異世界で最強になった俺が偽魔王になってみた。~魔王キャラVTuberの俺が配信していたら、異世界転移してしまい、マジの魔王扱いされたんだが?

水定ゆう

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共闘したら強すぎた

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 俺と謎のウサ耳を生やした獣人、ラパンは互いに共闘した。
 迫り来る人達を掻い潜り、何とか鎮圧しようと試みる。

α星の煌炎アルファ・バースト!」

 俺は右手に魔法を込めた。
 鋭い拳を突き出すと、屈強な男性の体が後ろに吹き飛ぶ。

「ぐへっ!」

 壁に思いっきり叩きつけられると、くの字に曲がった。動かなくなると、次は背後に女性が立っている。

「スーレット様~」
「この、しつこいぞ!」

 俺はα星の煌炎の余波で女性をはたく。
 顔に焼け痕が残らないように配慮しつつ、地面に押し倒すと、ラパンの動きを見た。

「はっ、はぁぁぁぁぁ!」

 ラパンは恵まれた体格を活かした格闘術で応戦していた。
 動きにくい筈の制服をものともせず、裏拳を決め、後ろ周り蹴りで蹴り付ける。
 圧倒的な力の前に、成す術なく倒されていた。

(怖っ、マジで怖っ。ユキムラ達よりよっぽど怖いだろ)

 真面目に全身が凍りつきそうだった。
 圧倒的な実力はユキムラ達以上で、もはや勇者のそれだ。
 
 正直、俺じゃなくてこの女性がベルフォーを倒せば良かったのでは? そう思いたくなるレベルだ。
 ぶっちゃけると、勇者とか要らなくね? と口に出したいくらい強く、俺は視線を奪われる。

「私のことばかり見ないで、もっと周りを見て欲しいわね」
「えっ、ああそうだな」

 いけないいけない、別に見惚れていた訳じゃないけど、普通に怒られてしまう。
 俺は火の手が上がるなか、真っ赤な瞳をした人達に囲まれそうになる。

(一体いつまで続くんだよ!)

 助っ人が参戦してくれたから多少楽にはなった。
 でも多少が多少過ぎる。数の暴力の恐ろしさに駆られた。

「このままじゃキリが無いぞ」
「そうだね。でも、数は減っているよ」
「減ってるのか? 正直、次から次に倒れては起き上がって……えっ?」

 そこで俺は気が付いてしまった。
 せっかく気絶させた街の人達が起き上がり、再び俺達に牙を剥く。
 真っ赤な瞳をチラつかせると、「スーレット様~」と遠吠えする。

「そうか。気絶させて起きる奴等と、起きない奴等の差がある筈だ」
「そうだね。しかも答えはそこにある」
「答えだと……あっ!」

 俺は倒れている人達を見た。
 仰向けとうつ伏せで倒れている人に分かれていて、仰向けで倒れている人達は起き上がっていない。逆に言えばうつ伏せで倒れている人達は起き上がっている。
 一体どんな差があるのかは分からない。だがしかし、それが事実なら話が早い。

「答えが分かれば簡単だ。ここで終わらせる!」
「その必要は無いよ」
「えっ?」

 ラパンが呟くと、火柱の向こうから二人分の人影が飛び出す。
 街行く人達の背後を取ると、顔を掴んで押し倒す。
 あまりにも素早い動きに俺は目を奪われてしまった。

「「とっとと止まるワン」ニャー!」

 二人の女性が現れると、やっぱり獣人だった。
 一人は頭からイヌ耳を生やしていて、もう一人はネコ耳を生やしている。
 爪を研ぎ、赤い目をした人達を、次から次へと薙ぎ払っていく姿はまさに爽快。
 ここまでの展開は一体何だったのか。あっという間に顔を地面に叩き付けると、意識を奪い取ってしまった。

「マジかよ」
「リシュワン、アーニャ。お疲れだね」
「「お疲れじゃないワン」ニャ!」

 如何やらラパンの知り合いらしい。同じ制服を着ているので分かりやすい。
 けれどリシュワンとアーニャの二人は、ラパンと険悪な態度を取った。
 なにがあるのかは知らないが、恐らくラパンがサボっていたのだろう。
 二人はたくさんの汗を掻くと、制服がビショビショに濡れていた。

「ううっ、気持ち悪いワン」
「予備は洗濯中だから、これしかないニャーのに」
「それは残念だね。良かったら私の予備を貸すけど?」
「「サイズが合わないワン!」ニャ!」

 リシュワンとアーニャはラパンの提案を速攻で否定した。
 もちろんサイズが合わないのは明白で、俺は白い目を向ける。
 するとラパンの視線が俺に移動し、同時にリシュワンとアーニャも俺を気掛かりに思う。

「ところでその変な格好の人はなんだニャ?」
「アーニャ、見た目で判断すると、またマスターに怒られるワン」
「でも変な格好ニャ」
「そうだけど……あっ」

 リシュワンとアーニャは散々ね言い分だった。
 もちろん俺は寛容な上に、この格好で“変な奴”じゃない訳が無い。
 重々承知の上で飲み込むと、ラパンは俺の顔をジッと見た。

「その格好に名前、やはり貴女が」
「なんだよ?」
「いや、少し歯を食いしばってね」
「えっ!?」

 ラパンの物騒な言葉に俺は警戒と動揺が隠せない。
 けれど距離を取ろうとした瞬間、ラパンの拳が炸裂。
 俺に向かって放たれると、目を瞑り死を覚悟した。それほどまでに威圧的で、俺は拳圧にビビりまくった。
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