1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

671.赤斜ギルドマスター登場

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 何やら険しい顔で、レジェのことを叱り付ける男性が居た。
 色黒スキンヘッドの男性は、眉間に皺を寄せている。
 随分と鍛え上げているのか、筋肉が肥大化していた。
 着ている服がパツパツに膨れ上がると、今にも破けてしまいそう。

 それ程までに鍛え上げているのは、きっと冒険者だからだろう。
 けれど何やら様子も風貌も異なっている。
 冒険者らしくない。むしろ裏方の格好をしていて、明らかにその青い革製の服は、制服だった。

「レジェ、これはどうなっているんだ」
「すみません、ギルドマスター」

 レジェのことを男性は問いただす。
 ただ謝ることしかできないレジェが不憫だ。
 けれどルカは助け船を出す気はなく、むしろ立ち尽くしていた。

「ギルドマスター?」

 レジェは男性のことをそう呼んだ。
 “ギルドマスター”。明らかに強そう。
 おまけに権力も握っていそうで、相手にするのは厄介だ。

「謝られても分からんだろ。一体なにがあったんだ」
「それは……」
「どうしてジョーグが倒れている。一体なにをしたんだ」

 ルカは「やっぱりか」と思った。
 何に大騒ぎしているのかと考えるまでも無かった。
 床に突っ伏したジョーグの姿を見て、只事ではないと感じたのだろう。
 ましてや相手はBランク冒険者。おまけにこの町でも幅を利かせている商人の息子なのだから、冒険者ギルドとしても非常に難しい相手なのだ。

「他の冒険者に事情を聞いて回ったぞ。またジョーグに言い寄られたらしいな」
「言い寄られた訳では……」

 確実に言い寄られていた。しつこいナンパだった。
 ルカも周りの冒険者も、同僚の受付嬢達も全員見ていた。
 嘘を付く必要は無い。周りの立場何て気にしなくてもいい。

「レジェ、お前はいつもそうだな」
「はぃ……」

 ギルドマスターの男性は人格否定の様な口振りをする。
 レジェは落ち込んでしまい、自分のせいだと落とし込む。
 その姿はもはや不憫ではない。虐めの領域だ。

「可哀そうだね」

 今回の一件に関わってしまったことを、ルカは後悔した。
 こんな光景を目の前で見ることになるなんて、正直気分が悪い。
 これ以上この一件に関わるのも癪だ。
 ルカはそう決めると、何食わぬ顔で出ていく。

「行こう。早くしないと、密猟の瞬間を押さえられない」

 ナタリーからのお願いを一種の口実に使う。
 ルカは冒険者ギルドから退散しようと、とりあえず受付カウンターの奥から姿を現わす。
 もちろん魔術を使って姿を消している。流石にバレる筈がない。

「ん?」

 ギルドマスターの男性は、レジェを叱り付けるのを止めた。
 代わりに神経を研ぎ澄まし、違和感を探っている。
 この一瞬で何が起きたのか。他の冒険者には分からなかったが、ギルドマスターの男性は、シッカリと違和感を確認していた。

「今、埃が舞ったな。そこに誰かいるのか?」

 ギルドマスターの男性は、ルカの方をジッと睨んだ。
 そこには誰も居ないのだが、目には見えないだけ。
 ルカはその場で足を止めると、ニヤッと笑みを浮かべた。

(驚いたね。まさか気が付くなんて……)

 明らかに偶然の産物なのは否めない。
 けれどギルドマスターの男性は、相当目が良いらしい。
 ルカが歩いた瞬間、床に落ちていた埃が少しだけ舞う。
 宙に浮いた瞬間を見逃すことは無く、追及まで持ち込んだ。

「わざわざ姿を隠す必要がある。つまり、なにかよからぬことを企んでいる訳だな」

 ギルドマスターの男性は、何か勘違いをしていた。
 一般的な意見で、姿を隠すのはよからぬことを企んでいる。
 きっとそうに違いないと、ルカに一歩、歩みを寄せる。

(別に無いんだけどね。ただ、関わり合いたくないだけで……)

 ルカとしてはただ面倒事を避けたいだけ。
 これ以上は時間的にも、色々と都合が悪い。
 関わり合いを持ちたくないから避けただけなのだが、そうも言っていられない。

「恐らくは魔術師か、それとも暗殺者か……どっちでもいい。正体を見せて貰うぞ」

 ギルドマスターの男性は、ルカの正体を大まかに見破っていた。
 姿を消すなんて芸当ができるのは、魔術師か、それとも特別な魔導具を持った人だけだからだ。

(そんなの見せる必要ないんだけど)

 ルカとしては顔なんて見せる気もない。つまり正体を明かす予定はない。
 だからこそここはスルーしようとするのだが、想定外のことが起きた。

「そこにいる方、身分は私が保証します。ですので、行ってください」

 レジェが声を張り上げたのだ。
 まさかこの状況で絶対に言うべきではない、自分に注意を集める行為。
 ルカは固まってしまうと、「おいおい」と呆れる。
 何せそれではまるで、ルカの存在を明らかにしているようなものだった。

「レジェ、お前なにを言って」
「一度は私を助けてくれました。でも二回目は大丈夫です。ですので、行ってください」

 レジェはついに泣き出してしまった。
 渾身の想いで言葉を吐き出したのだろう。
 助けられたことへの感情がとめどなく溢れると、場は騒然となった。
 流石に美少女の涙は美し過ぎる。

「はぁー、レジェさ。そう言うのは、もっとカッコいい場面で言うべきだよ」
「なっ!? いつからそこに」
「ずっといたよ。それで、レジェを泣かせて、私に姿を現わせたんだ。ちゃーと、対価は払って貰うよ?」

 ルカは姿を現わした。もっとも、姿を現わすしかなかった。
 レジェに悪気はないのだろうが、あのまま逃げてしまうと、後で自分自身が悪者になってしまう。そんな予感がしてしまい、ルカは赤壱島の所有者として、ここは乗ることにした。

 魔術を解き、ギルドマスターの男性の前に姿を現わす。
 とんでもなく驚いていたが、ルカは殺気を放ちまくった。
 男性を本気で殺す気持ちでぶつけた殺気は、筋肉の鎧を貫通し、ギルドマスターの男性自身に降り注がれた。
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