異世界で最強になった俺が偽魔王になってみた。~魔王キャラVTuberの俺が配信していたら、異世界転移してしまい、マジの魔王扱いされたんだが?

水定ゆう

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第18話 全ては映している

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「スーレット君、本当に気味は変ってしまったのかい!?」
「変わる? それは不自然な言葉だね。私はなにも変わっていない。変わったのは、お前達だ」
「くっ、やはり私ではスーレット君を止めることはできなかった」

 ミュシェルの父親は苦汁を舐める。
 涙ぐんでしまい、顔が下を向いている。
 もはやスーレットの思いのまま。人質もあり、迂闊に動けない。
 そんなどうしようもない事実だけが目の前に広がるも、俺は気にせず作戦を始めた。

「それじゃあミュシェル」
「はい、広範囲に発動します。主よ、我が祈りを捧げ、我らを守護する壁を贈らん—聖壁バリア!」

 ミュシェルは俺の合図に合わせ魔法を発動した。
 しかも今回は街全体を対象にした広範囲発動だ。

 ポワ~ン!

 時計塔の一室が眩しい光に包まれる。
 その光は夜の闇を切り裂き、街全体に広がる。
 巨大な壁を生み出すと、火柱を塞き止め、街行く人達を守る。

「ん? なにをしている」
「なにって、お前の秘策を潰すんだよ」
「なんだと? 余計な真似をするな。こっちには人質がいるんだぞ」
「それならもう無い。お前の本性は失望に変わる」

 俺はスーレットをとにかく煽る。
 スーレット自身は、そんな煽りに乗っては来ない。
 眉根を寄せることさえせず、溜息交じりだった。

「はぁ。無駄だと言っているだろう」
「どうかな? あー、突然のゲリラ配信だな。みんな観ているか?」
「ん? なんだ突然」

 俺はバイザー越しに一人実況を始めた。
 とりあえず俺の視界にはコメントが映っている。
 言わずもがな、全く知らない人ばかりだ。正直もはや人なのかさえ怪しいが、そんなことは如何だっていい。

「俺は今エスメールって言う街にいる。この配信は、エスメール限定で配信しているんだが、全員俺の視界は映っているな?」
「なにを言っている」
「カガヤキさん?」

 スーレットもミュシェルも何が起きているのかさっぱりだった。
 しかし俺は気にせずに一人回しを続ける。
 ふとミュシェルの方を見ると、ニコリと不気味に微笑んで見せた。

「全員知っているな。俺の隣にいるのは有名人のミュシェルだ」
「ゆ、有名人ってなんのことですか!?」
「ミュシェル、なんか喋れ」
「しゃ、喋るってどういうことですか? えっと、その、ミュシェルです。なんだかよく分からないですけど、よろしくお願いします」

 ミュシェルは訳も分からないが、とりあえず流れを汲み取る。
 ペコリと丁寧なお辞儀をして挨拶をした。
 きっとビジュアル的にも人気が出るだろうなと思ったが、配信の視聴率もかなり良い。

(マジで伸びてるな……視聴数が二百人から五百人に増えたぞ?)

 正直視聴人数が増えるのはマジでありがたい。この作戦のミソなのだ。
 それならもっと人気が出そうなゲストに出て貰おう。
 俺はバイザーをスーレットに向けると、カメラがグルンとズームする。完全自動でスーレットのお粗末な様を映し出す。

「この街の人はみんな知っているな。スーレットだ」
「なんだ、お前。なにをしている!」
「物騒な言葉遣いだよな。スーレット、今回ってるぞ?」
「回るだと。この私を前にしてついにおかしくなったか。やはりお前もこの街の人間達も、本性はバカではないか。全ては私に尽くすための贄以下。そんなお前に私の主人が殺されたなど、忌々しくて仕方が無い」

 スーレットは完全に不満をぶちまけた。
 けれど俺にとっては超好都合。
 欲しかった言葉のほとんどを吐き出してくれると、ニヤッと笑みを浮かべた。

「なんだ、気持ちが悪い」
「いいや、全て映しているから」
「なんのことだ? 馬鹿馬鹿しい、これだから人間は」

 完全に人間に対して見下す姿勢を見せる。
 本性が見え隠れする所か、完全に隠す気が無い。
 どうやら俺達にだけ見せる姿だと思っているのか、流石に呆れてしまう。

「カガヤキさん、これでよかったんですか?」
「ああ、充分だ」
「な、なんだかカガヤキさんの顔が怖いですよ」

 正直俺がどんな顔になっているのか、想像は容易に付く。
 まさに魔王っぽい感じだ。
 俺はミュシェルと共に作戦遂行に一歩近付き、ニヤニヤしてしまった。
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