【R18】女騎士ゆきの憂鬱

牧村燈

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第5章 女騎士とクーデター

5-5 傍若無人な脱出劇

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「国王様、そして王女様、私は参ります。ナマには今回の戦線でも、そしてかつてここで命を救われた恩があります。必ずナマを救い出してここに戻り、お二人をお守りしますので、どうぞ行かせてください」

 ゆきの出陣の挨拶を受けて、アン王女も、

「わかりました。ならば私も参ります」

 自分も行くと言い出した。

「それはなりません。王女様はここにいてください」

「いいえ。私はもうゆきと離れるのは嫌なのです。お願いゆき、私も連れていって」

「ダメです。ハッキリ申し上げますが、王女様が一緒では足手まといなのです」

「何故、何故そんなことを言うの」

 アン王女は泣き崩れた。足手まといというのは嘘だった。王女は十分に一人前以上の戦士である。だが、ゆきはどんな罠が張り巡らされているかも分からない敵陣に王女を連れて行くわけには行かなかった。

「私はいいでしょう?」

 ナカの申し出にも、ゆきはかぶりを振った。

「ナカはここで国王様と王女様をお守りして。私はトモを同行します」

「俺じゃねえのかよ」

 テツが憮然として抗議する。

「テツにも護衛をお願いしたいの。ここもいつ敵に発見されておかしくない。ね、テツ、ナカ、おねがいよ」

「考えがあってのことだな」

「はい。もちろん」

 国王の問いにゆきは力強く答えた。

「わかった。ならば我らはゆきの考えに賭けよう。皆のもの、良いな」

 国王のこの一言で全てが決まった。かくしてゆきとトモは早速出陣の支度を整え、宵闇の中を王国に向かった。

 ゆきの戦略のキーはナマにあった。恐らくもう間も無く、ナマとナカの躁鬱逆転が起こる。もしも起こらないならば、トモを使って逆転を起こすことを考えていた。確証があるわけではなかったが、トモなら逆転の扉を開けられるはずだ。そしてトモの意外性もまた、最後の切り札になり得るものだった。いずれにしても切り札は早く晒したくはない。トモの出番がないことを祈るのみだ。

 ゆきたちは、王国を目指して夜道を走った。


 一方、拷問部屋では、凌辱会第2クールの面々(裸チーム)が、マラダイの部下たちの襲撃を退け、武器を奪取して部屋を占拠していた。全員で慈しみ歓喜の絶頂に導いたナマを団結の旗頭に据え、この後再び襲ってくるであろう第二陣の攻撃に備えていた。

「お前のことは、俺たちが守る。だから何も心配するな」

 ナマはコスプレ用に用意されていたバニーガールの装いに身を包んで、コクリと頷く。第1クールの残党に傷つけられた心と身体をリセットしてくれた裸チーム。第1クールとは比べようもない快感に、一体どこまで昇りつめさせられるのだろうかと、囚われの身でありながら仄かな期待を寄せてしまったナマは、今、こうしてまるでお姫様にでもなったかのような扱いを受けることで、気持ちの部分でもこの凌辱者たちを許していた。

 裸チームの名の通り、男たちは全員が全裸だったが、そのままではさすがに落ち着かないので、それぞれコスプレグッズから思い思いの服を取り出して着ることにした。

 ある者はセーラー服を、ある者は陸上のユニフォームを、そしてある者はメイド服に身を包む。女子用故に当然に窮屈だ。下着もTバックや極小ビキニでは収まり切らずにイチモツをはみ出させている者が半数を数えた。10名全員の着替えタイムが終わると、裸チームは見事に変態コスプレチームに変身した。

 お互いにお互いを罵り合いながら、笑顔がこぼれる拷問部屋は、今ここが戦場の最前線であることを忘れさせる陽気な空気に満ちていた。その真ん中でウサギの耳を立てたナマにも笑顔が見える。

〈あれ?何でわたし笑ってんだろう?〉

 ナマは自分の置かれている立場が見えなくなっていた。彼らがアン王女の凌辱会参加者であり、自分もまた凌辱の対象として裸を弄られたことは紛れもない事実だ。たが、この男たちがジャッカルやマラダイに言いなりのシモベではなかった。自分たちの考えを持つ自立した存在だった。それは、この現世とは異なる封建的な王国の中にあっては、極めて数少ない者たちであることをナマはよく分かっていた。好き嫌いに関わらず、体制に逆らっては、食っていくことすら難しい、それが今の世だ。

 ナマは変態コスプレチームの朗らかで自信に満ちた雰囲気に身を委ねることで、この先、この人たちと自由気ままに生きていくという道を夢想していた。そして思い返せば、もう守るべき国もないのだということに、改めて愕然とするのだった。


 拷問部屋の制圧を目論むジャッカルの手先は、アン王女凌辱会の順番決めに便宜をはかった変態コスプレチームとは内通してる間柄という前提であり、とりあえずド派手なオープニング以外は、極めて軽い装備しか持たずに部屋に向かっていた。部隊も僅かに15名。先の武装マラダイ軍の20名よりも少数でありかつ精鋭でもなかった。

 一方、変態コスプレチームはと言えば、既にジャッカルもマラダイでもなく、今はナマを部隊の象徴、連帯の旗頭として担いでいた。この騒々しい拷問部屋から出て、早く落ち着いた場所でナマとの濃密な時間を楽しもうではないかという、熱く固い連帯感。それは、元はと言えば生贄の本体だったナマにおいても、それを待ちわびていると言って過言ではないテンションにあった。

 轟音、そして硝煙。

 そんな力関係や現在の位置関係を知らずにジャッカルの舞台の先陣が拷問部屋になだれ込んだ。しかし、そこに存在すべき10人の裸の男たちはいなかった。

 と、その時天井からカラフルな衣装で着飾った踊り子が舞い降りてきた。優雅な舞だった。一体それが何であるかの認識も出来ない内に、先陣の二人はなぎ倒されていた。

 続いてヒラヒラと(実際にはドズドズと)舞い降りる、陸上女子、メイド、セーラー服、CA、テニスウエア、セイバー、島風、スク水、ネズミ(女)と、様々なコスプレ男が硝煙の中に現れた。その真ん中にバニースタイルのナマ。度肝を抜かれた上に、既に先陣を失ったジャッカル軍は、たちまち逃げ腰になる。

「よし!一気にいくぞー!」

 セーラー服の掛け声で、先頭の踊り子と陸上女子が、入口を固める敵の天井に『ダダダダダダダダダダッ』と銃撃をまき散らす。無駄な殺生はしない。が、刃向うなら容赦なくいくぞ、という音に、完全に腰の引けたジャッカル軍は、真後ろに後退していく。変態コスプレチームは難なく拷問部屋の脱出に成功し、城外に出た。向かう先はアン王女の凌辱会会場だ。

「あそこの設備は、さっきの拷問部屋なんて目じゃないくらい何でも揃ってたからなあ」

「思う存分気持ちよくさせてやるからな、ナマ」

「そう?まあ、あんまり期待しないで、楽しみに待ってるわ」

「言うな、ナマ。まあいいさ、たっぷり哭かせてやるから、楽しみにしてろよ、はっはっはっ」

 陽気な変態コスプレチームは、それぞれマシンガンやライフルを肩に、傍若無人に城下を練り歩いていく。国王のいない王国の城下町は、ジャッカル軍の武器による粛清で一時は静かになっていたが、ジャッカル軍は国王の逃亡劇に続いて、アン王女の凌辱会までもが途中でゆきに王女をさらわれる失態続き。新国王を名乗るジャッカルの威厳は風前のともしびだった。

 それに加えて、新たに指揮官となったマラダイ王子さえも、ゆきをおびき出す人質であるはずのナマ(現世への放送は城下で視聴されていた)を、僅か10人の裸チーム(現変態コスプレチーム)に奪わる体たらくとなれば、もはや城下は歯止めのきかない無法地帯となっていた。

 組織化されていない自然派生的なデモが、刹那な祭りのようなバカ騒ぎをあちらこちらに発生させていた。傍若無人に練り歩く変態コスプレチームが目立たないほど町は乱れていた。

(続く)
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