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5.あの時からはや三年
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冒険者に現れた男。
それは俺の知り合いだった。
「お前」
「リイブ、生きていたのか!」
俺は男に抱きつかれそうになったので、瞬時に避けた。
「なんで避けるんだ」
「お前みたいな無精ひげ生やした蒸し暑苦しい男に抱きつかれてたまるか」
「3年ぶりの再会だってのに冷たい奴だな」
俺はため息を吐いた。
でも安心した。あれから無事に洞窟から出られたんだな。
「久しぶりだな、ジェード」
「そうだなリイブ。本当に生きていてよかった」
「ほんとにな。死にかけたぜ」
「あの、お知合いなんですか?」
アクアスが俺たちの会話が気になったのか、話に入ってきた。
俺はジェードと顔を見合わせ、
「まあな」
「古い仲だ。俺はな」
俺とジェードとは大きな時間差があった。
俺からしたら、まだ1年も満たない仲なのに、こいつは3年もの長い時間を経験していることになる。
「それにしても無事でよかった。早速シムンにも知らせないとな」
「シムンか。アイツはどうしてるんだ?」
「あいつは今貴族の学校に通ってるぞ。国のために、お前のためにもな」
「俺のため?」
それはどういう意味だ。
アイツが貴族の学校?
「貴族の学校だと。アイツはそんなのに興味なかったんじゃないのか?」
「この3年で変わったんだよ。俺だって、今じゃ冒険者ギルド王都支部のギルドマスターで、第二騎士団の団長だぞ」
「お前が? 不思議なこともあるんだな。それにしても……」
「なんだよ」
ジェードの顔が固まる。
俺は何か変なことでもあったのかと思い、ビビるが、
「お前、3年前と何も変わってないんだな」
「うるせぇ。俺だってあれ以来体が成長しなくなったんだよ」
「何があった」
俺はジェードに洞窟であった話をした。
壮絶な話だった。
毎日毎日、陽の当たらない狭く入り組んだ洞窟内を、迷いながら感覚を鋭くして歩き回る日々。
そんな中、俺の体はあの水に浸かったせいで一切成長しなくなった。
むしろ傷も何もかも一瞬で治る化物のような体になってしまった。
如何してあんなことになってしまったのか。
俺は洞窟内を這う魔物のように、死に物狂いで生活していた。
魔物を殺して肉を食らい、喉が渇けばあの水を飲む。
眠りたく成れば火を焚いて全身の感覚を研ぎ澄ませたまま眠りにつく。
まさに休まらない日々だった。
そんな生活に心身ともに疲れ切ったある日。俺は、
「もっと効率よく、楽に狩りをする方法を見つける。それしかない」
毎日の当てもない探索に疲れ切り、1日を過ごすしかできなかった俺はそこでいろいろなことを経験した。
まずやったこと。
それは快適に暮らすための必要最低限。
「まずは火だ。毎日やっても仕方ない」
俺はたまたま洞窟内で見つけた魔物、フレアリザードを飼うことにした。
最初はどうなるかと思ってが、丁寧な世話のおかげで俺はフレアリザードと仲良くなることができた。
「それから水だ。これは泉のそばに住もう」
そう結論づけた。
そして魔物の骨を加工して鍬を作り畑を耕した。
たまたま服のポケットに入れっぱなしにしておいた野菜の種のおかげで、枯れることの方が多かったが野菜も手に入った。
そして技として編み出したのが、
「秘剣ってわけか」
「そういうことだ。それから俺はいろいろあって、何とか洞窟から自力で這い上がり、さっきようやく上がってこれたってわけになる。まぁ向こうでの生活も慣れれば快適だったんだがな」
俺は肩を回した。
それから持ってきた鞄の中からさっき言っていたフレアリザードを取り出す。
「こいつも連れてきてんだ」
「可愛いですね」
「だろ」
アクアスはフレアリザードを見てそう言った。
俺はケージから出すと肩に乗せる。
「それはフレアリザードの中でも希少種。滅多に人に懐かないはずなんだがな」
「そうなのか。そう言えば俺も仲良くなるまで大変だったな。なぁ」
「クギャ!」
フレアリザードは軽く鳴いた。
こいつを初めて見つけたときのことを思い出す。
今となっては最高の相棒だけど、あの時は災難だった。
「ほんと思えは順応がすぎるな」
「うるせぇよ」
「褒めてんだ。とにかくだ。無事でよかった」
「お前もだよ」
俺とジェードは拳を突き合わせた。
それからしばし思い出話と、この世界の情勢の変化についていろいろ聞いた俺だったが、ジェードは空気を換えて俺にこう言った。
「なぁリイブ。いい話と悪い話があるんだ。どっちから聞きたい」
「なんだよ突然。じゃあ悪い方?」
「そうか。お前らしい」
まるで最初っからそのつもりだったみたいに聞こえる。
俺は喉の奥を唾液が重たく流れ落ち、そしてジェードはこう言った。
「お前の村、もうないぞ」
それは俺の知り合いだった。
「お前」
「リイブ、生きていたのか!」
俺は男に抱きつかれそうになったので、瞬時に避けた。
「なんで避けるんだ」
「お前みたいな無精ひげ生やした蒸し暑苦しい男に抱きつかれてたまるか」
「3年ぶりの再会だってのに冷たい奴だな」
俺はため息を吐いた。
でも安心した。あれから無事に洞窟から出られたんだな。
「久しぶりだな、ジェード」
「そうだなリイブ。本当に生きていてよかった」
「ほんとにな。死にかけたぜ」
「あの、お知合いなんですか?」
アクアスが俺たちの会話が気になったのか、話に入ってきた。
俺はジェードと顔を見合わせ、
「まあな」
「古い仲だ。俺はな」
俺とジェードとは大きな時間差があった。
俺からしたら、まだ1年も満たない仲なのに、こいつは3年もの長い時間を経験していることになる。
「それにしても無事でよかった。早速シムンにも知らせないとな」
「シムンか。アイツはどうしてるんだ?」
「あいつは今貴族の学校に通ってるぞ。国のために、お前のためにもな」
「俺のため?」
それはどういう意味だ。
アイツが貴族の学校?
「貴族の学校だと。アイツはそんなのに興味なかったんじゃないのか?」
「この3年で変わったんだよ。俺だって、今じゃ冒険者ギルド王都支部のギルドマスターで、第二騎士団の団長だぞ」
「お前が? 不思議なこともあるんだな。それにしても……」
「なんだよ」
ジェードの顔が固まる。
俺は何か変なことでもあったのかと思い、ビビるが、
「お前、3年前と何も変わってないんだな」
「うるせぇ。俺だってあれ以来体が成長しなくなったんだよ」
「何があった」
俺はジェードに洞窟であった話をした。
壮絶な話だった。
毎日毎日、陽の当たらない狭く入り組んだ洞窟内を、迷いながら感覚を鋭くして歩き回る日々。
そんな中、俺の体はあの水に浸かったせいで一切成長しなくなった。
むしろ傷も何もかも一瞬で治る化物のような体になってしまった。
如何してあんなことになってしまったのか。
俺は洞窟内を這う魔物のように、死に物狂いで生活していた。
魔物を殺して肉を食らい、喉が渇けばあの水を飲む。
眠りたく成れば火を焚いて全身の感覚を研ぎ澄ませたまま眠りにつく。
まさに休まらない日々だった。
そんな生活に心身ともに疲れ切ったある日。俺は、
「もっと効率よく、楽に狩りをする方法を見つける。それしかない」
毎日の当てもない探索に疲れ切り、1日を過ごすしかできなかった俺はそこでいろいろなことを経験した。
まずやったこと。
それは快適に暮らすための必要最低限。
「まずは火だ。毎日やっても仕方ない」
俺はたまたま洞窟内で見つけた魔物、フレアリザードを飼うことにした。
最初はどうなるかと思ってが、丁寧な世話のおかげで俺はフレアリザードと仲良くなることができた。
「それから水だ。これは泉のそばに住もう」
そう結論づけた。
そして魔物の骨を加工して鍬を作り畑を耕した。
たまたま服のポケットに入れっぱなしにしておいた野菜の種のおかげで、枯れることの方が多かったが野菜も手に入った。
そして技として編み出したのが、
「秘剣ってわけか」
「そういうことだ。それから俺はいろいろあって、何とか洞窟から自力で這い上がり、さっきようやく上がってこれたってわけになる。まぁ向こうでの生活も慣れれば快適だったんだがな」
俺は肩を回した。
それから持ってきた鞄の中からさっき言っていたフレアリザードを取り出す。
「こいつも連れてきてんだ」
「可愛いですね」
「だろ」
アクアスはフレアリザードを見てそう言った。
俺はケージから出すと肩に乗せる。
「それはフレアリザードの中でも希少種。滅多に人に懐かないはずなんだがな」
「そうなのか。そう言えば俺も仲良くなるまで大変だったな。なぁ」
「クギャ!」
フレアリザードは軽く鳴いた。
こいつを初めて見つけたときのことを思い出す。
今となっては最高の相棒だけど、あの時は災難だった。
「ほんと思えは順応がすぎるな」
「うるせぇよ」
「褒めてんだ。とにかくだ。無事でよかった」
「お前もだよ」
俺とジェードは拳を突き合わせた。
それからしばし思い出話と、この世界の情勢の変化についていろいろ聞いた俺だったが、ジェードは空気を換えて俺にこう言った。
「なぁリイブ。いい話と悪い話があるんだ。どっちから聞きたい」
「なんだよ突然。じゃあ悪い方?」
「そうか。お前らしい」
まるで最初っからそのつもりだったみたいに聞こえる。
俺は喉の奥を唾液が重たく流れ落ち、そしてジェードはこう言った。
「お前の村、もうないぞ」
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