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4章
第33話 雛鳥との出会い
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ここからプエルクまではかなり距離がある。
ハイキング気分で歩いていたら何日もかかる。
隣街とは言え真反対の町の方がまだ近いので、俺はフルードを出るとすぐさま武器庫の空間を開き、笛を取り出す。白い鳥の羽のような形をした硬い笛だった。
「久しぶりに呼んでみるか。来てくれるなら嬉しいな」
俺は笛を高らかに吹いた。
するとキュィーン! と空気が掠れたような音が鳴り、人間の俺には聞こえない音を響かせる。人間の俺にはな。
「さて、アイツは来てくれるだろうか……」
俺は少し目を瞑り、過去のことを思い出す。
今から呼ぶのは俺の翼で脚である。
*
あれは俺がリオン達と出会う前の話だ。
それこそ俺が冒険者なって、今から1年くらい前の話になる。
俺は山を登っていた。晩飯の材料を探すため、キノコやら山菜やらを大量に籠に詰めていた。足取りは軽く、初めのころに比べれば三半規管も随分と鍛えられていた。肺もかなり大きくなっている。
「とは言え、結構疲れるな」
この山は昔から人の出入りが極端に少ない。そもそも立ち入らないようにしていた。
それは奇妙な噂が蔓延しており、『万物を食らう怪鳥が出る』と言われてきたからだ。
いつからそんな噂が出たかはわからない。
けれど噂の発端となったのには、山の麓に不法投棄されていた豚の骨や苔むした石。さらには銅の剣が一夜にして消えてしまった。最初は盗賊が盗み出したのではと思い立ったが、黒い鳥の羽が落ちていたことでこの噂ができたらしい。
「そんな噂が本当にあるのかは知らないが、俺は関係なく入るぞ」
この山にはたくさんの珍しい食材が生えている。
そんな真相もわからない噂を信じる前に、旨いものを食う。それが俺の生き方だ。
「このキノコの傘はかなり大きいな。って、こっちの野イチゴはジャムにすると旨いんだよな」
俺は楽しく採取していた。
気が付けば空は暗くなっており、俺は早く麓の宿に戻ろうと足早になる。
けれど空から何かが振ってきた。
「何だ、これ?」
俺は落ちてきたものを反射的に警戒し、足下が悪い山の中でも一歩身を引いた。
すると黒いカラスの羽のようなものが落ちてきた。
羽の大きさがかなり大きく、どうやらモンスターの類らしい。
「ヤバいな。俺を標的にしているのか……」
腰に携えた剣をいつでも抜けるように手を掛ける。
けれど襲われているようなニオイはしない。
もしかすると何かの間違いではないか。警戒を解いてみると、遠くの方から掠れた鳴き声が聞こえてきた。
キュピー! キュピー!
「はっ?」
俺は今にも途切れてしまいそうな掠れた鳴き声に助けを求められた気がした。
気のせいかもしれないと思い、気にせず下山しようとする者の俺は鳴き声が気になって駆け出していた。
「何なんだよ。今の声……」
俺は鳴き声のする方に草木をかき分けで進んだ。
すると黒い犬の集団が何かを取り囲んでいる。そこには白い鳥の雛がいた。
どうやら親鳥を呼んでいたらしい。
「おい、待てっ!」
俺は剣を抜き、犬のモンスターを切りつける。
見たことないが、どうやら敵らしい。俺の姿を見ると、構わず牙を剥いて噛みつきに来た。
「俺とやる気か。じゃあ倒したいいんだな」
俺は襲って来る犬たちを次々と切り付けて魔石変えていった。
一回だけ腕に噛み付かれたが毒などはないらしいので、すぐに止血する。
「この野郎!」
俺は剣を叩きつけると、犬のモンスターを倒すことに成功した。
他に集団で襲ってこないかどうか注意深く剣を構えるが、何もないので剣を仕舞った。
その様子を見ていた雛は俺の姿に何を思ったのか、キュピー! と鳴いた。背後を振り返ると、小さな鳥の雛は羽をパタパタして可愛らしかった。
ハイキング気分で歩いていたら何日もかかる。
隣街とは言え真反対の町の方がまだ近いので、俺はフルードを出るとすぐさま武器庫の空間を開き、笛を取り出す。白い鳥の羽のような形をした硬い笛だった。
「久しぶりに呼んでみるか。来てくれるなら嬉しいな」
俺は笛を高らかに吹いた。
するとキュィーン! と空気が掠れたような音が鳴り、人間の俺には聞こえない音を響かせる。人間の俺にはな。
「さて、アイツは来てくれるだろうか……」
俺は少し目を瞑り、過去のことを思い出す。
今から呼ぶのは俺の翼で脚である。
*
あれは俺がリオン達と出会う前の話だ。
それこそ俺が冒険者なって、今から1年くらい前の話になる。
俺は山を登っていた。晩飯の材料を探すため、キノコやら山菜やらを大量に籠に詰めていた。足取りは軽く、初めのころに比べれば三半規管も随分と鍛えられていた。肺もかなり大きくなっている。
「とは言え、結構疲れるな」
この山は昔から人の出入りが極端に少ない。そもそも立ち入らないようにしていた。
それは奇妙な噂が蔓延しており、『万物を食らう怪鳥が出る』と言われてきたからだ。
いつからそんな噂が出たかはわからない。
けれど噂の発端となったのには、山の麓に不法投棄されていた豚の骨や苔むした石。さらには銅の剣が一夜にして消えてしまった。最初は盗賊が盗み出したのではと思い立ったが、黒い鳥の羽が落ちていたことでこの噂ができたらしい。
「そんな噂が本当にあるのかは知らないが、俺は関係なく入るぞ」
この山にはたくさんの珍しい食材が生えている。
そんな真相もわからない噂を信じる前に、旨いものを食う。それが俺の生き方だ。
「このキノコの傘はかなり大きいな。って、こっちの野イチゴはジャムにすると旨いんだよな」
俺は楽しく採取していた。
気が付けば空は暗くなっており、俺は早く麓の宿に戻ろうと足早になる。
けれど空から何かが振ってきた。
「何だ、これ?」
俺は落ちてきたものを反射的に警戒し、足下が悪い山の中でも一歩身を引いた。
すると黒いカラスの羽のようなものが落ちてきた。
羽の大きさがかなり大きく、どうやらモンスターの類らしい。
「ヤバいな。俺を標的にしているのか……」
腰に携えた剣をいつでも抜けるように手を掛ける。
けれど襲われているようなニオイはしない。
もしかすると何かの間違いではないか。警戒を解いてみると、遠くの方から掠れた鳴き声が聞こえてきた。
キュピー! キュピー!
「はっ?」
俺は今にも途切れてしまいそうな掠れた鳴き声に助けを求められた気がした。
気のせいかもしれないと思い、気にせず下山しようとする者の俺は鳴き声が気になって駆け出していた。
「何なんだよ。今の声……」
俺は鳴き声のする方に草木をかき分けで進んだ。
すると黒い犬の集団が何かを取り囲んでいる。そこには白い鳥の雛がいた。
どうやら親鳥を呼んでいたらしい。
「おい、待てっ!」
俺は剣を抜き、犬のモンスターを切りつける。
見たことないが、どうやら敵らしい。俺の姿を見ると、構わず牙を剥いて噛みつきに来た。
「俺とやる気か。じゃあ倒したいいんだな」
俺は襲って来る犬たちを次々と切り付けて魔石変えていった。
一回だけ腕に噛み付かれたが毒などはないらしいので、すぐに止血する。
「この野郎!」
俺は剣を叩きつけると、犬のモンスターを倒すことに成功した。
他に集団で襲ってこないかどうか注意深く剣を構えるが、何もないので剣を仕舞った。
その様子を見ていた雛は俺の姿に何を思ったのか、キュピー! と鳴いた。背後を振り返ると、小さな鳥の雛は羽をパタパタして可愛らしかった。
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