武器屋無双〜どんな武器でも作れる【武器屋】の俺、勇者パーティーを追放されたのでやけに明るい最強ヒロインとパーティー組んで無双してしまった!?

水定ゆう

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7章

第76話 呪いを焼き払って

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 呪いには代償がある。
 それ故に強力な力が与えられるのだが、今回の場合はそうではないらしい。
 いわゆる、触れただけで発動するタイプの呪いだった。

「それでお前は何を得て、何を代償として払わされたんだ」
「私はどんなものでも撃ち抜く銃の力を得た。代わりにこの銃しか使えない。だからこの子がないとダメなの」
「つまり他の武器が使えないのか」
「他の武器を使えば、私の首が締まる。それにこの銃を定期的に撃たないと、私の腕はこうなる」

 少女が腕を魅せると、黒い靄のようなものに握り込まれていた。
 初めてがあまりに惨い。
 これは呪具の呪いなのかと、俺は喉の奥を掻きむしりたくなった。

「酷い、そんなの酷すぎるよ! 望んで手に入れたわけでもないのに」
「それが呪具だ。おそらく、この猟銃には力を与える代わりに自分を使わせるというもっとも銃にとっては理に適っている呪いをかけていたんだろうな」
「それってこの銃自体がやってたの?」
「かもしれない。だが、問題はこの猟銃を作った奴が掛けたもの、もしくは何か意図して掛けられたもの。そのどちらかが何より悍ましいだろな」

 俺は様々な考察が脳裏を充満させていく。
 しかし、俺自身が同行できるような話ではない。
 呪具の呪いは年月とその想いがものを言う。つまり、呪具の力を解くには、それ相応の根気と実力が必須と言うわけだ。

「だから私はこの銃を使わないといけない。お願い、この猟銃を直して」

 少女は潤んだ瞳で俺のことを見ていた。
 涙袋は濡れていて、俺やエクレアは顔を見合わせた。

「ねえ、カイ君。本当に直せないの?」
「無理だな。こうなった以上、取り換えないと無理だ」
「それができない理由なの?」
「事情を聴いたからにはな。だが、呪具と言うことはバラすのは危険だ。呪いが逆流して、コイツの命がない」
「そんなぁ……」

エクレアはがっかりしてしまった。
グデーンと背中を曲げると、ぶつぶつと念仏を唱える。

「悪いな。俺達にはどうすることもできない。そういうことは、教会の人間にでも頼んでくれ」
「……そうする」
「猟銃に関しては……撃てるようにできればいいんだがな。流石に呪いまでは俺の魔法では不可能だ」
「大体そう。……でも、諦めないといけないのは、私の命が……でも、それも私の宿命なら受け入れる」
「強いな、お前は」

 流石に同情するしかない。とは言え、同情して何が変わるでもない。
 これを打ち負かすには突発的な閃きと実力しかない。
 しかし今ある薬や魔法では呪いを取り除けるようなものはここにはない。

「……それじゃあ、呪いを解けばいいってこと……」

 エクレアは何か閃いたのか、急に真顔になって顔を上げる。
 すると少女の肩を掴んで、目と目を合わせてこう言った。

「ねえ、私がその呪いを解いてあげるから、信じてくれるかな?」
「えっ?」
「大丈夫。私ならできるよ」
「おい、ちょっと待てエクレア。どういう話だ!」

 俺は食い気味に突っかかった。
 エクレアのみが心配でもなければこの少女のことを気に掛けているわけでもない。
 俺が食いついたのは、突然確証もないことを口にして、励まそうと奮闘したことだ。

「そのままの通りだよ。私が呪いを解く。正確には、呪いを焼き切るって言うのかな?」
「呪いを焼き切るだと? 何を馬鹿なことを言っているんだ」
「馬鹿なことじゃないよ。私の《黄昏の陽射しサンライト・ライズ》なら、呪いだって焼き切れるんだよ!」
「お前の魔法は光で熱を生み出すものだろ!」
「その応用だよ。大丈夫だから、ねっ!」

 エクレアは笑みを浮かべた。
 それから少女の顔を見ると、頭を撫でている。
 涙袋に溜まった涙を人差し指で拭き取ると、笑顔で聞いていた。

「私のこと、まだ信じられないかもしれないけど。でもね、私のこと信じて欲しいんだ!」
「……どうして、そこまでしてくれるの?」
「どうしてって。私が助けたいって思ったからだよ。私ね、助けたい人は全力で助けるって決めているんだ! だから、私に命預けてみない?」

馬鹿げた話だ。どうしてこんなに説得力の欠片もないんだ。
 とは言え、コイツの凄いところはそこではない。
 どれだけ根底から不可能なことでも、コイツの手に掛かれば説得力がなくても何故か“できる”気がして仕方ない。そう思わせるカリスマ性が、エクレア・エーデルワイスと言う人間性を高みにまで引き上げていた。

「って、流石に無理があるかな?」
「だろうな。コイツも……」

 しかし少女は鼻水を垂らしていた。
 こんな確証もない突飛な発言にも心を動かしてしまうなんて、どれだけ優れた熱を持っているのか。俺はエクレアという人間が逆に怖くなってきた。

「だが、それがお前の持ち味でもあるのかもな」
「ちょっと急に褒めないでよ!」
「本当のことだ。だから、全力でやれ」
「わかっているよ。それじゃあ始めるね」

 俺はエクレアを鼓舞して背中を押してやった。
 恐怖心を弾き返されたのは、俺もかもしれない。
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