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20話 コトコト煮込めば美味いはず
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「それじゃあ、腕によりをかけて作りますね」
「俺も手伝うよ。とりあえずなに作る?」
俺達はタイガーブルの素材を余すことなく持ち帰って来た。
もちろん使えない部分もあったので、それは森に生息している他のモンスターにお裾分けした。
それでも充分以上の食材が手に入ると、用意していた野菜や野草を始め、かなり豪勢にできそうだ。
「そうですね。それじゃあ煮込んでスープにしましょう」
「スープ? 牛肉スープ?」
せっかく持ち帰った新鮮な肉を、焼いてステーキにするでもなく、刻んで野菜と一緒に炒めるでもなく、スープにすると言い出した。
流石に俺にその選択肢は無い。唖然とする中、ラウリィは薬草と一緒にタイガーブルの肉を大鍋の中に移すと、柔らかくするためと臭いを消すべくコトコト煮込む。
「もしかして、マジでスープ作るの?」
「はい、作りますよ」
「……正気?」
「正気も正気です。まあ見ていてください」
俺は呆気に取られてしまうと、もはや手出しできなかった。
キッチンから追いやられ、鍋の前を陣取られると、俺がいくら手を伸ばしても届かない。
これはもうあれだ。食うしかないんだ。
勿体ないと思いつつも、心の中では(まあいっか)と唱えていた。
「お肉が柔らかくなってきたら薬草を取り出して、人参と玉ねぎを入れて……あっ、聖さん調味料ってありますか?」
「隣の棚にあるよ」
俺はキッチン隣の棚を指さす。
ラウリィは火加減を見守りながら棚を開けると、大量の調味料が入っていて歓喜する。
「うわぁ、こんなにたくさんの調味料があればなんだって……これはなんですか?」
「ん? ああ、醤油と味噌、それからみりんに料理酒だよ」
「しょうゆ? みそ? この辺りじゃ見かけない調味料ですよね」
「輸入品だよ。後、そっちにぬか床がある」
「ぬかどことは?」
異世界に転生した俺だったが、食が余りにも日本人だった。
しかも古き良き日本人で、こっちには無い醤油や味噌を輸入するほど。
正直、日本らしい調味料が存在していた時には歓喜した。
それ以来か、今までは喜んで食べていた洋食よりも、和食のありがたみを噛み締めるようになっていた。
(ぬか漬けって、意外に美味いんだよな……あれ、聞いてない?)
知らずに視線を外すと、涎を垂らし掛けていた。
しかしラウリィは再び火と睨み合っている。
完全にスルーされているようで、何だか悲しくなってしまう。
「ラウリィ、俺はなに手伝えばいい?」
「大丈夫ですよ、ヒジリさん。休んでいてください」
「や、休む? うわぁ、社畜の俺にそれ言うんだ……付け合わせでも作るか」
俺は社畜だった頃に習慣化されてしまった慣れを発動させる。
ラウリィの邪魔にならない程度で付け合わせのサラダでも作ろうと思った。
包丁をインベントリから取り出すと、野菜を切り裂き、小鉢に野菜を盛り付ける。
「とりあえず彩りは良しとして……」
「できました!」
ラウリィは鍋の調子が良く、無事に完成したことを伝える。
一体どんな仕上がりになったのか。
途中から全く見ていなかったけれど、鍋の中をこっそり覗くと、如何やらシチューのようだ。
(あっ、ビーフシチューだ)
結局でき上がったものはシンプルなビーフシチューに落ち着いた。
ホッと一安心すると、器にラウリィがよそう。
赤ワインの良い香りとトロトロに煮えた肉。どちらも食欲をそそらせる。
「美味しそうだね」
「どうぞ、食べてみてください」
「それじゃあ貰うね。いただきます」
俺はよそってもらった器を凝視。
スプーンを手にしてビーフシチューを掬い上げると、口の中へと運ぶ。
下に乗せる。すると旨味が一気に広がった。
「うわぁ! (牛の油、ヤバッ……)」
俺の体の中に大量の油が投入される。
けれどそれがしつこくない上に、甘みがあって美味い。
気が付くとスプーンを何度も器に運び、俺はビーフシチューを食べ続けていた。
「ヒジリさん、そんなに急がなくても大丈夫ですよ」
「あむっあむっあむっあむっ……(美味しい。嫌いじゃない)」
俺はラウリィの料理の腕に感嘆となる。
それと同時に本当に貴族なのか怪しくなる。
それだけ家庭的な貴族の少女に、俺は覚えが無いのだった。
「俺も手伝うよ。とりあえずなに作る?」
俺達はタイガーブルの素材を余すことなく持ち帰って来た。
もちろん使えない部分もあったので、それは森に生息している他のモンスターにお裾分けした。
それでも充分以上の食材が手に入ると、用意していた野菜や野草を始め、かなり豪勢にできそうだ。
「そうですね。それじゃあ煮込んでスープにしましょう」
「スープ? 牛肉スープ?」
せっかく持ち帰った新鮮な肉を、焼いてステーキにするでもなく、刻んで野菜と一緒に炒めるでもなく、スープにすると言い出した。
流石に俺にその選択肢は無い。唖然とする中、ラウリィは薬草と一緒にタイガーブルの肉を大鍋の中に移すと、柔らかくするためと臭いを消すべくコトコト煮込む。
「もしかして、マジでスープ作るの?」
「はい、作りますよ」
「……正気?」
「正気も正気です。まあ見ていてください」
俺は呆気に取られてしまうと、もはや手出しできなかった。
キッチンから追いやられ、鍋の前を陣取られると、俺がいくら手を伸ばしても届かない。
これはもうあれだ。食うしかないんだ。
勿体ないと思いつつも、心の中では(まあいっか)と唱えていた。
「お肉が柔らかくなってきたら薬草を取り出して、人参と玉ねぎを入れて……あっ、聖さん調味料ってありますか?」
「隣の棚にあるよ」
俺はキッチン隣の棚を指さす。
ラウリィは火加減を見守りながら棚を開けると、大量の調味料が入っていて歓喜する。
「うわぁ、こんなにたくさんの調味料があればなんだって……これはなんですか?」
「ん? ああ、醤油と味噌、それからみりんに料理酒だよ」
「しょうゆ? みそ? この辺りじゃ見かけない調味料ですよね」
「輸入品だよ。後、そっちにぬか床がある」
「ぬかどことは?」
異世界に転生した俺だったが、食が余りにも日本人だった。
しかも古き良き日本人で、こっちには無い醤油や味噌を輸入するほど。
正直、日本らしい調味料が存在していた時には歓喜した。
それ以来か、今までは喜んで食べていた洋食よりも、和食のありがたみを噛み締めるようになっていた。
(ぬか漬けって、意外に美味いんだよな……あれ、聞いてない?)
知らずに視線を外すと、涎を垂らし掛けていた。
しかしラウリィは再び火と睨み合っている。
完全にスルーされているようで、何だか悲しくなってしまう。
「ラウリィ、俺はなに手伝えばいい?」
「大丈夫ですよ、ヒジリさん。休んでいてください」
「や、休む? うわぁ、社畜の俺にそれ言うんだ……付け合わせでも作るか」
俺は社畜だった頃に習慣化されてしまった慣れを発動させる。
ラウリィの邪魔にならない程度で付け合わせのサラダでも作ろうと思った。
包丁をインベントリから取り出すと、野菜を切り裂き、小鉢に野菜を盛り付ける。
「とりあえず彩りは良しとして……」
「できました!」
ラウリィは鍋の調子が良く、無事に完成したことを伝える。
一体どんな仕上がりになったのか。
途中から全く見ていなかったけれど、鍋の中をこっそり覗くと、如何やらシチューのようだ。
(あっ、ビーフシチューだ)
結局でき上がったものはシンプルなビーフシチューに落ち着いた。
ホッと一安心すると、器にラウリィがよそう。
赤ワインの良い香りとトロトロに煮えた肉。どちらも食欲をそそらせる。
「美味しそうだね」
「どうぞ、食べてみてください」
「それじゃあ貰うね。いただきます」
俺はよそってもらった器を凝視。
スプーンを手にしてビーフシチューを掬い上げると、口の中へと運ぶ。
下に乗せる。すると旨味が一気に広がった。
「うわぁ! (牛の油、ヤバッ……)」
俺の体の中に大量の油が投入される。
けれどそれがしつこくない上に、甘みがあって美味い。
気が付くとスプーンを何度も器に運び、俺はビーフシチューを食べ続けていた。
「ヒジリさん、そんなに急がなくても大丈夫ですよ」
「あむっあむっあむっあむっ……(美味しい。嫌いじゃない)」
俺はラウリィの料理の腕に感嘆となる。
それと同時に本当に貴族なのか怪しくなる。
それだけ家庭的な貴族の少女に、俺は覚えが無いのだった。
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