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フェンリル編
714.君のようには慣れないよ
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「やっと終わった」
ルカはようやく解放された。
両腕を伸ばして自由を噛み締める。
緊張は最初からしていないが、少しだけ殺気を放ってしまった。
そのせいか、寧ろ気持ちがよい程、心が清々しい。
「さてと、後のことは……ん?」
これ以上、ルカがするべきことは無い。
後はリュマミールが島長として頑張ってくれる筈。
勝手に期待するも、視線の先のリュマミールの様子はおかしい。
「リュマミール?」
「……」
先に屋敷の外に出ていたリュマミール。
その背中は空虚そのものだった。
無言で立ち尽くすと、考え事に耽っている。
「おーい、聞こえてるかい?」
「はっ!? なんだい、ルカ君?」
ルカはリュマミールに声を掛けた。
けれど聞こえていないようだった。
少し小突いてみるべきか? そう思ったのも束の間で、リュマミールの意識が戻る。
「どうしたのかな? 様子が変だよ」
「漠然としているね、ルカ君」
「それなら、少し言葉を変えようかな。失望した顔と、怒りを孕んだ目を宿すのは、止めて欲しいな。私には関係がないんだよ」
リュマミールの背中は空虚そのもの。
心が空っぽになっているのは、失望が原因に違いない。
けれどその瞳に宿っているのは、極端な怒りだ。
それがバイトンに向けられているとは思えないのは、恐らく自分に対して惨めだからだろう。
「あまり自分のことを咎めるのは、止めた方がいいよ。そんなことをしても、なにも生まれないからね」
結局の所、自分を咎めて戒めるのは、落ち度に納得がしているからだ。
逆に言えば、自分に対する非が分かっていない場合、ほとんど意味が無い。
心を囚われるだけで、反省点を見つけられない限り、何かを生み出すことは叶わない。
「ルカ君は大人だね。本当に学生かい?」
「あはは、詮索は無用だよ。それに、私が学生じゃないとしても、あくまでも意識の違いだよ。気にも留める必要は無いかな」
ルカは遠回しで、詮索無用と阻止した。
リュマミールは含んだ笑みを浮かべると、虚ろが取り巻いた。
完全にヤバい奴だと思われたが、そんなこと、ルカは百も承知だった。
「そんなことより、リュマミール。これからどうするんだい?」
ルカはリュマミールに訊ねた。
少しだけ口調をリュマミールに寄せたのは、単純な嫌がらせではない。
寧ろ客観的に捉えさせることで、状況の改善を図ろうとした。
「そうだね。どうしようか」
けれど何も生まれない。リュマミールの目には怒りがあるだけ。
沸々と込み上がる熱が、リュマミールの腸を煮え返らせる。
その手は懐に伸びており、ルカは「ふっ」と笑った。
「止めた方がいいよ。強引な手段を使ったとして、それでバイトンを殺せるとは限らないからね」
「!?」
リュマミールは全て見透かされていた。
ルカはリュマミールが懐に手を伸ばした瞬間、何やら細身で鋭利な刃物を手にするのを肌間で察した。
もちろん見えている訳ではない。経験則が導き出した答えが簡単に当たってしまう。
「ルカ君、君は一体」
「どうでもいいよ。それより、島長なら分かる筈だよ。それが“正しい正義”か“正しくない正義”かどうか。分からない奴は、これ以上踏み込むべきじゃない。どうかな?」
ルカの言葉はリュマミールに深く刺さった。
心を突き刺し、流血騒動を起こすと、気分を害される。
完全にブーメラン発言で、リュマミールの心を抉る。
狂気に囚われかけていたのは、もしかしなくても自分だと言わしめる。
「あはは、君は凄いね」
「凄くはないよ。それに、見えないのかな?」
「えっ?」
ルカは覇気の無い言葉を完全にあしらう。
代わりに、まだ気が付いていないリュマミールの愚行。
それを正すために少しだけヒントを与えた。
「ほら見てよ。屋敷の二階、こっちを見張っているよ」
「二階?」
「動かない。目を端に移動させるか、気配で察して欲しいな」
ルカでさえ、この状況で魔術も魔法も使っていない。
完全に意識下だけで、状況を把握している。
もちろん、リュマミールにはできない芸当だ。
バイトン邸。二階では、ルカ達のことを常に監視し続ける、狙撃手の姿があった。
「アレは一体」
「ずっと私達を見張っていたよ。この屋敷に来る前からね」
狙撃手はまだしも、暗殺者はずっと見張っていた。
ルカ達の動向を窺っていた上に、いつでも手を出せるように用意していた。
そのせいだろうか? 下手な真似はあまりできない。
ルカを除いての話だが、仕方がなかった。
「ルカ君は気が付いていたのかい?」
「もちろんだよ。下手な事をすれば、即座に攻撃に転じる。優秀な狙撃手と暗殺者だよ」
ルカは最初から気が付いていた。
気が付いた上で、完全に見逃してあげていた。
何せルカの敵ではない。寧ろ、ルカを攻撃するなんてバカ気た行為だ。
「ルカ君、君のようには慣れないね」
「なる必要は無いよ。それより、相手は強敵だ。リュマミール、島長としての正念場だよ」
リュマミールは決してルカの様にはなれない。
そんなこともちろん分かり切っている。
けれどルカは傷付いているリュマミールに対し、正念場だと煽った。
「あはは、言ってくれるね。でも、そうだね。僕なりの正義を貫く……か。考えてみるよ」
「考えてみての前に、目の前を変えることが最優先だよ」
リュマミールの正義何て如何だっていい。
今やるべきことは、目の前の状況を変えることだ。
ルカはリュマミールが忘れないようにと釘を刺し、バイトンの屋敷から立ち去った。
ルカはようやく解放された。
両腕を伸ばして自由を噛み締める。
緊張は最初からしていないが、少しだけ殺気を放ってしまった。
そのせいか、寧ろ気持ちがよい程、心が清々しい。
「さてと、後のことは……ん?」
これ以上、ルカがするべきことは無い。
後はリュマミールが島長として頑張ってくれる筈。
勝手に期待するも、視線の先のリュマミールの様子はおかしい。
「リュマミール?」
「……」
先に屋敷の外に出ていたリュマミール。
その背中は空虚そのものだった。
無言で立ち尽くすと、考え事に耽っている。
「おーい、聞こえてるかい?」
「はっ!? なんだい、ルカ君?」
ルカはリュマミールに声を掛けた。
けれど聞こえていないようだった。
少し小突いてみるべきか? そう思ったのも束の間で、リュマミールの意識が戻る。
「どうしたのかな? 様子が変だよ」
「漠然としているね、ルカ君」
「それなら、少し言葉を変えようかな。失望した顔と、怒りを孕んだ目を宿すのは、止めて欲しいな。私には関係がないんだよ」
リュマミールの背中は空虚そのもの。
心が空っぽになっているのは、失望が原因に違いない。
けれどその瞳に宿っているのは、極端な怒りだ。
それがバイトンに向けられているとは思えないのは、恐らく自分に対して惨めだからだろう。
「あまり自分のことを咎めるのは、止めた方がいいよ。そんなことをしても、なにも生まれないからね」
結局の所、自分を咎めて戒めるのは、落ち度に納得がしているからだ。
逆に言えば、自分に対する非が分かっていない場合、ほとんど意味が無い。
心を囚われるだけで、反省点を見つけられない限り、何かを生み出すことは叶わない。
「ルカ君は大人だね。本当に学生かい?」
「あはは、詮索は無用だよ。それに、私が学生じゃないとしても、あくまでも意識の違いだよ。気にも留める必要は無いかな」
ルカは遠回しで、詮索無用と阻止した。
リュマミールは含んだ笑みを浮かべると、虚ろが取り巻いた。
完全にヤバい奴だと思われたが、そんなこと、ルカは百も承知だった。
「そんなことより、リュマミール。これからどうするんだい?」
ルカはリュマミールに訊ねた。
少しだけ口調をリュマミールに寄せたのは、単純な嫌がらせではない。
寧ろ客観的に捉えさせることで、状況の改善を図ろうとした。
「そうだね。どうしようか」
けれど何も生まれない。リュマミールの目には怒りがあるだけ。
沸々と込み上がる熱が、リュマミールの腸を煮え返らせる。
その手は懐に伸びており、ルカは「ふっ」と笑った。
「止めた方がいいよ。強引な手段を使ったとして、それでバイトンを殺せるとは限らないからね」
「!?」
リュマミールは全て見透かされていた。
ルカはリュマミールが懐に手を伸ばした瞬間、何やら細身で鋭利な刃物を手にするのを肌間で察した。
もちろん見えている訳ではない。経験則が導き出した答えが簡単に当たってしまう。
「ルカ君、君は一体」
「どうでもいいよ。それより、島長なら分かる筈だよ。それが“正しい正義”か“正しくない正義”かどうか。分からない奴は、これ以上踏み込むべきじゃない。どうかな?」
ルカの言葉はリュマミールに深く刺さった。
心を突き刺し、流血騒動を起こすと、気分を害される。
完全にブーメラン発言で、リュマミールの心を抉る。
狂気に囚われかけていたのは、もしかしなくても自分だと言わしめる。
「あはは、君は凄いね」
「凄くはないよ。それに、見えないのかな?」
「えっ?」
ルカは覇気の無い言葉を完全にあしらう。
代わりに、まだ気が付いていないリュマミールの愚行。
それを正すために少しだけヒントを与えた。
「ほら見てよ。屋敷の二階、こっちを見張っているよ」
「二階?」
「動かない。目を端に移動させるか、気配で察して欲しいな」
ルカでさえ、この状況で魔術も魔法も使っていない。
完全に意識下だけで、状況を把握している。
もちろん、リュマミールにはできない芸当だ。
バイトン邸。二階では、ルカ達のことを常に監視し続ける、狙撃手の姿があった。
「アレは一体」
「ずっと私達を見張っていたよ。この屋敷に来る前からね」
狙撃手はまだしも、暗殺者はずっと見張っていた。
ルカ達の動向を窺っていた上に、いつでも手を出せるように用意していた。
そのせいだろうか? 下手な真似はあまりできない。
ルカを除いての話だが、仕方がなかった。
「ルカ君は気が付いていたのかい?」
「もちろんだよ。下手な事をすれば、即座に攻撃に転じる。優秀な狙撃手と暗殺者だよ」
ルカは最初から気が付いていた。
気が付いた上で、完全に見逃してあげていた。
何せルカの敵ではない。寧ろ、ルカを攻撃するなんてバカ気た行為だ。
「ルカ君、君のようには慣れないね」
「なる必要は無いよ。それより、相手は強敵だ。リュマミール、島長としての正念場だよ」
リュマミールは決してルカの様にはなれない。
そんなこともちろん分かり切っている。
けれどルカは傷付いているリュマミールに対し、正念場だと煽った。
「あはは、言ってくれるね。でも、そうだね。僕なりの正義を貫く……か。考えてみるよ」
「考えてみての前に、目の前を変えることが最優先だよ」
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