1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

704.狂気じみた稀有

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 ルカによって場は完全に支配されていた。
 ゴードもリュマミールもルカの領域の中。
 もはや逃げることは出来ないので、仕方が無しに口を割る。

「そもそもの情報提供元はジョーグだ」
「ジョーグ? 私がボコした奴だね」

 ジョーグ。自称Bランク冒険者。
 実際の所は、複数人の有力冒険者とパーティーを組み成り上がった。
 こんなことを言うのは何だが、実力不足。
 まだシルドンの方が強く、ルカから見れば、雑魚だった。

「ただの自信家で調子のいい冒険者、じゃなかった訳だね」

 ルカの目にはそう見えていた。
 流石に人間性を否定する気はないが、好みはある。
 正直、ルカにはジョーグとの相性は悪い。
 何よりもルカを苛立たせた一人でもあるのだから、仕方がない。

「ってことは、やっぱり」

 ルカは何となく想像していた。
 きっとあの部分の筈だと、推測を膨らませる。
 するとまさにで、ゴードが苦虫を噛む。

「アンタは知らないかもしれないけどよ、ジョーグの奴は、アレでもこの町で昔から商人を生業にしている胴元の息子だ」
「知ってるよ、大商人の息子だって、自分で名乗っていたからね」

 大商人の息子。その立場だけで、大抵のことは済ましてきた。
 自分の都合のいいように周囲を利用してあしらった。
 あの性格だ。今までに権威を利用して踏み潰して来た人間は多い。
 ジョーグの厄介な所は、まさしくそこにあった。

「どうせ、その商人が、ジョーグのことを庇っているんだよね?」

 ルカはゴードとリュマミールの先を読んだ。
 これも定番なのだが、ジョーグの利権を大事にしている筈。
 何かあれば商人として、取引を持ち掛けようと魂胆を滲ませている所だ。

「いや、そこじゃねぇ」
「ん?」
「確かにルカ君の言うことは当たっているよ。ジョーグ君、彼は大商人である父親のバイトンに匿われている。けどね、問題はここからなんだよ」

 商人の名前はバイドンと言うらしい。
 ジョーにバイト。全部顎に関係している。

 ルカは如何でもいいことを想像した。
 けれどそんなこと関係ない。
 問題があるというのは何だろうか? ルカはリュマミールに訊ねた。

「取引を持ち掛けて来たんだ」
「取引? 息子から手を引けってことかな?」

 取引とは息子から手を引けと言うことだろう。
 当たり前だ。下手に息子に危害を加えれば、この町から去る。
 あらゆる生業を手放せば、赤斜の治安は悪化するだろう。
 脅迫には充分過ぎる手札で、リュマミールも黙るしかない。

「いや、そうじゃない。とは言え、息子は関係しているね」

 何が違うのだろうか?
 ルカはリュマミールの含みしかない口調に違和感を覚えた。

「息子を治せる・・・医者を連れて来い・・・・・・・・ってことらしい」

 リュマミールは顔を手のひらで覆った。
 「そんなの無理だ」と呟いている。
 “治せる医者”? しかも“息子”を? 話が見えない。否、忘れている。

「ん?」

 一体何の話をしているんだろうか。
 ルカはポカンとしてしまう中、ジョーグが怪我でもしたのか考える。
 記憶を手繰り寄せると、「もしかして?」と呟いた。

「私がデコピンして前頭葉を破壊したこと、怒ってるのかな?」

 あまりにも規格外にヤバいことを口にした。
 ルカはジョーグにデコピンを繰り出した。
 あの時は意識を狩り取る程度だったけど、時間が経てば脳が麻痺する。
 少しは懲りるだろうと思い、苛立っていたこともあってか、ほんの少しだけ力を加えてしまった。

 その結果、あの場でのルカは黙っていた。
 けれど相当大変なことをしていた、その自覚はある。
 友達にするような軽いじゃれ合いとは違う。ルカのデコピンが世界に反発して影響を与えると、ジョーグの前頭葉を粉々に破壊して廃人化させてしまった。

「おいおい、なに言ってるんだ、アンタ」
「いや、あの時は放置していたよ。ちゃんと治してあげればよかったね、うん」

 ルカは珍しく笑っていた。
 しかし傍から見ればソレは狂気でしかない。
 魔法使いは元々狂っている。人を殺すことで強くなる。
 だからサイコパスがほとんどなのだが、ルカはその中で常軌を逸していた。
 独自のルールを敷いている、あまりにも稀有な例だ。

「でもね、私は絡まれただけだよ。被害者は私だ」
「いい加減なこと言ってんじゃねぇぞ、アンタ」
「ゴードもリュマミールも見ていたよね? 私が被害者なこと。実際、ジョーグの横暴な態度には嫌気が差していた筈だよ?」

 ルカは棚に上げ始めた。ゴードもリュマミールもジョーグの横暴過ぎる行動には嫌気が差していた。
 実際、ジョーグを懲らしめた際にはとても感謝されていた。
 それが一変している。自分達のご都合主義を優先し、本当の被害者を蔑ろにする態度が気に食わない。

「それとこれとは別だ。流石に限度があった」
「バイトンは相当厄介ない相手だよ」
「知らないね。私には関係ない」

 バイトンがどれだけ厄介な相手なのか。
 そんなこと、ルカには関係がない。
 ルカ自身、”巻き込むな”と言いた気で、むっきらぼうな答えを吐き出す。

「知らないって、アンタな!」
「おっと」

 ゴードは未だに踏み込もうとせず、ましてや距離を取り知らぬ存ぜぬを決めようとするルカに苛立った。
 グッと体を前に倒すと、服を掴み掛かった。

「アンタくらいの実力者なら、もっと穏便に解決できたって話だろ」
「……ははっ」
「なにがおかしいんだ」

 ゴードはどれだけルカのことを買い被っているのか。
 笑ってしまうと、ルカはゴードのことを凝視する。
 一切視線が泳ぐことがない。ただ真っ直ぐに見つめている。

「それは違うよ」
「「はっ?」」

 ルカへ衝動的に掴み掛かったゴードと、そんなゴードを止めようとするリュマミール。
 二人を眼前に構えたルカだったが、その態度は決して変わらない。
 寧ろ如何しようもない無情な気配が漂う。

「確かに、私もやり過ぎているとは思う……けどね、それは間違いだよ」

 ルカは自分の非を認めた。
その上で、ゴードとリュマミーㇽの一般論に蓋をする。

「私の力に世界が耐えられない、ただそれだけだよ」

 ルカの言葉には“重み”があった。
 決して嘘は付いていない。寧ろ真実がそこにある。
 透通すように空虚な瞳はゴードとリュマミールを唖然とさせると、あらゆる感情を取り払うのだった。
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