毒も薬も紙一重〜総合魔術大学の日陰者は、何故か今日も慎ましく生きられない!?

水定ゆう

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16.疑われるカモミール

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 ローザに連れられて、アダバナは急いでいた。
 如何やらサティウスが何者かによって襲われた事件。
 何故かアダバナだけではなくカモミールまで疑われているようで、証人が必要とされていた。

「この部屋よ」
「えっ、ここって」

 連れて来られたのは応接室だった。
 アカデミック総合魔術大学は、広大な敷地面積を誇る。
 その中に設置された塔は幾つもあり、中には何のために存在するのか分からない部屋もあった。

 それでも応接室は、まだ必要価値が理解出来る。
 とは言え、立ち入ったことは一度しかない。
 アカデミック総合魔術大学の受験。そこで応接室を一度だけ使った記憶がある。

「ローザさん、ここは?」
「ここにカモミール教授がいるわ」
「ここに、ですか?」

 話の流れから、カモミールが犯人として疑われている。
 もちろん、カモミールにサティウスを襲う動機は無い。
 そんなのは百も承知だが、一応重要参考人だ。
 疑うことも視野に入れると、部屋に研究室で動かれるよりも、応接室の方が何かと都合がいいのだろう。

「それじゃあ後は頼むわ」
「ローザさん、行っちゃうんですか?」
「ええ、私も忙しいもの。それじゃあ任せたわよ」

 ローザは応接間で案内をすると、アダバナを一人にした。
 スッとその場を立ち去ってしまうと、アダバナは手を伸ばす。
 だけど待ってくれる様子は無くて、スッと手を挙げる。
 カッコいい……っていうより薄情だ。

「行っちゃった……」

 ローザは後腐れの一つも無かった。
 恐らく何か立て込んでいるのだろうが、薄情でもあった。
 けれどアダバナは文句の一つも言わない。
 任された以上、緊張するとはいえ、目の前の扉と向き直る。

「証人、証人……頑張らなくちゃ」

 ローザはギュッと拳を作った。
 緊張してしまって汗がダラダラ出てしまう。
 過呼吸になる寸前だったけど、何とか気を取り留める。

「(コンコンコン)失礼します」

 ドアノブを回して応接室に入った。
 一応ノックをしてから扉を開ける。
 するとアダバナの視界に飛び込んで来たのは、怖い光景だった。

「カモミール先輩、本当に違うんですよね!?」
「ひやっ!?」

 その光景は何と表現したらいいのだろうか?
 警察の格好をした女性が、カモミールに詰め寄っている。
 しかもただ詰め寄るのではなく、上から被さるようにしてソファーに押し倒すと、カモミールは他愛のない行動のように思い笑っていた。

「はい、違いますよ」
「……その目は嘘を」
「言っていませんが? ……おや、アダバナさん、来てくださったんですね」

 話しを振られてしまった。
 本当は陰の者として関わりたくもなかった。
 空気としてその場に溶け、置物のように過ごして存在感を殺す。
 完全に同化する立ち回りを見せたのだが、普通にバレてしまった。

「アダバナ……貴女ですか、待っていましたよ!」

 いや、この期に及んでその態度は無理がある。
 アダバナはタジタジになってしまうと、カモミールに被さっていた女性と対面する。
 何事もなかったかのように振舞うと、本当特別なことではなかったのだろう。
 それとは別で、アダバナは固まってしまうと、ガチガチの石像になっていた。

「えっ、あっ、そ、その、あっ、えっと、えっと、っとっとっとぉ……」
「失礼しました。私はシャウワ・ハウベスキーと言います。見ての通り……」
「騎士警察の方ですよ」
「カモミール先輩!?」

 女性の名前はシャウワ・ハウベスキー。
 もちろんアダバナは聞いたこともなければ会ったこともない。
 完全に初見の初対面で、緊張してしまっていた。

 けれどシャウワとカモミールは知り合いのようだ。
 おまけに“先輩”と呼んでいるのが引っかかる。
 
話の取っ掛かりをアダバナは何とか口を動かす。
舌を噛んでしまいそうになりながらも、糸口を上手く広げた。

「えっと、その、シャウワさんは……」
「アルカード魔術学校の生徒です。こちらにいる重要参考人のカモミール教授とは、一つ年下の後輩に当たります」
「やっぱり……」

 思った通りだった。シャウワはアダバナの想像通り、カモミールの後輩。
 と言うよりも、アカデミック総合魔術大学には、アルカード魔術学校の卒業生が多いのだろうか? 流石は四大魔術学校、よく卒業出来たと自分でも驚いてしまった。

「あの、シャウワさん!」
「単刀直入に聞きます。貴女は、容疑者の一人カモミールさんが関わっていると思いますか?」
「えっと……」

 シャウワは騎士警察として真っ当だった。
 眼前に訊ねられると、アダバナは困ってしまう。
 困惑してしまい、その場で立ち尽くすことになると、視線を右往左往する。

 何を言ったら正解なのだろうか?
 確かにカモミールはサティウスを襲うような動機は無い。
 だけど難しいのは、全くの無関係ではないのだ。
 実際、薬品を育毛剤を作っていた辺りでは、関係があったとも言える?

「わ、分からないです」
「「ん?」」

 ここで救世主の登場……とは行かない。
 カモミールが無関係と主張したい。
 だけどアダバナにとっては難しい。立会人も証人も自分には似合わないと思いつつ、困りが尾を浮かべると、役にも立たない証人の登場に、カモミールもシャウワも困惑していた。
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