1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

671.ギルドマスターにも気に入られ

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 ルカは殺気を飛ばした。
 ギルドマスターの男性は、それを全身で受け止める。
 流石にギルドマスターともなれば、並の冒険者とは異なる。
 全力ではないにしろ、ルカの殺気にも多少の耐性があった。

「ぐはっ、この殺気は……はっ!」

 今までに味わったことのない殺気に、ギルドマスターの男性は慄く。
 苦悶の表情を浮かべ、ダメージを負った。
 まさかギルドマスターでも? とルカは不安になる中、ギルドマスターの男性は筋肉を収縮膨張を披露し、無理矢理殺気を打ち払う。

「おお、力付くで殺気を壊したね」
「はぁはぁはぁはぁ……全く、お前は何者だ。これだけの殺気を放てる魔術師なんぞ、聞いたことがない」

 驚いた。殺気を力で打ち払うなんて。
 珍しい行動に呆気に取られたルカだが、その分ギルドマスターの男性も苦しそう。
 ここまでの殺気を放つ魔術師は見たことがないと、人生に刻み付けられた。

「褒めてくれてありがとう。それじゃあ」
「待てっ、まだ話は終わっていないぞ!」

 ルカはこのタイミングで逃げ出そうとした。
 けれどギルドマスターの男性に腕を掴まれる。
 そう簡単に逃がしてはくれないらしい。

「お前が、ジョーグを倒したのか?」
「やっぱりその話か……」
「やっぱりだと? つまりは認めると言うことだな」

 ギルドマスターの男性が聞きたいのはそのことらしい。
 確かに床に突っ伏しているジョーグの姿を見れば、言いたいことも分かる。
 赤斜のギルドマスターとして、事態を把握することは必要事項だ。

「そうだよ。私がやった」
「何故そんな真似をした」
「事情は聞いているんだよね? 順番を守っていた私を抜いて、それを注意したら難癖を付けて来たんだよ」

 ルカは自分がしたことを認める。
 ただし、自分が加害者ではないと、あくまでも被害者だと訴える。
 事実、ジョーグのしてきた行為が原因で招いた事故であり、その一部始終を見ていた人は多いから、ジョーグが発端だと認知している。

「おまけに、決闘を挑まれたんだ。だから全部ジョーグが悪い。私はそれを飲んで、真っ当に打ちのめしただけだからね。罪にも罰にもならないよ」

 ルカは高を括っていた。
 結局は全てジョーグが招いた末路だ。
 ルカを怒らせたこと。それが原因で精神はボロボロに削られると、体は治っても、立ち直るまでには時間が掛かる。

 だからと言って、ルカに罪の意識はない。
 もちろん罪何て罰何て発生しない。
 ルカは決闘と言う名目を上手く利用しただけに過ぎない。

「ってことで、私には関係無いよ」
「……関係がないだと?」

 ルカはこの件に大きくかかわっている。
 それでもルカには関係が無いことだと割り切る。
 ギルドマスターの男性は、ルカの言い分に、怪訝な表情を浮かべた。

「ごめんね。関係が無い訳じゃないかもしれないけど、少なくとも私は悪くはない。だからこれ以上この一件に関わる気はない。それじゃあね」

 ルカは自分の非を認めた。少しだけ訂正はしたものの、やはり自分は関係がない。
 全力で否定しに掛かると、言いたいことだけ言い切る。
 踵を返し、これ以上は無用だと、冒険者ギルドを本気で後にしようとした。
 これで何回目だろうか、数えるのも億劫になる。

「おい、待て魔術師の嬢ちゃん」
「まだなにかあるの?」

 ギルドマスターの男性は、ルカを再度引き止める。
 それを受け、ルカは溜息を付きたくなった。
 この期に及んでまだ私に用があるのかと、ルカはギルドマスターの男性に視線を飛ばした。

「……」
「ん?」
「嬢ちゃん……アンタ、凄ぇことやってくれたな。いや大したもんだ、スッキリしたぜ!」

 無言の圧力をルカに飛ばした。
 どんよりとした重たい空気をルカは無心で跳ね除ける。
 一体何を言われるのか。何をされるのか。そう思った瞬間、ギルドマスターの男性は、突然笑顔になってルカのことを褒め称えた。

「な、なに?」
「いやよ、ジョーグは一応Bランク冒険者の実力はあるが、それでも下の下だ。それでもBランクになれたのはな、一応身体能力自体は高いが、本当は雇っていた仲間のおかげだったんだぞ」
「はぁ?」

 ジョーグの正体。それは本物ではなかった。
 一応Bランク冒険者並みの身体能力は持っていたらしいが、それでも下の下。つまりはギリギリの及第点。

 おまけにその実力を伸ばそうともしなかった。
 ましてやBランクに上がれた真の理由は、雇っていた仲間の強さが由来。
 つまり、ジョーグ自体の実力は低く、それを知らずに浮足立っていたわけだ。

 とは言えルカには興味が無い。
 にもかかわらず、ギルドマスターの男性は、更に続けた。

「おまけに親がこの町で幅を利かせている商人の息子ってことを理由に、普段から酷い有様だったんだぜ」
「酷い有様?」
「ああ。親を理由に他の冒険者に絡んだり、ナンパだなんだ、手柄を横取りする卑劣さも持ち合わせていたんでな。冒険者資格の剥奪も考えたが、一応は大商人の息子だ。なにをされるか分かったもんじゃねぇ」

 ジョーグは相当嫌われていたらしい。
 ギルドマスターにここまで言わせるんだ。相当な悪行を繰り広げていたのだ。
 話を聞いていた他の冒険者や、受付嬢を始めとしたギルド職員達も頷いている。
 よっぽどな人間性に、流石にルカも幻滅した。

「そんなジョーグを、アンタはぶちのめしてくれた。いや、スッキリしたぜ」
「別に私は挑まれた決闘に応えただけで……」
「それでいいんだ。ジョーグには、いいお灸になったんじゃねぇか?」
「そんなものかな?」

 正直、どっちに転ぶかは正確次第。
 この期に罪を認めて更生するか、それともより一層難儀になるか。
 どちらにせよ、ルカには関係がない。本当に関係のない話だ。

「はぁ。また面倒なことになった……」
「面倒? それはそうと、いや、アンタ面白いな。気に入った、是非うちの冒険者ギルドに入らないか?」
「入らないけど?」
「そうか、そうかそうか。いや、面白いな、アンタはよ!」

 何故か気に入られてしまった。
 どんよりと淀んでいた空気が盛り返す。
 急に明るく活気ある空気感に変わったものの、ルカは状況の変化に些か乗り遅れる。

 何せルカは別になにかしたわけではない。
 成り行きが招いた結果だった。
 そのせいかあまり親近感が無く、ずっと首を捻っていた。
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