生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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10話 何があったって話①

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 ふぅーふぅー。ごくごくごくーー

「美味しい」
「よかった。ココアを少し混ぜておいてよかったよ」

 エルフの少女は受け取ったティーカップの中に入った薬を飲み干した。
 かなり熱かったのか、飲むまでには時間がかかっていた。

 ココアを混ぜておいたのはかなり正解。
 これは経験談で、マジで苦い。
 だから飲みやすく改良していた。
 僕はそのままでも飲めるよう、訓練したけどね。

「少しは落ち着いた?」
「はい。ありがとうございます。こんなにしてもらって」
「いいよ。それより、さっきの話だけど、何があったの?」

 僕は十分ぐらい時間を置いてから話を引き戻した。
 どうせここに辿り着く。
 だったら早い方がいい。この子はそうしたがっている。

「鞘を、取られてしまって」
「それはうわ言で聞いたよ。でもどうして鞘だけ? 剣はここにあるのに」
「あるんですか!?」
「う、うん。ずっと握ってたから、今そこにかけてあるよ?」

 僕は壁を指差す。
 そこには少女が握っていた剣が立てかけられ、鞘がないので切っ先が床に付いていた。

「け、剣がある……」
「大事そうに持ってたからね。手のひら、青くなってるでしょ」

 僕に言われて自分の手のひらを見た。
 すると青紫色に変色していて、びっくりしたのか、目を丸くする。

「本当だ。気づかなかった……」
「よっぽど強く握ってたから、鞘は落ちちゃったけど、剣だけは落とさなかったんだよ」
「よかった。よかった……」

 少女は剣を抱えて涙を流す。
 そんなに思い入れがあるなんて、よっぽど大切なものだ。
 例えば、

「家族の形見?」
「は、はい。ですが少し違います。これは、私が故郷の森を出る際に、父からもらった由緒あるものなんです。ですからこれだけは絶対無くさないって決めてたのに……のに……」

 少女の目から滝のように涙が流れ出す。
 もしかして、押しちゃいけないスイッチを押した?
 僕はあたふたし出すも、少女は口々に言葉を吐く。

「絶対に、絶対に助けないと。全部、全部取り返す……」
「全部? 一体何を取られたの」

 僕はここまで来たら気になって仕方なかった。
 あまり他人の心に踏み込むのは良くない。
 だけど流石に我慢できなかった。もしも力になれるなら、僕は手伝いたい。
 最初もそのために行動を起こそうとしていた。

「それは……」
「言いたくないこと? 僕じゃ力になれない?」
「……貴方を巻き込みたくない。こんな小ちゃな子にまで……もう、見たくない」
「ちっちゃ!? それはちょっと酷いな。僕、これでも今年で十七だよ」
「私は二百十六歳です」
「二百!?」

 目を丸くする。
 確かにエルフは千年や二千年は当たり前のように生きると聞くけど、そんなに差があるなんて。
 じゃあ仕方ないか。エルフ的には。
 でもさ、

「僕だって、こう見えてCランクの冒険者だよ。舐めないでほしいな」
「冒険者。貴方が?」
「馬鹿にしないでよ。だから言って。急いでるんでしょ」

 少女は焦っていた。どうやら、隠そうとしているらしい。
 しかしそんなのバレバレだ。
 普通の人は気づかなくても、僕にはわかる。

 耳の先っちょが小刻みに揺れ、指先が冷たそう。
 これはかなりのストレスを抱えている。
 僕は速やかに暴くと、少女の手を握った。

「大丈夫、僕を信じて」

 そう伝えると、励ましが効いたのか、少しだけ口を開いてくれた。
 それから何があったのか、断片的に話し出すのだった。

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