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5章
第45話 太陽の兆し—マジック&ブレッド—
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俺は粗削りだが謎の看板が立っていた。
木でできた手作り感満載な看板には、『太陽の兆し—マジック&ブレッド—』と書かれている。
誰が彫ったのか、かなり粗削りだった。多分慣れていない手つきだろう。
「何だこの雑な看板は。手作り感満載だが」
「そうだよね。手作りだもん」
「下手くそだな。味はあるが、誰が作ったんだ?」
「……はい」
エクレアは正直に白状した。
普通に下手くそだと言われて落ち込んでしまう。
俺は悪いことをしたと思い深く頭を下げる。
「すまない。知らなかったんだ」
「ふん! 私だって苦手なことはあるよ」
「悪い。だがこれぐらいなら……」
俺は武器庫の空間から彫刻刀の入ったケースを取り出した。
木の看板を一度地面から外し、軽く彫を深くして字画を整える。
「こんなものだろう」
「凄い、あっという間に直しちゃった」
「慣れればできる。それでこの看板とこの建物は何だ。どうせ関係しているんだろ」
俺はエクレアに訝しい目を向けた。
すると待ってましたとばかりに溌剌とした笑みを浮かべる。
どうやら俺は変なスイッチを押してしまったらしい。完全に地雷原だ。
「うんうん、待ってました!」
「待ってましたじゃない。それでこの建物は何だ。それにこの看板は意味がわからない」
「噛み合ってるとは思うけど?」
「だろうな。だが何のためにあるんだ。詳しく説明しろ」
「もちろん説明するよ。えーっと、何処から説明したらいいかな?」
エクレアはあざとく頬に人差し指を押し当てた。
正直俺は全然ときめかない。むしろ無駄な時間を過ごしている気分だった。
この隙に逃げ出してしまおうか。約束を破ることにはなるが、俺の“面白い”から遠く離れている。
「ちょっと逃げようとしないでよ。もう逃がさないからね!」
「うわぁ、お前どんな動きだ。モンスターか!」
「モンスターじゃないよ。可愛い冒険者だよ?」
「そこで疑問符を付けるな。それで、話はまとまったか?」
「うん。えーっとね」
「まとまってないじゃないか」
俺はしばらくエクレアが言葉を紡ぐのを待った。
すると間もなくエクレアは口を開き、俺に説明した。
「私お店を出すことにしたんだ」
一言だった。一言で簡潔にまとまっていたが突飛すぎる内容に、俺は首を傾げる。
「もう少し詳しく説明してくれ。流石に理解が追い付かない」
「えっとね、名前の由来は太陽がピカッと光って冒険者や町の人たちを照らすって意味だよ。それでね……」
「名前じゃなくて店の概要だ。話の筋を読めばわかるだろ」
「もう少しオブラートに包んでよ。誰に対してもそんな言い方なのは変わらないんだけどさ」
「だったらいいだろ。それで話の続きにヒントがあるんだな」
「うん! マジックって言うのは魔道具のことで魔法アイテムを売るんだよ」
「魔法アイテム? ポーションとかか。そう言えば、この町には冒険者向けの店は少ないからな。よく詐欺まがいの輩が蔓延っている印象がある」
俺がこの町に始めて来た時、俺は包丁売りの詐欺師に出会った。
あの時からだ。この町にはあらゆるものが足りていなかった。
長閑とは言え、田舎ではない。冒険者が多く活動しているほどダンジョンも多い。
観光客が多いので経済は回っているが、冒険者はプエルクまで買い出しに行く羽目になる。
それを解決できるのなら万々歳だろう。
「ギルドには強化も貰ったし、この建物もかなり安く買えたんだ。売り上げの年間30パーセントは税金になるけど、それ以外は全部タダにしてもらったよ」
「売り上げの30パーセント。人件費やアイテムの調達はどうするんだ?」
「そこも考えているよ。冒険者ギルドが援助してくれるみたいだし、この町の人たちにも手伝って貰うんだ。私もパンを売るし、何ならポーションは作れるから」
「パンを売る。なるほど、ブレットの部分はそういうことか……はっ!?」
俺は信じられないことを聞いて耳を疑った。
しかしエクレアは首を傾げる。
俺の驚きに何も応えてくれず、流石に俺の方から耳を疑った。
「どうしたの、カイ君? 間抜けな顔をしてるよ?」
「間抜けは余計だ。そんなことよりエクレア」
「な、なに!?」
俺はエクレアに顔を詰め寄った。
するといつもよりも顔が赤くなる。普段の白い肌がリンゴのように照っている。
「今お前、ポーション作れるって言ったよな」
「えっ、そうだよ。むっ、今お前って言ったね」
「そんなことはどうだっていい。とにかくポーションが作れるのか!」
「そ、そうだよ! 私、こう見えて魔法が得意だからポーションも作れるよ。だけど私の作るポーションは即効性が強い代わりにすぐに蒸発しちゃうから、その場その場で作らないといけないけどね」
「何だそれ。聞いたことないポーションだぞ」
俺は記憶を辿った。だけどそんなポーションは聞いたことがない。
魔法を使わずに体を治癒できるポーション。俺はエクレアの作るものが気になって、少しだけ興味が湧いていた。しかも高値で売れそうだ。
木でできた手作り感満載な看板には、『太陽の兆し—マジック&ブレッド—』と書かれている。
誰が彫ったのか、かなり粗削りだった。多分慣れていない手つきだろう。
「何だこの雑な看板は。手作り感満載だが」
「そうだよね。手作りだもん」
「下手くそだな。味はあるが、誰が作ったんだ?」
「……はい」
エクレアは正直に白状した。
普通に下手くそだと言われて落ち込んでしまう。
俺は悪いことをしたと思い深く頭を下げる。
「すまない。知らなかったんだ」
「ふん! 私だって苦手なことはあるよ」
「悪い。だがこれぐらいなら……」
俺は武器庫の空間から彫刻刀の入ったケースを取り出した。
木の看板を一度地面から外し、軽く彫を深くして字画を整える。
「こんなものだろう」
「凄い、あっという間に直しちゃった」
「慣れればできる。それでこの看板とこの建物は何だ。どうせ関係しているんだろ」
俺はエクレアに訝しい目を向けた。
すると待ってましたとばかりに溌剌とした笑みを浮かべる。
どうやら俺は変なスイッチを押してしまったらしい。完全に地雷原だ。
「うんうん、待ってました!」
「待ってましたじゃない。それでこの建物は何だ。それにこの看板は意味がわからない」
「噛み合ってるとは思うけど?」
「だろうな。だが何のためにあるんだ。詳しく説明しろ」
「もちろん説明するよ。えーっと、何処から説明したらいいかな?」
エクレアはあざとく頬に人差し指を押し当てた。
正直俺は全然ときめかない。むしろ無駄な時間を過ごしている気分だった。
この隙に逃げ出してしまおうか。約束を破ることにはなるが、俺の“面白い”から遠く離れている。
「ちょっと逃げようとしないでよ。もう逃がさないからね!」
「うわぁ、お前どんな動きだ。モンスターか!」
「モンスターじゃないよ。可愛い冒険者だよ?」
「そこで疑問符を付けるな。それで、話はまとまったか?」
「うん。えーっとね」
「まとまってないじゃないか」
俺はしばらくエクレアが言葉を紡ぐのを待った。
すると間もなくエクレアは口を開き、俺に説明した。
「私お店を出すことにしたんだ」
一言だった。一言で簡潔にまとまっていたが突飛すぎる内容に、俺は首を傾げる。
「もう少し詳しく説明してくれ。流石に理解が追い付かない」
「えっとね、名前の由来は太陽がピカッと光って冒険者や町の人たちを照らすって意味だよ。それでね……」
「名前じゃなくて店の概要だ。話の筋を読めばわかるだろ」
「もう少しオブラートに包んでよ。誰に対してもそんな言い方なのは変わらないんだけどさ」
「だったらいいだろ。それで話の続きにヒントがあるんだな」
「うん! マジックって言うのは魔道具のことで魔法アイテムを売るんだよ」
「魔法アイテム? ポーションとかか。そう言えば、この町には冒険者向けの店は少ないからな。よく詐欺まがいの輩が蔓延っている印象がある」
俺がこの町に始めて来た時、俺は包丁売りの詐欺師に出会った。
あの時からだ。この町にはあらゆるものが足りていなかった。
長閑とは言え、田舎ではない。冒険者が多く活動しているほどダンジョンも多い。
観光客が多いので経済は回っているが、冒険者はプエルクまで買い出しに行く羽目になる。
それを解決できるのなら万々歳だろう。
「ギルドには強化も貰ったし、この建物もかなり安く買えたんだ。売り上げの年間30パーセントは税金になるけど、それ以外は全部タダにしてもらったよ」
「売り上げの30パーセント。人件費やアイテムの調達はどうするんだ?」
「そこも考えているよ。冒険者ギルドが援助してくれるみたいだし、この町の人たちにも手伝って貰うんだ。私もパンを売るし、何ならポーションは作れるから」
「パンを売る。なるほど、ブレットの部分はそういうことか……はっ!?」
俺は信じられないことを聞いて耳を疑った。
しかしエクレアは首を傾げる。
俺の驚きに何も応えてくれず、流石に俺の方から耳を疑った。
「どうしたの、カイ君? 間抜けな顔をしてるよ?」
「間抜けは余計だ。そんなことよりエクレア」
「な、なに!?」
俺はエクレアに顔を詰め寄った。
するといつもよりも顔が赤くなる。普段の白い肌がリンゴのように照っている。
「今お前、ポーション作れるって言ったよな」
「えっ、そうだよ。むっ、今お前って言ったね」
「そんなことはどうだっていい。とにかくポーションが作れるのか!」
「そ、そうだよ! 私、こう見えて魔法が得意だからポーションも作れるよ。だけど私の作るポーションは即効性が強い代わりにすぐに蒸発しちゃうから、その場その場で作らないといけないけどね」
「何だそれ。聞いたことないポーションだぞ」
俺は記憶を辿った。だけどそんなポーションは聞いたことがない。
魔法を使わずに体を治癒できるポーション。俺はエクレアの作るものが気になって、少しだけ興味が湧いていた。しかも高値で売れそうだ。
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