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19話 虎の頭と牛の肉
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「ううっ、ヒジリさん、この森ってこんなに広かったんですか?」
「うん、正直奥まで行ったらマズいかもね」
森の中は広い。正直、俺一人では手に余り、管理なんて出来っこない程に広い。
如何してこんなに森が広いのか。
それは単純で、人の手が加えられておらず、自然がそのままの形で残されているからだ。
と言うのも、この森にはたくさんのモンスターが生息している。
そのせいもあり、無暗に人が近付けない。近付けば簡単にモンスターの餌食になるのだ。
おかげでこの土地を任されている俺の両親も非常に困っていた。
自然は豊かだが、モンスターが増え、緑は一掃に肥大化する。
そのせいで近隣の土地も痩せ細り、土壌が荒れてしまう。
手出しができないまま何年も時が経ち、今に至っていた。
「迷っちゃいますよね?」
「マジでそうなんだよね。おかげでいちいち、それっ!」
俺は木の表面に剣で傷を付ける。
矢印を描き、どっちから来たのか判るようにしておく。
こうすれば一目瞭然。俺達は最悪這ってでも森の外に出ることはできた。
(これって、ゲームじゃなくてサバイバルでは?)
俺は嫌な予感がしてしまった。
と言うのも、ラウリィと言う明らかにヒロイン顔の少女が居るのに、この有様は何なのか。
冷静になって考えてみると、異世界転生と言うラノベジャンル的に、今俺がやっていることは、あまりにも地味でつまらない。ただ森の中で少年少女今日の晩御飯を調達するため駆けずり回る。画ずら的に最悪な想像が働くと、俺は唖然としてしまった。
「ラウリィ、ごめん。つまらないよね?」
「そんなことないです」
「無理しなくていいよ? 正直な感想を言って」
「私はヒジリさんとこうして一緒に居られるだけで満足です」
ラウリィに促し掛け、感想を聞いてみる。
しかしラウリィの口からは俺のおもっている答えは出ない。
調子を崩される中、ガサガサと草木が揺れる音が聞こえた。
「ヒジリさん!」
ラウリィが怯えた素振りで俺の背中に隠れる。
しかし利き手の右手は剣の柄に添えられている。
いつでも反撃に出られる構え。俺は視界の端で捉えると、コクリと首を縦に振る。
「この気配、さっきのモンスターだ」
緊張感が走り、和やかなムードを上書きする。
命のやり取りがこれから行われようとしているので、ヒジリは実剣を鞘から抜き、揺れる草木を睨み付ける。
牽制のため、一本のナイフを左手の指で挟み込むも、その必要は無いらしい。
「ガウギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
鋭い牙が剣を握って待ち構えている俺達に襲い掛かる。
口を大きく開き、口の奥が俺達を飲み込もうと思わせる。
強靭な四肢で体を弾くと、草木を揺らして勢いも良かった。
「正面から来るか、それなら……いや、無理」
俺はラウリィを連れて一旦距離を取った。
転がるように左に飛び、モンスターの攻撃を何とか回避する。
流石にカウンターを仕掛けるにも間合いが無さすぎたせいか、せっかくの体勢を崩されてしまった。
「ヒジリさん、あのモンスターって!?」
「あれは……確かタイガーブルじゃなかった?」
「タイガーブル? 聞いたことあります。確か虎の頭と牛の体を持った合成獣ですね!」
ラウリィはよく勉強していた。流石はストチュール家の三女だ。
俺は感心しているも、目の前のモンスターから目を逸らしはしない。
「タイガーブル。確かに虎の頭と牛の体だ」
モンスターは名を体で表していた。おかげでへんてこな姿をしている。
タイガーブル。虎の頭を牛の体をくっつけたようなモンスターだ。
色合いは完全に虎。しかし四肢には立派で鋭い爪は無く、牛らしい分厚いブーツになっている。
代わりに鋭い牙が突き出しており、一回でも噛まれたら大怪我じゃ済みそうにない。
「ラウリィ、ちょっと離れてて」
「ど、どうするんですか?」
「よく見ててよ。俺の戦い方……一撃で終わらせるから」
俺はラウリィが危険な目に遭わないよう、距離を取って貰うことにした。
と言うのも目の前に居るのは危険なモンスター。
だけど俺も現実世界の二葉聖じゃない。ゲームのアバターを借りた、異世界で生きる聖だった。
「異世界転生ものならチートはお約束。俺のチートは地味だし、変わり種でも無いけどさ……」
ぶつぶつと念仏のように愚痴を吐くと、それが俺に自己暗示を掛ける。
剣を構え、攻撃を待ち構えていると、タイガーブルが先に動く。
飛び出してきた瞬間、ギラリと牙が光る。暗闇の底が、口の奥底に広がると、俺を飲み込もうと画策していた。
「残念だけど、負けないんだよね」
俺はタイガーブルと交差した。
鋭い牙が俺の体を捉えるも、それより早く剣が叩き付けられる。
すると如何なったのか。簡単な話、タイガーブルは牙をへし折られ、口をかっ開かれてしまい、大量の血を流しながら痛みに震えて崩れていた。
「ギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
「ひやっ!?」
「終わりだ」
倒れ込んだタイガーブルは虫の息だった。
呼吸に必死になり、目の奥から熱い涙を流している。
モンスターではない、生物としての最期を迎えようとしており、俺は剣を突き刺して絶命させた。
タイガーブルはピクリとも動かなくなってしまった。
完全にこと切れてしまい、安らかに眠りに付いている。
ゲームの中で経験値稼ぎでモンスターを倒すのとは違う感触が手の中に流れ込む。
汚すとはこういうことなのだと、押し付けるように理解させられた。
「ひ、ヒジリさん……その、私は」
「仕方の無いことだよ。だから俺達でちゃんと食べようね」
「……は、はい!」
俺は倒したタイガーブルを解体する。
あまり得意ではないが、この森で生活していくうちに、雑だけど慣れていた。
タイガーブルの素材を余すことなく持ち帰るべく小分けにすると血飛沫が顔に振り掛かるが、それでも気にせずに俺は作業を続けるのだった。
「うん、正直奥まで行ったらマズいかもね」
森の中は広い。正直、俺一人では手に余り、管理なんて出来っこない程に広い。
如何してこんなに森が広いのか。
それは単純で、人の手が加えられておらず、自然がそのままの形で残されているからだ。
と言うのも、この森にはたくさんのモンスターが生息している。
そのせいもあり、無暗に人が近付けない。近付けば簡単にモンスターの餌食になるのだ。
おかげでこの土地を任されている俺の両親も非常に困っていた。
自然は豊かだが、モンスターが増え、緑は一掃に肥大化する。
そのせいで近隣の土地も痩せ細り、土壌が荒れてしまう。
手出しができないまま何年も時が経ち、今に至っていた。
「迷っちゃいますよね?」
「マジでそうなんだよね。おかげでいちいち、それっ!」
俺は木の表面に剣で傷を付ける。
矢印を描き、どっちから来たのか判るようにしておく。
こうすれば一目瞭然。俺達は最悪這ってでも森の外に出ることはできた。
(これって、ゲームじゃなくてサバイバルでは?)
俺は嫌な予感がしてしまった。
と言うのも、ラウリィと言う明らかにヒロイン顔の少女が居るのに、この有様は何なのか。
冷静になって考えてみると、異世界転生と言うラノベジャンル的に、今俺がやっていることは、あまりにも地味でつまらない。ただ森の中で少年少女今日の晩御飯を調達するため駆けずり回る。画ずら的に最悪な想像が働くと、俺は唖然としてしまった。
「ラウリィ、ごめん。つまらないよね?」
「そんなことないです」
「無理しなくていいよ? 正直な感想を言って」
「私はヒジリさんとこうして一緒に居られるだけで満足です」
ラウリィに促し掛け、感想を聞いてみる。
しかしラウリィの口からは俺のおもっている答えは出ない。
調子を崩される中、ガサガサと草木が揺れる音が聞こえた。
「ヒジリさん!」
ラウリィが怯えた素振りで俺の背中に隠れる。
しかし利き手の右手は剣の柄に添えられている。
いつでも反撃に出られる構え。俺は視界の端で捉えると、コクリと首を縦に振る。
「この気配、さっきのモンスターだ」
緊張感が走り、和やかなムードを上書きする。
命のやり取りがこれから行われようとしているので、ヒジリは実剣を鞘から抜き、揺れる草木を睨み付ける。
牽制のため、一本のナイフを左手の指で挟み込むも、その必要は無いらしい。
「ガウギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
鋭い牙が剣を握って待ち構えている俺達に襲い掛かる。
口を大きく開き、口の奥が俺達を飲み込もうと思わせる。
強靭な四肢で体を弾くと、草木を揺らして勢いも良かった。
「正面から来るか、それなら……いや、無理」
俺はラウリィを連れて一旦距離を取った。
転がるように左に飛び、モンスターの攻撃を何とか回避する。
流石にカウンターを仕掛けるにも間合いが無さすぎたせいか、せっかくの体勢を崩されてしまった。
「ヒジリさん、あのモンスターって!?」
「あれは……確かタイガーブルじゃなかった?」
「タイガーブル? 聞いたことあります。確か虎の頭と牛の体を持った合成獣ですね!」
ラウリィはよく勉強していた。流石はストチュール家の三女だ。
俺は感心しているも、目の前のモンスターから目を逸らしはしない。
「タイガーブル。確かに虎の頭と牛の体だ」
モンスターは名を体で表していた。おかげでへんてこな姿をしている。
タイガーブル。虎の頭を牛の体をくっつけたようなモンスターだ。
色合いは完全に虎。しかし四肢には立派で鋭い爪は無く、牛らしい分厚いブーツになっている。
代わりに鋭い牙が突き出しており、一回でも噛まれたら大怪我じゃ済みそうにない。
「ラウリィ、ちょっと離れてて」
「ど、どうするんですか?」
「よく見ててよ。俺の戦い方……一撃で終わらせるから」
俺はラウリィが危険な目に遭わないよう、距離を取って貰うことにした。
と言うのも目の前に居るのは危険なモンスター。
だけど俺も現実世界の二葉聖じゃない。ゲームのアバターを借りた、異世界で生きる聖だった。
「異世界転生ものならチートはお約束。俺のチートは地味だし、変わり種でも無いけどさ……」
ぶつぶつと念仏のように愚痴を吐くと、それが俺に自己暗示を掛ける。
剣を構え、攻撃を待ち構えていると、タイガーブルが先に動く。
飛び出してきた瞬間、ギラリと牙が光る。暗闇の底が、口の奥底に広がると、俺を飲み込もうと画策していた。
「残念だけど、負けないんだよね」
俺はタイガーブルと交差した。
鋭い牙が俺の体を捉えるも、それより早く剣が叩き付けられる。
すると如何なったのか。簡単な話、タイガーブルは牙をへし折られ、口をかっ開かれてしまい、大量の血を流しながら痛みに震えて崩れていた。
「ギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
「ひやっ!?」
「終わりだ」
倒れ込んだタイガーブルは虫の息だった。
呼吸に必死になり、目の奥から熱い涙を流している。
モンスターではない、生物としての最期を迎えようとしており、俺は剣を突き刺して絶命させた。
タイガーブルはピクリとも動かなくなってしまった。
完全にこと切れてしまい、安らかに眠りに付いている。
ゲームの中で経験値稼ぎでモンスターを倒すのとは違う感触が手の中に流れ込む。
汚すとはこういうことなのだと、押し付けるように理解させられた。
「ひ、ヒジリさん……その、私は」
「仕方の無いことだよ。だから俺達でちゃんと食べようね」
「……は、はい!」
俺は倒したタイガーブルを解体する。
あまり得意ではないが、この森で生活していくうちに、雑だけど慣れていた。
タイガーブルの素材を余すことなく持ち帰るべく小分けにすると血飛沫が顔に振り掛かるが、それでも気にせずに俺は作業を続けるのだった。
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