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◇439 雪やこんこん
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アキラたちは外に飛び出した。
武家屋敷の中からいち早く脱出しようと幻術を強行突破したのだ。
すると全身に硬い何かがぶち当たる。けれどその感覚すら一瞬で、アキラたちは別けも分からないまま、倒れ込むように転がり落ちた。
「うわぁぁぁぁぁ……ぐはぁ!」
「おっとっと……うえっ!」
「ちょっと、なんで雪が降り積もって……痛っ!」
アキラたちはそれぞれ別々に庭先に顔を埋めた。
アキラはそのままダイブするみたいに倒れ込み、フェルノは受け身を取って着地したが雪に足を取られて転ぶ。ベルも左腕を強く打ち、二の腕を痛めていた。
雪のクッションのおかげで幸い怪我はしなかったが、それでも全身で雪を被ってしまった。
「なるほど。これだけ雪が積もっていれば内も外も変わらないか」
Nightは飄々としていた。何食わぬ顔で武家屋敷から出て来ると、外の景色を見て達観する。
確かにこれだけ雪が降っていれば内に居ても外に居ても、どのみち動き難い。
むしろ雪に足が取られる方が最悪だと、アキラたちは地形面で圧倒的不利に立たされる。
「感心している場合じゃないよね。一応外には出られたけど、一体なにが起きて……えええええええええええええええっ!」
アキラは達観した上で関心すらしているNightに引いていた。
文句の一つでも言おうとしたが、それよりも大変なことになっていて発狂する。
フェルノとベルもアキラに視線を注ぐと、目の前で起っていることに目を見開いた。
「あ、アキラどうしたの? うわぁ!」
「これまたやっちゃったわね」
「そうだな。だがこれがあったせいで私たちは閉じ込められていたんだ」
アキラたちの視線の先には粉々にされた雨戸があった。
縁側に面して建てられていたはずの雨戸は、如何やらアキラたち自身の手で壊してしまったらしい。つまりこの全身に来る痛みやいくら叩いても幻術から抜け出せなかった理由。それは最も単純でアキラたちはずっと壁を叩いていたのだった。
「これは酷いわね。無茶苦茶を追求したとは言っても、流石にこれは無茶苦茶すぎるわよ!」
「そうだよ。後で直せるかな?」
「まず無理だろうな。だが、こうして無事に外には出られたんだ」
「「「無事じゃない!」」」
Nightを除き、誰一人として無時では済んでいなかった。
おまけに今まさに戦いに身を投じている雷斬のこともある。
何も解決していない。何も起っていない。とりあえず振り出しに戻しただけで、ここから雪将軍と戦わざるを得ないのだ。
「どうするのよ。Nightはなにか策があるんでしょ?」
「そんなものは用意していない」
「はっ!? 用意してないってどう言うことよ!」
「雷斬がいない以上、私たちだけで倒せると思うのか?」
「それは……」
Nightはまさかの考えることを放棄していた。
腕を組んだまま、雷斬一人に全振り。他力本願もいいところ。
アキラですら唖然としてしまい、Nightの考えを読もうとする。
けれどNightもできる手立てを悉く潰されていて、今回の季節限定イベントの恐ろしさを目の当たりにしていた。
「でもやってみるしかないよ! それに雷斬は負けたりしないでしょ!」
アキラは不穏なムードを断ち切るように声を張り上げる。
お通夜な空気は必要ない。ただでさえ寒いのが、余計に寒くなる。
心までは寒さに負けちゃダメだと思い、雷斬のことを信じているからこそはっきりと言うことができた。雷斬は決して負けたりしない。頼もしい仲間だからだ。
「ふん、そうだな」
「当り前よ。雷斬は強いのよ」
「確かにー。でもさ、あの刀で戦えているのかなー?」
「「「あー」」」
フェルノは思っていたことを呟いた。
だけど雷斬の腕を支える愛刀がほぼ初期装備。
嘆いてしまうのも無理はないが、まだ諦めるには早い。
「ちょ、ちょっと不安だね」
「不安はよせ。心配要らないだろ。雷斬は例え鈍らな刀を持たされようが、業と技術で掻い潜れる素質を持っている。それを信じるしか……」
バーーーーーーーーーーーーーーーン!
アキラたちの視線の先、Nightからすれば背後から激しい轟音が響き渡った。
その残響は冬の静寂を掻き切るには十分だった。
自然と目が引き寄せられる。すると障子を突き破り、縁側に設置された雨戸を突き破ってくの字に折れ曲がる人の姿があった。
何を隠そうそれは雷斬。一瞬の内ではあったが、雷斬は庭先の雪の中に沈んだ。
「な、なに!?」
「雷斬、ちょっとどういうことよ!」
何があったのか。一体如何してなのか。
アキラたちは訳が分からないが、雪の中に崩れる雷斬の下に参じる。
全身が痙攣している。相当ダメージを受けたのか、HPバーは赤まで達していた。
あまりにも酷い怪我だ。刀も罅が入り、再度立ち上がるには時間が掛かるだろう。
「一体なにが起きて……」
「うっ、つ、強いですよ」
ボロボロになった雷斬に回復ポーションを飲ませた。
すると唇が微かに動き、喉を使って言葉を発する。
「雷斬大丈夫なの! 動ける、喋れる?」
「ベル、それ以上はよせ。状況は察した。最悪な方向に動いているがな」
この状況を見てしまえば、何を言われても信じてしまう。
雷斬は雪将軍に返り討ちに遭い敗れた。
ただそれだけで全てを察してしまい、空から唐突に降り始めた雪がこんこんとアキラたちに不穏を撒き散らすのだった。
武家屋敷の中からいち早く脱出しようと幻術を強行突破したのだ。
すると全身に硬い何かがぶち当たる。けれどその感覚すら一瞬で、アキラたちは別けも分からないまま、倒れ込むように転がり落ちた。
「うわぁぁぁぁぁ……ぐはぁ!」
「おっとっと……うえっ!」
「ちょっと、なんで雪が降り積もって……痛っ!」
アキラたちはそれぞれ別々に庭先に顔を埋めた。
アキラはそのままダイブするみたいに倒れ込み、フェルノは受け身を取って着地したが雪に足を取られて転ぶ。ベルも左腕を強く打ち、二の腕を痛めていた。
雪のクッションのおかげで幸い怪我はしなかったが、それでも全身で雪を被ってしまった。
「なるほど。これだけ雪が積もっていれば内も外も変わらないか」
Nightは飄々としていた。何食わぬ顔で武家屋敷から出て来ると、外の景色を見て達観する。
確かにこれだけ雪が降っていれば内に居ても外に居ても、どのみち動き難い。
むしろ雪に足が取られる方が最悪だと、アキラたちは地形面で圧倒的不利に立たされる。
「感心している場合じゃないよね。一応外には出られたけど、一体なにが起きて……えええええええええええええええっ!」
アキラは達観した上で関心すらしているNightに引いていた。
文句の一つでも言おうとしたが、それよりも大変なことになっていて発狂する。
フェルノとベルもアキラに視線を注ぐと、目の前で起っていることに目を見開いた。
「あ、アキラどうしたの? うわぁ!」
「これまたやっちゃったわね」
「そうだな。だがこれがあったせいで私たちは閉じ込められていたんだ」
アキラたちの視線の先には粉々にされた雨戸があった。
縁側に面して建てられていたはずの雨戸は、如何やらアキラたち自身の手で壊してしまったらしい。つまりこの全身に来る痛みやいくら叩いても幻術から抜け出せなかった理由。それは最も単純でアキラたちはずっと壁を叩いていたのだった。
「これは酷いわね。無茶苦茶を追求したとは言っても、流石にこれは無茶苦茶すぎるわよ!」
「そうだよ。後で直せるかな?」
「まず無理だろうな。だが、こうして無事に外には出られたんだ」
「「「無事じゃない!」」」
Nightを除き、誰一人として無時では済んでいなかった。
おまけに今まさに戦いに身を投じている雷斬のこともある。
何も解決していない。何も起っていない。とりあえず振り出しに戻しただけで、ここから雪将軍と戦わざるを得ないのだ。
「どうするのよ。Nightはなにか策があるんでしょ?」
「そんなものは用意していない」
「はっ!? 用意してないってどう言うことよ!」
「雷斬がいない以上、私たちだけで倒せると思うのか?」
「それは……」
Nightはまさかの考えることを放棄していた。
腕を組んだまま、雷斬一人に全振り。他力本願もいいところ。
アキラですら唖然としてしまい、Nightの考えを読もうとする。
けれどNightもできる手立てを悉く潰されていて、今回の季節限定イベントの恐ろしさを目の当たりにしていた。
「でもやってみるしかないよ! それに雷斬は負けたりしないでしょ!」
アキラは不穏なムードを断ち切るように声を張り上げる。
お通夜な空気は必要ない。ただでさえ寒いのが、余計に寒くなる。
心までは寒さに負けちゃダメだと思い、雷斬のことを信じているからこそはっきりと言うことができた。雷斬は決して負けたりしない。頼もしい仲間だからだ。
「ふん、そうだな」
「当り前よ。雷斬は強いのよ」
「確かにー。でもさ、あの刀で戦えているのかなー?」
「「「あー」」」
フェルノは思っていたことを呟いた。
だけど雷斬の腕を支える愛刀がほぼ初期装備。
嘆いてしまうのも無理はないが、まだ諦めるには早い。
「ちょ、ちょっと不安だね」
「不安はよせ。心配要らないだろ。雷斬は例え鈍らな刀を持たされようが、業と技術で掻い潜れる素質を持っている。それを信じるしか……」
バーーーーーーーーーーーーーーーン!
アキラたちの視線の先、Nightからすれば背後から激しい轟音が響き渡った。
その残響は冬の静寂を掻き切るには十分だった。
自然と目が引き寄せられる。すると障子を突き破り、縁側に設置された雨戸を突き破ってくの字に折れ曲がる人の姿があった。
何を隠そうそれは雷斬。一瞬の内ではあったが、雷斬は庭先の雪の中に沈んだ。
「な、なに!?」
「雷斬、ちょっとどういうことよ!」
何があったのか。一体如何してなのか。
アキラたちは訳が分からないが、雪の中に崩れる雷斬の下に参じる。
全身が痙攣している。相当ダメージを受けたのか、HPバーは赤まで達していた。
あまりにも酷い怪我だ。刀も罅が入り、再度立ち上がるには時間が掛かるだろう。
「一体なにが起きて……」
「うっ、つ、強いですよ」
ボロボロになった雷斬に回復ポーションを飲ませた。
すると唇が微かに動き、喉を使って言葉を発する。
「雷斬大丈夫なの! 動ける、喋れる?」
「ベル、それ以上はよせ。状況は察した。最悪な方向に動いているがな」
この状況を見てしまえば、何を言われても信じてしまう。
雷斬は雪将軍に返り討ちに遭い敗れた。
ただそれだけで全てを察してしまい、空から唐突に降り始めた雪がこんこんとアキラたちに不穏を撒き散らすのだった。
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