58 / 68
第18話 全ては映している
しおりを挟む
「スーレット君、本当に気味は変ってしまったのかい!?」
「変わる? それは不自然な言葉だね。私はなにも変わっていない。変わったのは、お前達だ」
「くっ、やはり私ではスーレット君を止めることはできなかった」
ミュシェルの父親は苦汁を舐める。
涙ぐんでしまい、顔が下を向いている。
もはやスーレットの思いのまま。人質もあり、迂闊に動けない。
そんなどうしようもない事実だけが目の前に広がるも、俺は気にせず作戦を始めた。
「それじゃあミュシェル」
「はい、広範囲に発動します。主よ、我が祈りを捧げ、我らを守護する壁を贈らん—聖壁!」
ミュシェルは俺の合図に合わせ魔法を発動した。
しかも今回は街全体を対象にした広範囲発動だ。
ポワ~ン!
時計塔の一室が眩しい光に包まれる。
その光は夜の闇を切り裂き、街全体に広がる。
巨大な壁を生み出すと、火柱を塞き止め、街行く人達を守る。
「ん? なにをしている」
「なにって、お前の秘策を潰すんだよ」
「なんだと? 余計な真似をするな。こっちには人質がいるんだぞ」
「それならもう無い。お前の本性は失望に変わる」
俺はスーレットをとにかく煽る。
スーレット自身は、そんな煽りに乗っては来ない。
眉根を寄せることさえせず、溜息交じりだった。
「はぁ。無駄だと言っているだろう」
「どうかな? あー、突然のゲリラ配信だな。みんな観ているか?」
「ん? なんだ突然」
俺はバイザー越しに一人実況を始めた。
とりあえず俺の視界にはコメントが映っている。
言わずもがな、全く知らない人ばかりだ。正直もはや人なのかさえ怪しいが、そんなことは如何だっていい。
「俺は今エスメールって言う街にいる。この配信は、エスメール限定で配信しているんだが、全員俺の視界は映っているな?」
「なにを言っている」
「カガヤキさん?」
スーレットもミュシェルも何が起きているのかさっぱりだった。
しかし俺は気にせずに一人回しを続ける。
ふとミュシェルの方を見ると、ニコリと不気味に微笑んで見せた。
「全員知っているな。俺の隣にいるのは有名人のミュシェルだ」
「ゆ、有名人ってなんのことですか!?」
「ミュシェル、なんか喋れ」
「しゃ、喋るってどういうことですか? えっと、その、ミュシェルです。なんだかよく分からないですけど、よろしくお願いします」
ミュシェルは訳も分からないが、とりあえず流れを汲み取る。
ペコリと丁寧なお辞儀をして挨拶をした。
きっとビジュアル的にも人気が出るだろうなと思ったが、配信の視聴率もかなり良い。
(マジで伸びてるな……視聴数が二百人から五百人に増えたぞ?)
正直視聴人数が増えるのはマジでありがたい。この作戦のミソなのだ。
それならもっと人気が出そうなゲストに出て貰おう。
俺はバイザーをスーレットに向けると、カメラがグルンとズームする。完全自動でスーレットのお粗末な様を映し出す。
「この街の人はみんな知っているな。スーレットだ」
「なんだ、お前。なにをしている!」
「物騒な言葉遣いだよな。スーレット、今回ってるぞ?」
「回るだと。この私を前にしてついにおかしくなったか。やはりお前もこの街の人間達も、本性はバカではないか。全ては私に尽くすための贄以下。そんなお前に私の主人が殺されたなど、忌々しくて仕方が無い」
スーレットは完全に不満をぶちまけた。
けれど俺にとっては超好都合。
欲しかった言葉のほとんどを吐き出してくれると、ニヤッと笑みを浮かべた。
「なんだ、気持ちが悪い」
「いいや、全て映しているから」
「なんのことだ? 馬鹿馬鹿しい、これだから人間は」
完全に人間に対して見下す姿勢を見せる。
本性が見え隠れする所か、完全に隠す気が無い。
どうやら俺達にだけ見せる姿だと思っているのか、流石に呆れてしまう。
「カガヤキさん、これでよかったんですか?」
「ああ、充分だ」
「な、なんだかカガヤキさんの顔が怖いですよ」
正直俺がどんな顔になっているのか、想像は容易に付く。
まさに魔王っぽい感じだ。
俺はミュシェルと共に作戦遂行に一歩近付き、ニヤニヤしてしまった。
「変わる? それは不自然な言葉だね。私はなにも変わっていない。変わったのは、お前達だ」
「くっ、やはり私ではスーレット君を止めることはできなかった」
ミュシェルの父親は苦汁を舐める。
涙ぐんでしまい、顔が下を向いている。
もはやスーレットの思いのまま。人質もあり、迂闊に動けない。
そんなどうしようもない事実だけが目の前に広がるも、俺は気にせず作戦を始めた。
「それじゃあミュシェル」
「はい、広範囲に発動します。主よ、我が祈りを捧げ、我らを守護する壁を贈らん—聖壁!」
ミュシェルは俺の合図に合わせ魔法を発動した。
しかも今回は街全体を対象にした広範囲発動だ。
ポワ~ン!
時計塔の一室が眩しい光に包まれる。
その光は夜の闇を切り裂き、街全体に広がる。
巨大な壁を生み出すと、火柱を塞き止め、街行く人達を守る。
「ん? なにをしている」
「なにって、お前の秘策を潰すんだよ」
「なんだと? 余計な真似をするな。こっちには人質がいるんだぞ」
「それならもう無い。お前の本性は失望に変わる」
俺はスーレットをとにかく煽る。
スーレット自身は、そんな煽りに乗っては来ない。
眉根を寄せることさえせず、溜息交じりだった。
「はぁ。無駄だと言っているだろう」
「どうかな? あー、突然のゲリラ配信だな。みんな観ているか?」
「ん? なんだ突然」
俺はバイザー越しに一人実況を始めた。
とりあえず俺の視界にはコメントが映っている。
言わずもがな、全く知らない人ばかりだ。正直もはや人なのかさえ怪しいが、そんなことは如何だっていい。
「俺は今エスメールって言う街にいる。この配信は、エスメール限定で配信しているんだが、全員俺の視界は映っているな?」
「なにを言っている」
「カガヤキさん?」
スーレットもミュシェルも何が起きているのかさっぱりだった。
しかし俺は気にせずに一人回しを続ける。
ふとミュシェルの方を見ると、ニコリと不気味に微笑んで見せた。
「全員知っているな。俺の隣にいるのは有名人のミュシェルだ」
「ゆ、有名人ってなんのことですか!?」
「ミュシェル、なんか喋れ」
「しゃ、喋るってどういうことですか? えっと、その、ミュシェルです。なんだかよく分からないですけど、よろしくお願いします」
ミュシェルは訳も分からないが、とりあえず流れを汲み取る。
ペコリと丁寧なお辞儀をして挨拶をした。
きっとビジュアル的にも人気が出るだろうなと思ったが、配信の視聴率もかなり良い。
(マジで伸びてるな……視聴数が二百人から五百人に増えたぞ?)
正直視聴人数が増えるのはマジでありがたい。この作戦のミソなのだ。
それならもっと人気が出そうなゲストに出て貰おう。
俺はバイザーをスーレットに向けると、カメラがグルンとズームする。完全自動でスーレットのお粗末な様を映し出す。
「この街の人はみんな知っているな。スーレットだ」
「なんだ、お前。なにをしている!」
「物騒な言葉遣いだよな。スーレット、今回ってるぞ?」
「回るだと。この私を前にしてついにおかしくなったか。やはりお前もこの街の人間達も、本性はバカではないか。全ては私に尽くすための贄以下。そんなお前に私の主人が殺されたなど、忌々しくて仕方が無い」
スーレットは完全に不満をぶちまけた。
けれど俺にとっては超好都合。
欲しかった言葉のほとんどを吐き出してくれると、ニヤッと笑みを浮かべた。
「なんだ、気持ちが悪い」
「いいや、全て映しているから」
「なんのことだ? 馬鹿馬鹿しい、これだから人間は」
完全に人間に対して見下す姿勢を見せる。
本性が見え隠れする所か、完全に隠す気が無い。
どうやら俺達にだけ見せる姿だと思っているのか、流石に呆れてしまう。
「カガヤキさん、これでよかったんですか?」
「ああ、充分だ」
「な、なんだかカガヤキさんの顔が怖いですよ」
正直俺がどんな顔になっているのか、想像は容易に付く。
まさに魔王っぽい感じだ。
俺はミュシェルと共に作戦遂行に一歩近付き、ニヤニヤしてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました
月神世一
ファンタジー
「命を捨てて勝つな。生きて勝て」
50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する!
海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。
再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は――
「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」
途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。
子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。
規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。
「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」
坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。
呼び出すのは、自衛隊の補給物資。
高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。
魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。
これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる