かつて《剣聖》と呼ばれた社畜、異世界で付与魔法を手に再び《剣聖》へと至る。

水定ゆう

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12話 回復ポーションの効き目は如何に

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 ミレイユとスフロは苦しみながらも黄緑色の液体を飲み干した。
 嗚咽を漏らしながらだが、決して吐き出したりはしない。
 信頼するラウリィの手前だから、必死に吐き出したい気持ちを押し殺しているのだろう。

「主人思いだよ」

 俺はボソッと心の声を吐露していた。
 するとラウリィは不安な気持ち一杯で俺に訊ねた。

「ヒジリさん、本当に大丈夫なんですか!?」
「大丈夫。あれは変な液体じゃないから」

 あまりにも軽い返答をした。これは自分が当人じゃないからできたのだ。
 とは言え、ミレイユとスフロが苦悶する液体は回復ポーション。
 決して体には害は無く、むしろ苦い分だけ体に良いものだった。

「正直効き目は保証するよ。あの回復ポーションは、かなりの効能があるから」
「ポーション? 回復ポーションだったんですか!? それだとあの表情も納得です」
「えっ、そんなので納得してくれるの?」
「はい。回復ポーションは粗悪品が多く、それ故に苦みの強い物が多いって聞いたことがありますから」
「……粗悪品じゃないんだけどな」

 回復ポーションと言う品はこの異世界にも存在していた。
 しかし俺は良く知らなかったが、あまり良い出来では無いらしい。
 むしろ粗悪品が多く、俺が持っていた回復ポーションよりも苦いものが非常に出回っている。効能も薄く、それでいて高価。そのせいもあり、回復ポーション産業はあまり発展していないとラウリィは語った。

「ですから、私は回復ポーションをもっと安価で傷付いた人達に優先して出回って欲しいんです。できれば効能も上がって……わがままですよね」
「そんなことないよ。むしろ最高だ」
「そう言って貰えて嬉しいです。でもあの回復ポーションも、やっぱり効能は低いですよね」
「うーん、そこまで低くは無いと思うよ」
「どういうことですか?」
「見ていれば分かるよ」

 俺はこの異世界の回復ポーションの実態を聞いて分かったことがある。
 ゲームの延長戦だと思っていた世界観は一気に崩壊。
 代わりに廉価版のような気怠さが蔓延していた。

 回復ポーションは正しく作れば俺でも良いものが作れる。
 それでも苦みが消えないのは、あれが薬であることに変わらないからだ。
 けれどこの異世界ではポーションの効能も低い。
 そんなのは薬じゃない。ただの気休めに過ぎなかった。

 それと比べれば今ミレイユとスフロが飲んでいる回復ポーションの効能は桁違いに良い。
 あまりの苦みに苦しんでいたミレイユとスフロの顔色が良くなっているのはその証拠だ。
 
 先程まで、あんなに苦しそうだったのが一変している。
 ミレイユの左腕を走っていた青腫れが引いて行き、スフロの両脚の腱が再生している。

「ど、どういうことですか!?」
「凄い効き目の回復効能だね」
「ヒジリさん、知っていたから使ったんじゃないんですか!?」
「そう言われると困るな……まあ、回復ポーションを使おうとは思ってたけどね」

 正直ここまでの回復効能があるとは俺も思ってはいなかった。
 けれどNPCにも使える代物だ。例え異世界でも問題無く使えた。
 今まで買い貯めて、一度も使ったことが無かったおかげで、ミレイユとスフロの治療ができたのだ。

「痛みが引いて……えっ、腕が、痛くないです」
「俺の脚が、う、嘘だろ!? あ、歩けるのか」
「歩けるよ。多分」

 ミレイユとスフロの体は完璧に治り切っていた。
 たった一口回復ポーションを飲んだだけでここまでの回復効能。
 ReaRisin Magicでのゲーム性能より、圧倒的に強力だった。

(これ、ヤバくない? この世界の常識をひっくり返すような……えっ、今度はなに?)

 俺が一人引いていると、ラウリィに腕を引かれた。
 視線を預けると、キラキラとした瞳が飛び込んでくる。
 近い、あまりにも近い。俺は腕ではなく手を掴まれてしまい、逃げることができなくなった。

「ヒジリさん、疑ってしまってすみませんでした」
「う、疑う?」
「本当はヒジリさんがいい人なのは分かっているんです。でも私の大切な家族を蔑ろにしているんじゃないかと思って、回復ポーションを渡した時から疑っていたんです。ですがその考えは改めてさせてください。私、ヒジリさんに二度も助けられてしまいました。本当になにをお礼にしたらいいのか分からない程です」

 ラウリィは超絶早口になっていた。
 一体何処から声が出ているのか分からない程、マシンガンの如く言葉が溢れる。
 一瞬にして言葉を挟む隙も無いくらい圧倒されると、俺は息を飲まされた。

「あっ、うん。そっか……良かったね」
「はい。あの、お礼なんですが、少し考えても大丈夫ですか? その、お父様とお母様に相談して、その、あの……」
「少し落ち着こうか。うん、とりあえず君の家族が見ているからね」

 俺は一人先行しているラウリィを一度落ち着かせた。
 その代わりに隣で無事かつ健康的な姿のミレイユとスフロが立っていた。

「ミレイユ、スフロさん! もう立っても大丈夫なんですか?」
「はい、ラウリィ様」
「彼のおかげでこの通りです。まさか自分の足でもう一度歩けるなんて……本当に助かったよ。ありがとう。そして非礼をお詫びする」

 ミレイユとスフロはもう大丈夫そうだった。
 ましてやスフロはあまりの感激振りに俺に頭を下げる。
 あまりの態度の一片ように人間性を見るも、俺は社畜疲れで慣れているからか、ついつい要らない笑顔を浮かべてしまった。

「大丈夫ですよ。あはは」

 この笑顔が作りものなのは承知の上だ。
 きっと目の下には隈ができている筈。
 頭の中で社畜時代の俺が浮かび上がって笑っていると、ラウリィとミレイユはドン引きしている。一体どんな顔なのか、今の俺には知る由もない。
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