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妖精の森テーマパーク~お菓子の家にまつわる哀しい半獣人の詩 ①妖精フィギュア
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妖精の森のテーマパークの一角に、他の洒落た建物とは毛色の違う古ぼけた小屋がひとつあった。「お菓子の家」という立札があったが、どこがお菓子なのかよく分からない。小屋の中に入ることは出来ないが、外からの観覧は自由になっていた。説明書きによれば、この小屋はテーマパークが作られる前からここにあったものなのだという。かなり特殊な建築物でどのくらい前に建てられたものなのか、専門家にも正確には分からないらしい。それでも数百年前からここにあることは間違いないそうだ。
通常は公開していないが、年に一度4月22日の「半獣人の日」が晴れた日に限って、扉を開けて中を観覧することが出来た。かねてより妖精が住むとされるこのテーマパークに興味があり、特にこの「お菓子の家」の壁に描かれている絵に強い関心のあった私は、観覧の条件が揃った今日、仕事を有給休暇を使用して休み、滅多に履かない運動靴を下駄箱の奥から引っ張り出してここまでやって来たというわけだ。
周囲を森で囲まれた広大なパークは、高低差もなかなかなものでその外れにある「お菓子の家」に辿り着くまでにもかなりの道程を歩いた。口コミを見て運動靴でやって来たのは正解だった。普段運動をしない身体にはそれなりに応えたが、新緑の息吹に満たされた空気が心地よかった。
目的地の「お菓子の家」には年に一度の特別な日ということもあってだろうか、見栄えのしない小屋にも関わらず十人ほどの客が列を作っていた。木陰で順番待ちをしながら、半獣人についての解説を読む。
【半獣人=スニーフ:身体を茶色の毛で覆われたカンガルーに良く似た半獣人。妖精たちとは気が合い、この森で暮らしていた。言葉遣いは荒いが気持ちは優しい。込み入った話は苦手で、一本気なところがある。情にもろい。精力旺盛。脚力が強く数十メートルの高さまでジャンプ可能。「お菓子の家」の壁の絵から美しい姉妹と暮らしていたと想像されているが、その記録や伝承は全くない】
親分肌のガキ大将みたいな奴だったのかな、などと想像している内に順番が回って来て小屋に入った。
小屋の壁にはその姉妹を描いたものと思われる絵が2つ残されていた。
ひとつは花畑の中で二人の裸の美女が踊っている姿が描かれている。華やかなテーマでありながら、二人の表情は強い緊張感に強張り、視線は飛んでくる何かを追掛けているように見えた。花畑がまるで戦場のようだ。
もうひとつはその二人の美女の安らかな寝顔である。疲れているのかとても深い眠りの中にあるものの、その表情はどこか清々しく、何かをやり切った後のような爽快感が感じられた。
私が随分長いこと絵を見ていたからだろうか。麦わら帽子の吟遊詩人のコスプレをした少年が、問わず語りにこんな話をしてくれた。その顔が浮世離れしたほど美しかったことを、私は今でも憶えている。
(続く)
通常は公開していないが、年に一度4月22日の「半獣人の日」が晴れた日に限って、扉を開けて中を観覧することが出来た。かねてより妖精が住むとされるこのテーマパークに興味があり、特にこの「お菓子の家」の壁に描かれている絵に強い関心のあった私は、観覧の条件が揃った今日、仕事を有給休暇を使用して休み、滅多に履かない運動靴を下駄箱の奥から引っ張り出してここまでやって来たというわけだ。
周囲を森で囲まれた広大なパークは、高低差もなかなかなものでその外れにある「お菓子の家」に辿り着くまでにもかなりの道程を歩いた。口コミを見て運動靴でやって来たのは正解だった。普段運動をしない身体にはそれなりに応えたが、新緑の息吹に満たされた空気が心地よかった。
目的地の「お菓子の家」には年に一度の特別な日ということもあってだろうか、見栄えのしない小屋にも関わらず十人ほどの客が列を作っていた。木陰で順番待ちをしながら、半獣人についての解説を読む。
【半獣人=スニーフ:身体を茶色の毛で覆われたカンガルーに良く似た半獣人。妖精たちとは気が合い、この森で暮らしていた。言葉遣いは荒いが気持ちは優しい。込み入った話は苦手で、一本気なところがある。情にもろい。精力旺盛。脚力が強く数十メートルの高さまでジャンプ可能。「お菓子の家」の壁の絵から美しい姉妹と暮らしていたと想像されているが、その記録や伝承は全くない】
親分肌のガキ大将みたいな奴だったのかな、などと想像している内に順番が回って来て小屋に入った。
小屋の壁にはその姉妹を描いたものと思われる絵が2つ残されていた。
ひとつは花畑の中で二人の裸の美女が踊っている姿が描かれている。華やかなテーマでありながら、二人の表情は強い緊張感に強張り、視線は飛んでくる何かを追掛けているように見えた。花畑がまるで戦場のようだ。
もうひとつはその二人の美女の安らかな寝顔である。疲れているのかとても深い眠りの中にあるものの、その表情はどこか清々しく、何かをやり切った後のような爽快感が感じられた。
私が随分長いこと絵を見ていたからだろうか。麦わら帽子の吟遊詩人のコスプレをした少年が、問わず語りにこんな話をしてくれた。その顔が浮世離れしたほど美しかったことを、私は今でも憶えている。
(続く)
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