毒も薬も紙一重〜総合魔術大学の日陰者は、何故か今日も慎ましく生きられない!?

水定ゆう

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41.危険な研究資料

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「これは……」
「なんですか、この資料は。サティウス先輩は、こんなものを検証して……はぁ?」

 カモミールとシャウワは絶句していた。
 アダバナは見せて貰えていないが、何やら想像を絶する内容だったらしい。
 眉間に皺を寄せると、口元を抑えたくなった。

「あ、あの、カモミール教授、シャウワさん。資料にはなにが書かれているんですか?」

 アダバナは訊ねたのだが、何故か答えてくれない。
 学生には決して教えることが出来ない内容だからだ。

「非常に危険な毒物の研究と検証ですね」
「はい。それ以外にはなにも……」

 如何やら本当に説明が出来ないらしい。
 一体どんな危険な薬品(毒物)の研究をしていたのだろうか?

 アダバナには想像することさえ烏滸がましい。
 そんなことは分かっていながらも、金庫の中身。
 あの衝撃は忘れられない。何せ、金庫の中身は——




「これは、凄い量の資料ですね」
「ファイリングされていますよ」
「それが何冊も……ど、ドクロのマーク!?」

 金庫の中には気になるものが大きく分けて二つは言っていた。
 一つは黒い箱。試験管がスッポリと収まるには充分だ。

 もう一つはファイル。かなり分厚く、何枚もの紙束が収まっている。
 気になる表紙にはドクロのマークが描かれており、一目で危険なものだと理解出来た。

「どうやら国が押収した薬品の研究資料のですね」
「はい。こちらは検証結果でしょうか?」
「恐らくは。内容は……カモミール先輩」
「どうしましたか、シャウワ?」
「ここを見てください。この薬品、デトロメキシアンを使っていますよ!」
「デトロメキシアンですか!?」

 何やら表情が険しくなっていた。とは言え、アダバナはポカンとしている。
 それもその筈、効き慣れない単語の物質が含まれていたのだ。

 デトロメキシアンは非常に毒性の強い物質だ。
 自然界には存在しない、とある研究機関が秘密裏に開発・研究を行っていた。
 その効果は凄まじく、気化する毒のため、呼吸を摺れば確実に肺へと届く。
 すると最後、呼吸器感を犯し、体内の魔力と化合することで、窒息状態を生み出し、やがては呼吸困難と細胞の死滅によって息絶えてしまう。

 対処としてはデトロメキシアンを含んだ空気を吸わないこと、これに尽きる。
 とは言えその恐ろしいさまは、気化性の毒のため視認出来ないことだ。
 一度散布されれば最後、音も無く静かに息の根を止める。
 まさしく魔術薬学を悪用した、危険極まりない薬品だ。

「サティウス先輩も、非常に危険な薬品のため、最初は研究を断ろうとしていたそうですが、万が一に備え、仕方がなくなし崩し的に引き受けたみたいですね」
「本当は国の機関が責任を持って調査するのが適切ですが、デトロメキシアンですか」
「はい。国の機関が襲撃されれば真っ先に狙われるでしょうね。あくまでも秘密裏に検証することが目的だったせいか、アカデミック総合魔術大学にて保管・研究がされていたらしいです」

 かなり難しい話になって来た。
 点と点が繋がり、一本の太い線が繋がる。
 けれど相当ヤバい代物のせいか、捜査の手が伸びない。
 
「あの、その薬品がこの箱の中に入っているんですか?」

 恐る恐る手を挙げたアダバナ。
 黒い箱は厳重で、魔術が掛けられている。
 解除された後は無いものの、中身を確認するのは怖い。

「恐らくそうでしょうね。加えてこの箱の状態を見るに、盗み出されてはいないようです」
「はい。ひとまずは安心できましたね」
「安心って……ええっ」

 アダバナは納得が行かなかった。
 シャウワの背中から下ろされたものの、黒い箱の中身が気になる。

 カモミールとシャウワは安堵している様子だが、陰の者であるアダバナは不安の種が尽きない。
 もしかすると、中身が漏れてしまっているのではないだろうか? そんな不安が絶えず残る中、資料の一つも確認出来ないので、サティウスの研究室で震えるしかなかった。




——こうして今に至る訳だが、ひとまず無事ではあった。
 サティウスを襲った犯人の目的が、仮にアダバナが両手でシッカリと持っている箱の中身、デトロメキシアンだとする。
 幸いなことに盗まれてはいないようで、ホッと胸を撫で下ろす。

「とりあえず、盗まれてはいないみたいです、よね?」
「そうですね。外見上は、ですが」

 アダバナは黒い箱を持っている。
 この中に国が押収したデトロメキシアンが入っている。
 一体どんな毒性の薬品なのか、テーブルに置きたい気持ちに駆られた。

「あの、置いてもいいですか?」
「下手に衝撃を与えないでください!」
「は、はい!?」

 シャウワが声を荒くした。驚いたアダバナはつい箱を落としてしまいそうになる。
 指の隙間から角が外れると、斜めにしたおかげで落さずに済んだ。

「アダバナさん、デトロメキシアンは危険な毒性の物質ですよ。衝撃を与えるだけで気化してしまいます」
「そ、そんなッ!?」
「正確には空気に触れる。即ち酸化した場合ですが……衝撃を与えて、中に入っている容器が傷付いても困りますからね。慎重に取り扱いましょうか」
「は、はい……」

 それなら尚のこと、カモミールかシャウワが持つべきだった。
 アダバナは注意されてしまうと、背中が丸くなった。
 責任重大で、手汗が出やすい体質ではないものの、滑って落としてしまいそうな程、汗が出ていた。
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