1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

715.フェンリルを呼んで

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「それじゃあ私は行くよ」
「ん? ギルドに戻らないのかい?」

 ルカはリュマミールに声を掛けた。
 バイトン邸を離れた後、ギルドに戻るつもりはない。
 寧ろここからは別行動を取る。

「そうだよ。それじゃあ、後はお願いね」

 ルカはリュマミールに面倒なことを任せる。
 これ以上の介入は、もう少し深みに踏み込んでからだ。
 今やるべきことは別にあると分かっているので、踵をスッと返すと、リュマミールの前から姿を消した。

「ルカ君が消えた? ……僕では、ルカ君を追えない訳だね」

 リュマミールは呆れてしまった。
 もちろん、これはルカに対する呆れではない。
 如何することもできない自分に対する苛立ちそのもので、正義を全うすること、それが最善だと思い込むしかできなかった。



「さてと、この辺でいいかな?」

 ルカは森の中に居た。
 一瞬で移動したのは別に魔術の力ではない。
 普通に脚力だけで移動すると、王国の騎士団よりも速く迅速に行動していた。

「(ピュ―!)」

 ルカは珍しく指笛を鳴らした。
 これは明らかに合図で、特徴的な音をその耳は捉える。

 パサッ!

 近くの草木が揺れる。
 飛び出して来たのは巨大なオオカミ。
 それを目の前にしても、ルカは相も変わらない態度だった。

「お疲れさま、フェンリル」
「ルカ、アナタハワタシヲナンダトオモッテイルノデスカ?」

 あくまでも合図だった。本当に来てくれるとは思わなかった。
 けれどフェンリルはシッカリと聞き取ってくれたので、ルカの目の前に飛び出す。

「うーん、使い魔代理?」
「ツカイマデハアリマセン」

 ルカはフェンリルに睨まれる。
 鋭い牙をギラギラさせると、目が見開かれる。
 ルカの表現が悪かったのだが、上手い具合に抑える。

「怒らないで欲しいな。あくまでも、そう言う体だからね」

 ルカはフェンリルに睨まれても動じない。
 完全にあしらってしまうと、気になることがあった。
 フェンリルの魔力が、ほんの少しだけ乱れている。

「もしかして、戦って来たのかな?」
「ハイ、ミツリョウシャヲトラエマシタヨ」

 フェンリルはルカと別れてしばしの間。
 如何やら密猟者を捕らえたらしい。
 流石に何もしていない訳がなく、寧ろ成果を上げていた。

「偉いね、殺さなかったんだ」
「コロシテモツマラナイデスカラ」

 フェンリルは密猟者を殺さなかったらしい。
 多少交戦はしたのだろうが、それは立派なことだ。
 何せ、一度冒険者達、密猟者に襲われた筈のフェンリルが、加減してくれた証拠なのだから。

「流石だね、フェンリル」
「ソレハイイデス。ソレヨリ、ソチラノシュビハドウデシタカ?」

 フェンリルは賢かった。
 密猟者の一人や二人、殺すことは造作もない。
 けれどそんな真似をしないのは、人間として罪を裁かせるためだ。

 それだけの賢さを披露された後だが、フェンリルはルカに問い掛けた。
 密猟者を裁く用意は整ったのか。
 フェンリルは人間社会のことを気にしてくれる。

「ある程度は固まった筈だよ。けれどね、まだ首謀者が捕まっていないんだよ」

 後のことはルカが手を下すことではない。
 リュマミール達、島を任されている大人達の仕事だ。
 そう割り切ったものの、未だに首謀者が捕まっていない。
 それが最大の問題で、バイトン自身も知らなかった様子が、また引っ掛かっていた。

「シュボウシャデスカ?」
「そう。ソイツを捕まえない限り、密猟は終わらないよ」
「ガルルゥ……ソウデスカ」

 密猟を終わらせるには、首謀者を捕まえるしかない。
 けれどその首謀者が見つかっていない。
 結局はジレンマを抱えているだけで、何も動かない。

「腹立たしい?」
「モチロンデスヨ。クイコロシタイホドニ」

 フェンリルは牙を剥き出していた。
 本気で殺してしまいそうで、全身から殺気が漏れている。
 ルカはフェンリルの真意を見た。

「あはは、そうだね。その気持ちも悪くはないよ……でもね」

 ルカはつい笑ってしまった。
 フェンリルの気持ちを汲むと、そうしたいのも理解できる。
 けれど、そんな真似をさせる訳にはいかない。

「殺すと困るんだよ。分かってくれるよね?」
「ガルルゥ……」

 残念だけど、フェンリルに殺しをさせる訳にはいかない。
 それもその筈で、くだらないことで気高い姿を穢さないで欲しい。
 これは完全にルカ個人の願望だ。

「でも安心していいよ。首謀者は分かっているからね」
「エッ?」
「後は任せてよ、フェンリル。密猟は終わらせるからさ」

 ルカはフェンリルにそう言った。
 これは幻獣が首を突っ込むと、大変な事態になりかねない。
 本当は嫌だ。けれど時間もない。仕方がないので、ルカは動くことを選んだ。

「マッテクダサイ。アナタハイッタイ」
「フェンリル、それよりやるべきことがあるよ。密猟者を全員捕まえること、だよね?」

 ルカはフェンリルの先を行っていた。
 そのせいだろうか? フェンリルでさえも理解ができない。
 完全に世間を全て置き去りにすると、ルカは街中へと戻った。
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