13 / 45
13話 ラウリィ達と別れ、一旦ね
しおりを挟む
俺は無事にラウリィの家族を助けることができたらしい。
感謝の雨を受けると、心が少し満たされた気分になる。
社畜時代の疲労からか、本当に嬉しいものが何か分からなかったが、人を助けることはそれだけ幸福感を高めてくれる。
「なんか、めっちゃ嬉しい」
「嬉しいのは私です。家族を救っていただき、ありがとうございました」
ラウリィは代表して丁寧に頭を下げた。
その時みせた表情は、やや頬が赤らんでいる。
泣いている訳じゃない。きっと嬉しすぎて嬉し泣きしていたに違いない。
「ラウリィ、もしかして泣いてた?」
「泣いてないです!」
「家族の前だからって我慢しなくていいよ。むしろ一杯泣けばいいよ」
「……そうします」
ラウリィは感情を押し殺していた。
しかし俺が促したおかげなのか、ラウリィはミレイユとスフロの傍に寄る。
(耳くらいは塞いでおこうかな)
俺はラウリィを囲うミレイユとスフロの姿で案じた。
耳を塞ぎ、目を閉じると、何処からか騒めきが立った。
たくさん泣いているに違いない。俺はラウリィの感情をイメージし、《剣聖》なんて茶化されていた社畜の俺との違いを感じた。
「ヒジリさん、ありがとうございました」
「何度もいいよ。それより」
「はい、お礼は近日中に必ずさせていただきます」
「あっ、それはいいよ。別に大したことはしてない」
俺は謙虚に振舞った。
実際の所、ラウリィ達にとっては一大事の騒事だったのは事実だ。
けれど俺には関係の無い話。ただ盗賊をボコボコにして、ラウリィの家族に回復ポーションを飲ませる。それだけの簡単な作業だったので、お礼なんて要らない。
むしろして欲しいことは別にあった。
「お願いしたのは二つ。一つは盗賊達をちゃんと警察に突き出して」
「警察ですか? 分かりました。責任を以って騎士団に引き渡します」
「ありがとう。それともう一つ、俺のことは極力伏せて欲しいな」
「ど、どうしてですか!?」
ラウリィは驚いていた。もちろん俺には一切伝わってこない。共感ができなかった。
けれどよくよく考えればラウリィにとっては異例だ。
他言無用とは言っても、流石に助けて貰った手前、その評判を上げるためにも言いふらしたい気持ちが人間にはある。それが命に関することなら尚のこと、英雄思想を抱くこともある。
だけどそれは一般論からかけ離れていた。
正直な話、俺は自慢にして欲しくない。
そんなことになれば、面倒なことになるのは確実で、天使風の女性が俺を無理やりこの異世界に飛ばした理由、“あの子やあの子の周りを助けて”が果たせなくなる気がした。
俺はいつになってもこの異世界での役割が分からない。超絶スローライフを送るためにも自由を得られない気がした。
(まさかこの子が“あの子”がじゃないよな。なー)
「今の俺はラウリィが思う程褒められた人じゃない。だからラウリィの胸の中でだけ、俺のことを讃えててよ」
「ヒジリさん……」
俺は少し調子に乗って、ナルシストみたいなことを言ってしまった。
これで上手く切り抜けられればいいのだが、最悪愛想をつかされてしまうかもしれない。
それは流石に困る。せめて友達くらいにはなっておきたい。
後のことを思いながらも、二者択一の爆弾をラウリィに預けてしまい、心底胸がキュッとなった。
「あっ、いや、別にさ、変な意味じゃないから嫌いにはならないで欲しいな。そ、それこそ友達にはなって欲しいから」
「……はい、そうします」
「どうするの!?」
ラウリィは一体何に対して“そうします”と言ったのか分からない。
どっちに転んだのか。どの色の導火線を切ったのか。俺は怖くなってしまう。
真偽が定かではない中、俺はラウリィに腕を伸ばす。
その手は空を掻き、ラウリィはミレイユ達に呼ばれて馬車の下まで移動した。
「ラウリィ様、そろそろお戻りにならなければ、旦那様と奥様が心配されてしまいます」
「分かりました。それではヒジリさん、また後程」
ラウリィはミレイユに促され、馬車へと乗り込む。
その間に盗賊達を引き摺りながら、スフロが馬車へと引き寄せる。
乱暴に荷車に括りつけられると、人権の無さを感じ取った。
「それじゃあ俺達は行くから。本当にありがとう」
「は、はい。お気を付けて」
「うん。それじゃあ戻りますよ。はいやっ!」
「あっ、ちょっと待ってよ……ああ、行っちゃった」
俺は手を伸ばしたがやっぱり届かなかった。
ラウリィの真意も聞けないまま、馬車の乗って帰ってしまう。
盗賊達を連れ、帰路へ着く馬車の荷車を俺は寂しく見届けた。
感謝の雨を受けると、心が少し満たされた気分になる。
社畜時代の疲労からか、本当に嬉しいものが何か分からなかったが、人を助けることはそれだけ幸福感を高めてくれる。
「なんか、めっちゃ嬉しい」
「嬉しいのは私です。家族を救っていただき、ありがとうございました」
ラウリィは代表して丁寧に頭を下げた。
その時みせた表情は、やや頬が赤らんでいる。
泣いている訳じゃない。きっと嬉しすぎて嬉し泣きしていたに違いない。
「ラウリィ、もしかして泣いてた?」
「泣いてないです!」
「家族の前だからって我慢しなくていいよ。むしろ一杯泣けばいいよ」
「……そうします」
ラウリィは感情を押し殺していた。
しかし俺が促したおかげなのか、ラウリィはミレイユとスフロの傍に寄る。
(耳くらいは塞いでおこうかな)
俺はラウリィを囲うミレイユとスフロの姿で案じた。
耳を塞ぎ、目を閉じると、何処からか騒めきが立った。
たくさん泣いているに違いない。俺はラウリィの感情をイメージし、《剣聖》なんて茶化されていた社畜の俺との違いを感じた。
「ヒジリさん、ありがとうございました」
「何度もいいよ。それより」
「はい、お礼は近日中に必ずさせていただきます」
「あっ、それはいいよ。別に大したことはしてない」
俺は謙虚に振舞った。
実際の所、ラウリィ達にとっては一大事の騒事だったのは事実だ。
けれど俺には関係の無い話。ただ盗賊をボコボコにして、ラウリィの家族に回復ポーションを飲ませる。それだけの簡単な作業だったので、お礼なんて要らない。
むしろして欲しいことは別にあった。
「お願いしたのは二つ。一つは盗賊達をちゃんと警察に突き出して」
「警察ですか? 分かりました。責任を以って騎士団に引き渡します」
「ありがとう。それともう一つ、俺のことは極力伏せて欲しいな」
「ど、どうしてですか!?」
ラウリィは驚いていた。もちろん俺には一切伝わってこない。共感ができなかった。
けれどよくよく考えればラウリィにとっては異例だ。
他言無用とは言っても、流石に助けて貰った手前、その評判を上げるためにも言いふらしたい気持ちが人間にはある。それが命に関することなら尚のこと、英雄思想を抱くこともある。
だけどそれは一般論からかけ離れていた。
正直な話、俺は自慢にして欲しくない。
そんなことになれば、面倒なことになるのは確実で、天使風の女性が俺を無理やりこの異世界に飛ばした理由、“あの子やあの子の周りを助けて”が果たせなくなる気がした。
俺はいつになってもこの異世界での役割が分からない。超絶スローライフを送るためにも自由を得られない気がした。
(まさかこの子が“あの子”がじゃないよな。なー)
「今の俺はラウリィが思う程褒められた人じゃない。だからラウリィの胸の中でだけ、俺のことを讃えててよ」
「ヒジリさん……」
俺は少し調子に乗って、ナルシストみたいなことを言ってしまった。
これで上手く切り抜けられればいいのだが、最悪愛想をつかされてしまうかもしれない。
それは流石に困る。せめて友達くらいにはなっておきたい。
後のことを思いながらも、二者択一の爆弾をラウリィに預けてしまい、心底胸がキュッとなった。
「あっ、いや、別にさ、変な意味じゃないから嫌いにはならないで欲しいな。そ、それこそ友達にはなって欲しいから」
「……はい、そうします」
「どうするの!?」
ラウリィは一体何に対して“そうします”と言ったのか分からない。
どっちに転んだのか。どの色の導火線を切ったのか。俺は怖くなってしまう。
真偽が定かではない中、俺はラウリィに腕を伸ばす。
その手は空を掻き、ラウリィはミレイユ達に呼ばれて馬車の下まで移動した。
「ラウリィ様、そろそろお戻りにならなければ、旦那様と奥様が心配されてしまいます」
「分かりました。それではヒジリさん、また後程」
ラウリィはミレイユに促され、馬車へと乗り込む。
その間に盗賊達を引き摺りながら、スフロが馬車へと引き寄せる。
乱暴に荷車に括りつけられると、人権の無さを感じ取った。
「それじゃあ俺達は行くから。本当にありがとう」
「は、はい。お気を付けて」
「うん。それじゃあ戻りますよ。はいやっ!」
「あっ、ちょっと待ってよ……ああ、行っちゃった」
俺は手を伸ばしたがやっぱり届かなかった。
ラウリィの真意も聞けないまま、馬車の乗って帰ってしまう。
盗賊達を連れ、帰路へ着く馬車の荷車を俺は寂しく見届けた。
7
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」
その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ!
「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた!
俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。
絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。
辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。
一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」
これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる