1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

701.大量の資料の山

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 ルカはゴードとリュマミールに案内された。
 通された奥の部屋に入ると、そこは散らかっている。

「うわぁ、コレは……」

 ルカは絶句した。
 部屋の中には、床に足の踏み場もない程、大量の書類で埋め尽くされている。
 一体この数時間で何があったのか。
 ルカは落ちていた紙を一枚拾い上げる。

「冒険者による希少モンスターの密猟記録」

 希少モンスターの密猟記録。
 そう読んだだけで、冒険者が加担していることは明らか。
 証拠と言う点を生み出すと、ルカは首を捻る。
 まさかとは思うが、この部屋に散らばった書類の山、紙束が全部……なんて、信じたくはない。

「もしかして、ここにある書類は全部……」
「ご名答。全て今回の密漁に関する報告書だよ」

 リュマミールはルカの想像を確信に変えた。
 大量の紙の正体は、全て報告書。
 おまけに今回の密猟に関する報告書だと知ると、平然としてはいられない。

「あはは、笑ってしまうね」

 ルカは珍しく笑ってしまった。寧ろ引いていた。
 想像を絶する量の密猟が執り行われていた。
 それだけで苦笑いを浮かべられると、ゴードはルカをソファーに案内する。

「とりあえず座れよ」
「そうだね。失礼して……おっと」

 ソファーに座った瞬間、書類の山が崩れる。
 サッと魔術も魔法も使わずに手で押さえた。
 反応の速さに驚愕したのか、ゴードとリュマミールは凝視する。

「なに?」
「いや、なんでもない。それよりだ、お互いに情報の交換をするぞ」

 ゴードはそう言うと、左右を見回す。
 ルカは目で追うなんてバカはしない。
 何となく言いたいことを想像すると、鼻で笑った。

「見ての通りだ。ここにある書類の山は全て、リュマの言う通り、今回の密猟に関する証言や報告をまとめたものだ」

 部屋に敷き詰められた書類の正体。
 その全てが今回の密猟に関係する証言や報告書。
 呆気に取られると、ルカは唖然とした。

「これが全部……ねぇ」
「驚くのも無理はないよ。だけどそれが真実、笑えないよね」

 リュマミールは島長として悔しそうだ。
 この状況を今まで見過ごしていたなんて、信じたくもない。
 悔しさが滲み出ると、ギュッと拳を握り、爪で皮膚を引っ掻いて、少しだけ赤を浮かべた。

「あはは……確かにね。笑えない」

 ルカは嘲笑するように笑っていた。
 それもその筈、これだけの密猟に気が付かないなんて、一体どれだけの根回しがされていたのか。
 相手の正体がより一層明確化されると、ルカはゴードとリュマミールに訊ねた。

「証言があるってことは、実行犯は?」
「ほとんどが冒険者だ。しかも金に飢えた奴等ばかりだな」

 これも想像は難くない。冒険者が密猟に加担していることは知っていた。
 シルドン達がそのいい例で、金銭目的で犯罪を働く。
 どんな世界でもよくある話で、珍しくも何ともない。ただ一つ、冒険者の品位を下げる以外は——

「そこまで分かっているんだね。それじゃあ、実行犯は既に取り押さえているのかな?」
「まぁな」

 ゴードは何故か歯切れが悪い。
 取り押さえているのなら、後は真実を追求して尋問すればいい。
 昔なら拷問もあったが、今は如何なのか。興味は無いが、この反応。上手く行っていないらしい。

「上手く行っていないんだね」
「そうだな。誰も口を割ろうとしねぇ」

 冒険者は何人も取り押さえているらしい。
 しかし口振りから察するに、上手く尋問が進んでいない。
 誰一人として口を割らない。そこまで冒険者は義理堅いのか、否、恐怖があるのだろう。

「なにを恐れているんだろうな」
「なにをって、得体のしれない恐怖とか?」
「そんな漠然としたもんじゃねぇよ。裏で誰が糸を引いていたのか、それを見つけ出さねぇと、また密猟は起こるぞ!」

 ルカの漠然とした問い掛けに、ゴードは真面目にキレた。
 曖昧な答えなんて要らない。抽象的なものは無い。
 今必要なのは、裏で糸を引いていた諸悪の根源。犯罪を手引きしたリーダーの存在だ。

「それなら尚更だね」
「口を割るしか無ぇってことだろ、それができたら苦労しないんだよ」

 ゴードは既に分かり切っていた。
 尋問を遂行して、少しでも情報を引き出す。
 それしか手掛かりが無いのだが、手を下せない理由があった。

「もしかして、非人道的だからかな?」
「なにを想像してるんだ?」
「ルカ君。確かに尋問や拷問の類は世間体などを考えても注意が必要だよ。けれどね、今回の場合は少し違うんだ」
「少し違う?」

 一体何が違うのだろうか?
 ルカはてっきり、尋問や拷問の類が非人道的として、世間からの目を気にしたのだと思った。
 けれど如何にも違うらしく、もっと別の角度に問題があるらしい。

「そうだよ。口を割らせたいけれど、口を割らせるまでに行かないんだ」
「口を割らせる前に……つまり、足りないってことかな?」
「正解だよ」

 リュマミールはチラッとゴードを見た。
 ルカも釣られて視線を配ると、ゴードは無言のまま。
 けれど表情が険しい。口を割らせる前に、一体何が足りないのか?
 ルカはまさかと思ったが、そんな筈は無いと思った。

「一体なにが足りないのかな?」
「口を割らせる証拠が無いんだよ。物的証拠がな!」

 ゴードは苛立っていた。
 靴裏で床をダッダッダッと行儀が悪い。
 地団駄を続けると、ルカは呆れてしまうのだった。
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