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第2章
4回裏/秘密を守るために
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わかたか学園のベンチ裏まで連れてこられた山本先生は、気が急いていた。少しでも早くうののところに戻ってあげたい。
「何?どこにいるのよ?怪我人は?」
先導するわかたかの生徒を急かすが、
「あれ、おかしいな、どこ行ったんだろう......」
とまるで要領を得ない。ふ、と、これってもしかして騙されてる、疑惑が湧き立つ。
「......あなたたち、もしかして私を救護室から引き離そうとしたんじゃないの」
怯む生徒の反応を見て、それだと確信した山本先生は、救護室に戻ろうと踵を返した。
「待ってください」
わかたかの生徒が山本先生の肩を掴んで邪魔をする。一年生とは言え、小柄な山本先生に比べると体格差は歴然だ。力も強い。
「何をするの!」
山本先生は手を払いのけようとしたが、生徒はガッチリと後ろから両腕で羽交い絞めのような形で拘束してくる。
「すいません、でもまだちょっと。実験が終わってないといけないので」
「実験?実験って、何のことよ。あなたたち、君島君に何かする気なのね。ダメよ、それはダメよ」
「あ、先生。さては君島選手の秘密を知ってるんですね。だったら話は早いです。僕たちはただ、その秘密を花畑先輩に報告しないといけないだけなんで」
「何ですって、花畑兄弟もうのの秘密を知ってるっていうの?」
「お兄ちゃん先輩は、お尻にはうるさいんですよ。試合前に触って一発で見抜いたらしいですよ」
山本先生はここは観念するしかないと判断した。何とかこの子達からうのの秘密が漏れ広がらないために出来ることをするしかない。
「そう。わかったわ。あなたの仲間は今救護室にいるのね?」
「はい、そうです。」
「そう。じゃあ私は邪魔しないから救護室に戻りましょう」
と促した。とにかくうのちゃんからこいつらを引き離さないと。後は私が何とかする。
試合は4回の表が終わり、4回裏にチェンジするタイミングだった。ベンチ裏で山本先生がこんなことになっているとは露知らず、うのは元気よくグランドに飛び出していった。
<4回裏>
わかたかの攻撃は、打順は1番からの好打順。4番の前にランナーを出したくないうのは、ストライクを先行させてコントロール難をカバーする戦法を取った。これがわかたかの待球策と相性が良く、打者はたちまち0-2に追い込まれて、最後は厳しいコースや臭いボールに手を出すパターンにハマってしまった。
結果、待球策で球数を投げさせる作戦にも関わらず、この回のうのの投球数はわずか10球。うのはわかたかの拙攻に助けられた。
<救護室>
山本先生とわかたか一年3人組の一人が救護室に戻ると、既にうのは4回裏の登板に出た後だった。窓の外の覗き見ポジションにいた二人に合図を送って救護室に招き入れる。
「君島君はどこ?」
「もう、マウンドに行きましたよ」
救護室に残っていた3人組の一人が答える。
「実験はどうだった?」
山本先生を連れ出した生徒が尋ねる。
「実験の前に、君島選手が勝手にストリップを見せてくれたよ」
救護室残留組の生徒が得意げに答えた。
「何言ってんのよ。そんなこと、君島君がするわけないじゃない!」
山本先生が否定したが、
「それが、僕たちもビックリしたんですが、やってくれたんですよ、先生」
「それでどうだったんだ?」
「お兄ちゃん先輩の見立て通りさ」
「やっばり、そうだったのか。畜生、俺も見たかったな」
「しかもピンクだ」
「ピンクか?って、ピンクなんてあるのか?」
「俺たちだった驚いたさ、なあ」
「おお、まじで。もの凄くキレイだった」
「そうか、よし、早速戻って報告しよう」
「ちょっと待って」
山本先生は慌てて三人を引き留めた。
「お願い、そのことは秘密にしてくれない」
「いや、先生、申し訳ないんですが先輩の命令は絶対なんで、無理ですよ」
覗きをさせて調べさせたくらいなのだ。既に花畑兄弟は確証に近いネタを持っていると考えるべきだろう。しかし、何としても、せめてこの試合が終わるまでの間だけでも口止めをしなければ。うのちゃんが全てをかけてここまで頑張って来たものを無駄にするわけにはいかない。
「お願いよ。私に出来ることなら何でもするから、君島君のことだけは秘密にして」
山本先生こと山本みすずは、23歳。身長はうのよりも10センチ低い155センチ。昨年大学を卒業して養護教諭としてあけぼの高校の保健室に赴任。今年2年目の新米教諭である。学生時代に合気道をしていたらしくショートカットで雰囲気もボーイッシュだが、いつでもお洒落を欠かさない、いかにも女性らしい女性だった。保健室からはいつもいい匂いがする、というのは校内の誰もが知っている有名な話だ。可愛らしい風貌もあり、あけぼの高校文句無しのNo.1マドンナである。
これしかない。その山本先生が、盛りのついた高校生にこんなことを言えばどうなるか。その行き着く先を承知していても、今の私に出来ることはこれしかない。
おい、おい、まじ?という空気が3人組の中に生まれる。君島選手のこの秘密は相当やばいトップシークレットらしい。そりゃそうか、あけぼののスーパーエースが『とんだお祭り野郎』なんてことが公になりゃあ、大騒ぎになること間違いないだろうからな。
「先生。ホントになんでもしてくれるんですか?」
「みんなが黙っていてくれるって、約束してくれるなら」
わかたか一年3人組の今日の運気は、言わずもがな最高潮だった。
(続く)
「何?どこにいるのよ?怪我人は?」
先導するわかたかの生徒を急かすが、
「あれ、おかしいな、どこ行ったんだろう......」
とまるで要領を得ない。ふ、と、これってもしかして騙されてる、疑惑が湧き立つ。
「......あなたたち、もしかして私を救護室から引き離そうとしたんじゃないの」
怯む生徒の反応を見て、それだと確信した山本先生は、救護室に戻ろうと踵を返した。
「待ってください」
わかたかの生徒が山本先生の肩を掴んで邪魔をする。一年生とは言え、小柄な山本先生に比べると体格差は歴然だ。力も強い。
「何をするの!」
山本先生は手を払いのけようとしたが、生徒はガッチリと後ろから両腕で羽交い絞めのような形で拘束してくる。
「すいません、でもまだちょっと。実験が終わってないといけないので」
「実験?実験って、何のことよ。あなたたち、君島君に何かする気なのね。ダメよ、それはダメよ」
「あ、先生。さては君島選手の秘密を知ってるんですね。だったら話は早いです。僕たちはただ、その秘密を花畑先輩に報告しないといけないだけなんで」
「何ですって、花畑兄弟もうのの秘密を知ってるっていうの?」
「お兄ちゃん先輩は、お尻にはうるさいんですよ。試合前に触って一発で見抜いたらしいですよ」
山本先生はここは観念するしかないと判断した。何とかこの子達からうのの秘密が漏れ広がらないために出来ることをするしかない。
「そう。わかったわ。あなたの仲間は今救護室にいるのね?」
「はい、そうです。」
「そう。じゃあ私は邪魔しないから救護室に戻りましょう」
と促した。とにかくうのちゃんからこいつらを引き離さないと。後は私が何とかする。
試合は4回の表が終わり、4回裏にチェンジするタイミングだった。ベンチ裏で山本先生がこんなことになっているとは露知らず、うのは元気よくグランドに飛び出していった。
<4回裏>
わかたかの攻撃は、打順は1番からの好打順。4番の前にランナーを出したくないうのは、ストライクを先行させてコントロール難をカバーする戦法を取った。これがわかたかの待球策と相性が良く、打者はたちまち0-2に追い込まれて、最後は厳しいコースや臭いボールに手を出すパターンにハマってしまった。
結果、待球策で球数を投げさせる作戦にも関わらず、この回のうのの投球数はわずか10球。うのはわかたかの拙攻に助けられた。
<救護室>
山本先生とわかたか一年3人組の一人が救護室に戻ると、既にうのは4回裏の登板に出た後だった。窓の外の覗き見ポジションにいた二人に合図を送って救護室に招き入れる。
「君島君はどこ?」
「もう、マウンドに行きましたよ」
救護室に残っていた3人組の一人が答える。
「実験はどうだった?」
山本先生を連れ出した生徒が尋ねる。
「実験の前に、君島選手が勝手にストリップを見せてくれたよ」
救護室残留組の生徒が得意げに答えた。
「何言ってんのよ。そんなこと、君島君がするわけないじゃない!」
山本先生が否定したが、
「それが、僕たちもビックリしたんですが、やってくれたんですよ、先生」
「それでどうだったんだ?」
「お兄ちゃん先輩の見立て通りさ」
「やっばり、そうだったのか。畜生、俺も見たかったな」
「しかもピンクだ」
「ピンクか?って、ピンクなんてあるのか?」
「俺たちだった驚いたさ、なあ」
「おお、まじで。もの凄くキレイだった」
「そうか、よし、早速戻って報告しよう」
「ちょっと待って」
山本先生は慌てて三人を引き留めた。
「お願い、そのことは秘密にしてくれない」
「いや、先生、申し訳ないんですが先輩の命令は絶対なんで、無理ですよ」
覗きをさせて調べさせたくらいなのだ。既に花畑兄弟は確証に近いネタを持っていると考えるべきだろう。しかし、何としても、せめてこの試合が終わるまでの間だけでも口止めをしなければ。うのちゃんが全てをかけてここまで頑張って来たものを無駄にするわけにはいかない。
「お願いよ。私に出来ることなら何でもするから、君島君のことだけは秘密にして」
山本先生こと山本みすずは、23歳。身長はうのよりも10センチ低い155センチ。昨年大学を卒業して養護教諭としてあけぼの高校の保健室に赴任。今年2年目の新米教諭である。学生時代に合気道をしていたらしくショートカットで雰囲気もボーイッシュだが、いつでもお洒落を欠かさない、いかにも女性らしい女性だった。保健室からはいつもいい匂いがする、というのは校内の誰もが知っている有名な話だ。可愛らしい風貌もあり、あけぼの高校文句無しのNo.1マドンナである。
これしかない。その山本先生が、盛りのついた高校生にこんなことを言えばどうなるか。その行き着く先を承知していても、今の私に出来ることはこれしかない。
おい、おい、まじ?という空気が3人組の中に生まれる。君島選手のこの秘密は相当やばいトップシークレットらしい。そりゃそうか、あけぼののスーパーエースが『とんだお祭り野郎』なんてことが公になりゃあ、大騒ぎになること間違いないだろうからな。
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