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弍ノ怪:真夜中に蛙
18 夜の魔法使い
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蝦蟇は後ろにいたみたい。
長い舌を伸ばすと、ユウを捕まえようとした。
怖くて逃げられない。体が固まってしまった。
「(バサッ)……あれ?」
気が付くと、ユウは空を飛んでいた。
中学校の校舎と校庭が小さく見える。
蝦蟇も舌を伸ばしたまま戸惑っていて、キョトンとしていた。
「大丈夫、ユウ?」
「セナさん!?」
ユウはセナの腕の中に居た。右腕だけで抱え込まれていたんだ。
しかも地面に足が付いていない。
空を飛んでいる。魔法使いってやっぱり凄い。
「は、はい! 大丈夫です。でもセナさん、空が飛べたんですね?」
「魔法使いは大抵空が飛べるもの。でも、私は得意」
「そうなんですか?」
ユウは気が付いていなかった。
人を抱えて、しかも片腕で抱えて、セナは余裕で空を飛んだ。
バランスを崩す筈なのに、まるで崩れた様子が無かった。
「私は、夜の魔法使い」
「夜?」
何を隠そう、セナはブラックナイトは、夜の魔法使い。
黒い羽をはためかせると、距離を取って校庭に下りた。
「はい」
「ありがとうございました、ブラックナイトさん」
ペコリと頭を下げて、お礼を言った。
けれどセナは首を横に振る。
今は蝦蟇を見るべきだと、視線で誘導する。
「気を付けて、ユウ。蝦蟇は毒があるからね」
「は、はい。でも、私はなにをしたら」
「ユウがどんな魔法を使えるのか、私は知らない。だから、見ていて!」
セナはユウの魔法を知らない。
だから何をして貰うか言えない。
「は、はい。シッカリ見ます!」
「うん。それじゃあ……」
セナがそこまで口にした。
でも蝦蟇は黙ってなかった。
口から固めた唾液を吐き出した。
「ガマァ!」
唾液が飛んで来る。
ユウは避けようとした。
だけどセナは逃げないで、腕を払う。
「こんな感じ、かな?」
固めた唾液が触れそうになった。
当たる瞬間、目の前で弾けた。
ユウは目を見開くと、何が起きたのか、分からなかった。
「ブラックナイトさん!」
「大丈夫? 怪我とかしてない?」
セナはユウの心配をした。
でもユウはセナが何をしたのか分からない。
ただ腕を払った……と思ったら、手に何か持っている。
「ふぅ。今日もよく切れる」
セナの手に握られていたのは、黒いナイフ。
カラスの羽根のようで、艶があり、光沢がよく出ていた。
「ブ、ブラックナイトさん、その手に持っているのはなんですか!?」
「コレ? これは私の魔法アイテム。夜の羽刃だよ」
魔法アイテム。それは魔法使いになるための特別な道具。
セナの場合は、カラスの羽根をモチーフにしていた。
だから短い、けどよく切れる、そして夜でも飛べて黒の中に消えることが出来る。
これこそ、夜の魔法使いだった。
「す、凄いです」
「でも、このナイフはそこまで長く無いから、近くしか切れない。おまけに一本しかない」
あくまでも、セナの武器はナイフ。
魔法アイテムとしては可愛くないし、使い勝手も悪い。
けれどセナは気に入っていた。真面目なセナだからこそ、シックなナイフがよく似合う。
「だから、一撃で決める。行くよ、ユウ」
「い、行くって、何処にですか!?」
この期に及んで、ユウはまだ理解していない。
蝦蟇は目の前にいる。そしてユウとセナを狙う。
固めたネトネトとした唾液を吐き出した。
「決まってるよ」
もう一度、ナイフを払った。
絶対に人に向けたらダメ。それは絶対。
セナは唾液を切り裂いた。
粘液が弾け飛んで、キラリと光る。
魔法使いの魔力で浄化された。
怪異であっても、魔法使いには関係が無い。
だって、祓ってしまうから。
「蝦蟇を祓う。それが魔法使いだよ」
「わ、分かりました!」
何かは分からない。
けど気迫に負けたユウは、セナに従う。
カッコいいセナの背中を追い掛けると、蝦蟇へと向かった。無策で突っ込んだ。
長い舌を伸ばすと、ユウを捕まえようとした。
怖くて逃げられない。体が固まってしまった。
「(バサッ)……あれ?」
気が付くと、ユウは空を飛んでいた。
中学校の校舎と校庭が小さく見える。
蝦蟇も舌を伸ばしたまま戸惑っていて、キョトンとしていた。
「大丈夫、ユウ?」
「セナさん!?」
ユウはセナの腕の中に居た。右腕だけで抱え込まれていたんだ。
しかも地面に足が付いていない。
空を飛んでいる。魔法使いってやっぱり凄い。
「は、はい! 大丈夫です。でもセナさん、空が飛べたんですね?」
「魔法使いは大抵空が飛べるもの。でも、私は得意」
「そうなんですか?」
ユウは気が付いていなかった。
人を抱えて、しかも片腕で抱えて、セナは余裕で空を飛んだ。
バランスを崩す筈なのに、まるで崩れた様子が無かった。
「私は、夜の魔法使い」
「夜?」
何を隠そう、セナはブラックナイトは、夜の魔法使い。
黒い羽をはためかせると、距離を取って校庭に下りた。
「はい」
「ありがとうございました、ブラックナイトさん」
ペコリと頭を下げて、お礼を言った。
けれどセナは首を横に振る。
今は蝦蟇を見るべきだと、視線で誘導する。
「気を付けて、ユウ。蝦蟇は毒があるからね」
「は、はい。でも、私はなにをしたら」
「ユウがどんな魔法を使えるのか、私は知らない。だから、見ていて!」
セナはユウの魔法を知らない。
だから何をして貰うか言えない。
「は、はい。シッカリ見ます!」
「うん。それじゃあ……」
セナがそこまで口にした。
でも蝦蟇は黙ってなかった。
口から固めた唾液を吐き出した。
「ガマァ!」
唾液が飛んで来る。
ユウは避けようとした。
だけどセナは逃げないで、腕を払う。
「こんな感じ、かな?」
固めた唾液が触れそうになった。
当たる瞬間、目の前で弾けた。
ユウは目を見開くと、何が起きたのか、分からなかった。
「ブラックナイトさん!」
「大丈夫? 怪我とかしてない?」
セナはユウの心配をした。
でもユウはセナが何をしたのか分からない。
ただ腕を払った……と思ったら、手に何か持っている。
「ふぅ。今日もよく切れる」
セナの手に握られていたのは、黒いナイフ。
カラスの羽根のようで、艶があり、光沢がよく出ていた。
「ブ、ブラックナイトさん、その手に持っているのはなんですか!?」
「コレ? これは私の魔法アイテム。夜の羽刃だよ」
魔法アイテム。それは魔法使いになるための特別な道具。
セナの場合は、カラスの羽根をモチーフにしていた。
だから短い、けどよく切れる、そして夜でも飛べて黒の中に消えることが出来る。
これこそ、夜の魔法使いだった。
「す、凄いです」
「でも、このナイフはそこまで長く無いから、近くしか切れない。おまけに一本しかない」
あくまでも、セナの武器はナイフ。
魔法アイテムとしては可愛くないし、使い勝手も悪い。
けれどセナは気に入っていた。真面目なセナだからこそ、シックなナイフがよく似合う。
「だから、一撃で決める。行くよ、ユウ」
「い、行くって、何処にですか!?」
この期に及んで、ユウはまだ理解していない。
蝦蟇は目の前にいる。そしてユウとセナを狙う。
固めたネトネトとした唾液を吐き出した。
「決まってるよ」
もう一度、ナイフを払った。
絶対に人に向けたらダメ。それは絶対。
セナは唾液を切り裂いた。
粘液が弾け飛んで、キラリと光る。
魔法使いの魔力で浄化された。
怪異であっても、魔法使いには関係が無い。
だって、祓ってしまうから。
「蝦蟇を祓う。それが魔法使いだよ」
「わ、分かりました!」
何かは分からない。
けど気迫に負けたユウは、セナに従う。
カッコいいセナの背中を追い掛けると、蝦蟇へと向かった。無策で突っ込んだ。
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