宇宙人に攫われた説まで飛び出した。まあある意味、全然的外れじゃないんだけど。異世界の神様に攫われたようなものだったし。
こうして覚えていないを突き通せば、世間はそのうちあたし達になんて興味無くなると思っていた。次から次へと色んなニュースが飛び交うこの世界で、いつまでもあたし達になんか構っていられないだろうって。
でもあたし達にとって誤算だったのは、居なくなった当日のあたし達が、防犯カメラに映っていた事。しかも例の、ラブホテル街の近くの防犯カメラに。
この事実が、あたしと愛莉に重くのしかかった。世間のあたしと愛莉を見る目が一気に、好色、喜色の目に変わった。
あの二人レズなんだって
朝からラブホでやってたらしいよ
半年間隠れてやりまくってたんじゃねぇの?
そんな声が、色んな所から聞こえて来た。道を歩いてても、駅のホームに立ってても、学校の廊下でも。
別にあたし達はそれでも良かった。むしろ「ああそうだよ、あたしらガチで愛し合ってるんだよ!」って大声で言ってやりたかった。
でも、そんな心無い声が家族にも及んでいると知った時、あたしは呆然と立ち尽くした。お父さんが、お母さんが仕事先で同じ陰口を叩かれている。
弟や妹は、それが原因でイジメられてる。そんな事実を知った瞬間、あたしは急に怖くなった。
だって、あたしの家族がそうなら、愛莉の家族だって同じ目に遭ってるって事だから。
それからはお互い、少しずつ距離が離れていった。でも当たり前だけど、相手の事を嫌いになった訳じゃない。むしろお互い、気持ちは今までと全く変わらなかった。
それを確かめるように、あたしと愛莉は一日に数分だけ、毎日電話をした。あたしの家は狭いアパートで自分の部屋なんて無いから、毎日トイレでこっそり、小声で愛莉と電話で話をした。
たった数分でも、愛莉の声が聞けるのが嬉しかった。電話で愛莉と繋がっていられるのが嬉しかった。
でも、ある日を堺にそれすらも出来なくなった。愛莉に電話を掛けたけど繋がらないし、愛莉からも電話は掛かって来なくなった。
その数日後、あたしと愛莉は学校の廊下でバッタリとすれ違った。そしてすれ違い様に愛莉があたしの耳元で、「お母さんにスマホ没収された」と、抑揚の無い声で伝えて来た。
その時に悟った。愛莉のお母さんはスマホを没収してでも、あたしと愛莉の接点を無くしたいんだ。愛莉の人生に、あたしの存在はとにかく邪魔以外の何物でも無いんだ。
悔しかった。異世界ではあたしと愛莉の関係を隠したくない、愛し合ってるんだから誰に知られてもいいって言って、実際その通りにしていた。あたしと愛莉の関係を知っても誰も陰口叩いたりしなかったし、本当に自分たちが望む事を堂々として来た。
だけどこの世界では、好きな人を好きだって叫ぶ事すら出来ない。異世界では最強まで上り詰めたあたしや愛莉も、この世界では何の力も無いただの女子高生。両親に養って貰わないと生きていけない、ただの小娘。周りと上手く付き合わないと社会から簡単に弾かれてしまう、そんな弱い存在。
早く大人になりたかった。誰の世話にもならない、自分で自由に自分の事を決められる存在になりたかった。
ずっとその思いを胸に、あたしは高校を卒業した。三年生になる頃には、愛莉とは学校で会っても会釈すらしなくなっていた。こんなに好きなのに、こんなにも遠い。
高校合格のお祝いに愛莉とお揃いで買った腕時計。愛莉のはもうこの世界には無いけど、あたしはいつもの腕に嵌めていた。でも……電池が切れたのか、もう時を刻んではくれない。
高校卒業後は、二年間専門学校へ行った。でも地元は嫌だったので、わざわざ他県の専門学校を選んだ。この街は、愛莉との思い出がいっぱい有り過ぎる。だから知らない街で一から頑張ろうと決心しての事だった。
親には少しだけ仕送りして貰いながら、基本的にはバイト代を生活費に当てた。大好きなスポーツはジョギングをするくらいで、バイトと勉強の毎日だった。
早く一人前になりたい。早く就職して、もう一度愛莉と恋人同士に戻りたい。その一心で頑張った。
そして今のスポーツ用品メーカーに内定が決まった。これでようやく愛莉を迎えに行ける。そう思ったあたしは、就職と同時にスマホに愛莉の名前を呼び出した。
「……愛莉、まだ大学生じゃん……」
噂で、愛莉は地方の四年制大学に受かったと高校生三年の時に聞いた。つまり愛莉は今年、大学三年生。
自分ばかり就職したからと言って、それでどうなるというのか。愛莉はまだ学生で、学費だって親に出して貰っている筈。まだ自立していない相手に、電話なんて掛けられる筈も無い。
いや、きっとそれは只の言い訳だ。本当はもうとっくに、電話をする勇気なんか何処かで無くして来た。
だってもう何年、会話をしていないと思っているのだ。もう何年、愛莉の声を聞いていないと思っているのだ。
仮に愛莉が自立していたとして、今さら何を話せば良いのか。何て声を掛ければいいのか。もうそれすらも分からないくらい、愛莉との時間が空いてしまったのだ。
もういい加減、愛莉の事は吹っ切らないといけない。そうしないと前に進めないし、思い出は思い出として綺麗なまま残しておきたい。
「未来先輩、ドライヤー終わりました?」
ちょうど髪を乾かし終わったあたしの元に、一人の女性が下着姿のまま現れた。
「あ、うん。先に使わせてくれてありがとね」
「ふふ、わたしのロングヘアーより未来先輩のゆるふわミディアムの方が早く乾きますからね」
彼女の名前は柚木舞香。去年入社して来たばかりで、一応職場ではあたしの後輩って事になる。
髪が長くて、身体はスラッと細くて、顔は美人。そんな如何にも男性受けしそうな彼女にいきなり告白されたのは、去年のクリスマス前。
「あの……初めて見かけた時からずっと気になってました……」
正直驚いた。こんな綺麗な娘が、まさか女性であるあたしに告白してくるなんて。彼女ならきっと、男性にモテモテだろうと思ったから。
それにあたし自身、同性に告白されるなんて中学生の時に愛莉に告白して、逆に告白され返された時以来だ。だから驚くと同時に素直に嬉しいって思った。でもあたしはーーーーー
「ごめんね……舞香の事は好きだし可愛いって思うんだけど……他に好きな人が居るんだ」
そう言って断った。愛莉の事は吹っ切らないといけないんだけど、だからといってすぐに恋人を作る気持ちにはなれなかったから。
でも彼女は……舞香は諦めなかった。最初から断られるって分かってはいたみたいなんだけど、あたしが普通に断って来た事に驚いたらしい。
「あの……気持ち悪くないんですか?わたしの事……」
「え、何で?」
「だってわたし……百合ですよ?女の子にしか興味無いんですよ……?」
素直に凄いって思った。こんなに簡単に自分は百合ですって、正直に言える事が凄いって思った。
あたしが周りに言いたくても言えなかった言葉を、舞香は簡単に言える。それが凄いって思ったし、羨ましかった。
「そんな娘いっぱい居るよ?あたしの知り合いなんかは特に多いから」
主に異世界の知り合いに、だけど。
「あの……その好きな人って先輩の……恋人ですか?」
「あ、いや………昔はそうだったんだけど……ちょっと色々あって付き合えなくなっちゃって………」
こんな事、誰かに言ったのなんて初めてだった。でも舞香には聞いて欲しいって思った。
「それじゃあ、その人とまた付き合えたら、その時にわたしをもう一度振ってください。でもそれまでは……一緒に居させて貰えませんか?わたし、未来先輩のしたい事なら何でもしますから!」
「いや、したい事って………」
「あのですね、女の子同士のえっちも……か、かなり気持ち良いんですよ?って、わたしは男の子とはした事無いから、そっちがどれくらい気持ち良いのか知りませんけど………」
うん、あたしも知らない。
「その……未来先輩さえよければ……わたしが教えてあげますから。女の子同士ってこんなに気持ち良いんだって……きっと先輩も気に入ってくれるって思うんです」
恥ずかしそうに頬を真っ赤にしながらも、必死にあたしを説得しようとする舞香。あたしはそんな舞香を優しく抱き締め、彼女の耳元で呟いた。
「うん……知ってるよ」
あの日から、あたしと舞香は定期的にえっちをしている。付き合ってる訳ではないので、いわゆるセフレってヤツなんだろうけど………不思議と罪悪感は湧かなかった。
「そう言えば未来先輩、今日ってこの後どうするんですか?」
舞香がドライヤーで髪を乾かしながら訊ねて来る。あたしはメイクをやり直しながら、舞香にこう答えた。
「実は本屋に行きたいんだよね」
先日、突然あたしのスマホが鳴った。まあ、電話なんていつも突然なんだけど、その日はいつもと違った。ディスプレイに表示された名前を見て、あたしの心臓は止まりそうになった。
『望月愛莉』
手が震えた。いや、全身が震えていた。頭の中が真っ白になって、気付いた時には通話の所をタップしていた。
そして、震える手でスマホを耳にくっつける。カラカラに乾いた口から、たった一言絞り出すのが精一杯だった。
「………はい」
「あ……えっと……日下未来さんの……番号で間違い無いでしょうか……?」
「………うん」
「あ……未来?あの、わたし……愛莉だけど」
「………ゔん……ッ!」
スマホを握りしめながら、あたしの目からはボロボロと涙が溢れた。久しぶりに聞く愛莉の声は少し大人っぽくなっていて、あたしの知らない愛莉なのに、あたしの良く知ってる愛莉本人だった。
吹っ切ろうと思った。もう愛莉とは何処にも接点なんか無いって思ってた。でも愛莉はあたしの電話番号をずっと覚えていてくれて、あたしも電話番号はずっと変えなかった。
まだ接点は残っていたのだ。
その日は色んな話をした。でも嬉しすぎて、緊張しすぎて、何を話したのかほとんど覚えていない。覚えているのはーーーーー
「あのね、今度わたしの書いた本が発売されるんだけど……未来には絶対読んで欲しくて」
「うん。絶対買う。どんなに難しくても全部読む」
「はは……多分難しくは無いと思うんだけど」
舞香とラブホテルを出た時には、時間はお昼を回っていた。さっきまでえっちしてたからってのもあるけど、結構お腹空いた。
「お腹空きません?あ、そう言えばお店って予約したんですか?確か来週ですよね、未来先輩の元恋人さんと会うのって」
「もちろん。ソッコーで次の日に予約した。あ、そう言えば今週中に髪切らないと」
先日の電話で、久しぶりに会いたいと愛莉に言われた。あたしなんてこの数年、毎日会いたいって思ってた。でももう二度と会えないんだろうって思ってた。
「髪、切っちゃうんですか?せっかく似合ってるのに……」
「あはは、ありがとう」
だってこの髪型、ゆるふわミディアムは愛莉が高校の時にしてた髪型だし。愛莉恋しさに同じ髪型にしてたなんて知られたら、恥ずかしくて死にたくなるし。ってかかなり痛い女だって思われるし。
「あーあ。未来先輩との関係ももう終わりかぁ……」
「いや……まだどうなるか分からないから」
「絶対ヨリ戻そうって話ですよ。ねえ先輩、もしそうなっても今の関係続けませんか?先輩みたいな綺麗な人で百合なんて、もう二度と出会えませんし……」
「あはは……そんな事は」
実際、そんな話になるのかどうかは愛莉に会ってみないと分からない。もちろん……期待はしてしまうけど。
「あ、本屋見えましたよ」
本屋に到着するあたしと舞香。あたしは早速、愛莉に教えて貰ったタイトルを探す。えっと……多分こっちのコーナーかな?
「あれ未来先輩、ラノベなんて読むんですか?ものすごい意外なんですけど……」
「え?いやー、普段は読まないかな」
愛莉の事だからてっきり、文学書みたいな超お堅い本でも書いたと思ってたんだけど、何と書いたのはライトノベル、つまりラノベだったらしい。
「あ、これだ」
愛莉に教えて貰ったタイトルを見つける。正真正銘、愛莉が書いたラノベ。趣味でウェブ小説書いてたらバズって、書籍化されたらしい。
「えーと……わっ、やっぱり先輩こっち系興味あるんですね!」
「そりゃあまあ……ってか舞香も興味ある奴じゃないの?」
「大好物です!読み終わったら貸してください!」
「これは家宝にするから、自分で買ってね」
「何ですか家宝って……じゃあ読み終わったら評価教えてください。あらすじとか、面白かったかイマイチだっーーーー」
「面白いよ。評価最高」
だって愛莉が書いたんだもん。面白くないなんて有り得ないんだけど。
「よ、読んだ事あるんですか?」
「無いよ。でも内容はすっごい良く知ってる」
「へ?それってどういうーーーー」
「じゃあ買ってくるね」
「あ、ちょっと先輩!未来せんぱーい!」
舞香の声を背中で聞きながら、あたしはレジの列に並ぶ。そして静かに目を閉じる。
愛莉………あたし達って、どうしてあんなにも惹かれ合ったんだろうね。相手の全てが大事で、相手の全てが好きすぎたよね。
あたしね、この間まで思っていたんだけど、あたしと愛莉が幼い頃に出会って、お互い恋に落ちたのってさ、あの世界を救うためだったんじゃないかって思ったんだ。
恋人同士だからあの世界に呼ばれて、恋人同士だからどんな困難にも一緒に打ち勝って来られた。
だからあの世界を救ってこの世界に戻って来たら、あたし達は途端に離れ離れになったんだって。もうあたしと愛莉の物語は、あの時点で終わっちゃったんだって。
でももしーーーーー
あたし達の物語に第二章があるのならーーーーー
その時、あたしのスマホがブルブル震えた。ディスプレイには『望月愛莉』と表示されている。
「もしもし愛莉?……え、あ、うん。今から買うとこ」
愛莉がわざわざ念入りの電話をして来た。もう、絶対発売日に買うってこないだの電話で言ったのに。
「うん。お店も予約したよ。あたしもその日は休暇申請出しといた」
今年の春、愛莉は大学を卒業して社会人になったらしい。やっとお互い、親元から離れて自立する事が出来た。
結構大きな会社に就職したみたいだけど、ラノベ作家と両立してやって行くのかどうかは聞いていない。もちろん愛莉なら簡単に両立しそうだけど。
「え?今の愛莉の髪型?あ、そんなに短いんだ。………え?絶対笑ったりなんかしないけど」
愛莉ならどんな髪型だって似合うから。あたしが笑ったりする筈なんて無い。
「お次でお並びのお客様ーーッ」
「あ、はーい。ごめん、順番来たから切るね。うん、来週楽しみにしてる」
店員さんに呼ばれ、あたしは急いで通話を切ってそそくさとレジへ近づく。そして手に持っていた本を、カウンターに置く。
置いた時に作者の名前がチラリと見えて、あたしは思わず泣きそうなった。
だってこの本は、あたしと愛莉の物語の第一章。あたしと愛莉が一番キラキラ輝いていた時の物語、その第一巻。
それはーーーーーー
『百合JKの異世界転移~女の子だけのパーティで最強目指します!~①』
作者:
クローバーの錬金術士
止まっていたあたしの腕時計がーーーーー
ーー再び時を刻み始めた。
※最後までお読みいただき、ありがとうございました。百合JKの異世界冒険譚、如何でしたでしょうか?なかなか思うように更新出来ない中、それでもお読みくださる皆様のお陰で何とか完走出来ました事、心よりお礼申し上げます。
ちなみに、当たり前ですがこの作品が書籍化する事はありません(笑)あくまでフィクションですのでご了承くださいませ。更に、この最終話の後に異世界側の後日談を掲載しますので、宜しければそちらもお読みください。
さて、今後の綾瀬の活動でございますけど、今後はのんびりと短編やショートを、自由に投稿しようと思っております。やはり長編は時間も気力も相当使いますので、もういいかなって思ってます。よほど書きたい題材があれば分かりませんけど、今の所は次の長編の予定はありません。ちなみに短編でもショートでも、書くのはR18作品になると思いますので、どうぞのんびりとお待ちくださいませ(笑)
それでは重ね重ねになりますが、最後までお読みいただきありがとうございました。また次回作でお会いできたら嬉しいです。ではでは。
綾瀬 猫
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