1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

703.何を隠しているのかな?

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「はぁはぁはぁはぁ……取り急ぎ連絡はして置いた、至急回収に向かわせた」
「お疲れ、ゴード」
「うるせぇよ、リュマ。そんなことよりよ……」

 ゴードは息を切らして戻って来た。
 久々に焦ったのか、全身から汗を流している。
 そんな友人相手にサラッと流すリュマミールにゴードは眉間に皺を寄せたが、その視線はすぐにルカへと向けられた。

「アンタ、本当にヤバい奴だな」
「別に私には関係にないことだよ」
「関係がない……か。クソッ、本当訳が分からねぇ」

 ゴードはルカを睨み付けていた。失望にも近い。
 ルカは期待されても無駄だと思った。
 他人の期待に応えるのはその時々の気分。誰が死のうが、直接の原因で無ければ、ルカは如何だってよかった。全てを関係が無いと、あしらってしまう程に。

「はっ、本当なんなんだよ」
「さぁね、なんでもいいよ」

 ルカのことを理解しようとするが、難しくてできない。
 もちろんルカのことを理解しようとしてはいけない。
 ルカは狂ってはいない……が、別の方向におかしい。
 それが千年もの間生き続けて来たルカなりの答えだ。

「それはそうと、この子がいるんだ。物的証拠には充分……だよね?」

 ルカはそう語り掛ける。
 フェンリルの頭を撫でると、柔らかい蒼白色の毛並みが整う。
 パラパラと氷の破片が宙を舞うと、少しだけ冷気が走る。

「物的証拠か。ただ証人にはならないだろ」
「証魔物だけどね。これで口が利けたら、より便利だっただろうけど……」

 ゴードとリュマミールは嘆いた。
 あまりにも自分勝手な都合で、フェンリルにとっては腹立たしい。
 モンスターの言葉が解る人間は、相当少ない。

 もちろんフェンリルは本当喋れる。
 けれど敢えて人間の言葉を発さない。
ゴードとリュマミールにある種の違和感を覚えると、信用できないでいた。

「だけど、これで万事解決……は、できないにしてもだよ。事態の収拾は、ある程度図れるんじゃないかな?」

 ルカはポツリと呟いた。
 フェンリルが居る。シルドン達の行いも見過ごせない。
 足りない部分はまだあるけれど、ある程度の鎮圧はできそうな雰囲気だった。

「ああ、それがな」
「ん? なにかな、その含みを持たせた口調は」

 ゴードは面目無さそうにしていた。
 声に覇気が無く、寧ろ弱々しい。
 今にも吹けば消えてしまいそうな程、小さな火になっている。

「リュマミール。島長なら、どうにかできるよね?」
「どうしたいのは山々だけど……ねぇ」

 物は簡単に解決する訳でもない。
 明らかにゴードとリュマミールは迷っていた。
 もちろんルカには知ったことではない。魔法使いとしての傲慢さを見せつけた。

「これだけ証拠が揃っているんだよ?」
「「……」」

 ルカは少しだけ声に張りを持たせた。
 重く重厚感のある一撃が、ゴードとリュマミールを襲った。
 無言を貫くと、下を向いて俯く。大の大人が、魔術師の卵一人に気圧されていた。

「ん? 難しいのかな?」

 ルカは優しく訊ねた。
 しかし口調に刃を感じたのは、ゴードとリュマミールは慄く。

「怯えているね。どうしてかな?」

 ルカはゴードとリュマミールに問う。
 何やら裏がありそう、それこそ疚しい部分があるとは違う。
 自分達の行いの正しさを貫く上で、障害になる何かがそこにはあった。

「この子がいる。それにシルドン達の行い。決定的な証拠は揃っている筈だよ?」
「まぁ、そうなんだがよ」
「ルカ君。事態はそう簡単に解決するものじゃないんだよ」
「簡単に解決しない? ああ、なるほどね」

 それなりに高い地位立ち、島の命運を任されている立場の人間は違う。
 ルカはふとそう思い、呆れてしまいそうになる。

「それじゃあ、この事態の収拾は、まだ図れないってことかな?」
「そうなるな」
「そうだね。少なくとも、現時点では難しいかな」

 これだけの情報が集まっているのにまだ足りない。
 証言だけでは難しいと言うことだろうか?
 否、そんな簡単な話ではない。

「おかしいね」
「「!?」」

 ルカの言葉は冷たいナイフのようだった。
 鋭い切っ先が、ゴードとリュマミールの喉元に触れる。
 実際に何も無い。けれどルカと言う存在だけが、そこに君臨して、場を制する。

「ゴードもリュマミールも、なにか隠しているね。私に隠し事は無駄だよ、シッカリとその口で話して欲しいな」

 ルカはゴードとリュマミールに問い掛けた。
 ここまでの話の流れに矛盾点は存在しなかった。
 けれど違和感を覚えたのは、ルカの経験値が豊富だからだろう。
 上手く包み隠せるような生易しい考えは止めた方がいい。この瞬間、圧力が空気を蹂躙した。

「なに言ってるんだ、アンタは」
「……」

 ゴードは震えていた。冒険者ギルドのギルドマスターの癖に震えていた。
 一方のリュマミールは何も発さない。
 この場は耐え凌ぐことを選んだものの、ルカは変わらない。

「いい加減にして欲しいな。こっちは朝から面倒ごとに巻き込まれているんだ。おまけにこの島で面倒事を起こされても最終的に困るのは私だよ。無駄な足搔きは止めて、早く本当のことを教えて欲しいな」

 ルカはグサリとゴードとリュマミールの喉を刺す。
 発狂することもできない。圧倒的な存在感は恐怖を超える。
 ルカを前に、ゴードとリュマミールは何もできず、ただの傀儡としてその口を割るのだった。
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