1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

728.VS密猟者達3

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「お、おい、なんだアレは」
「アレは……」

 ゴードとリュマミールの視線の先。
 暗闇の中に突如として現れた、岩の鎧を纏った獣。
 その姿形はオオカミそのもので、その姿を何倍にも膨れ上がらせたようだ。

「ヴォー――――ン!」

 けたたましい轟音が響き渡る。
 耳を押さえてしまう程気持ち悪い遠吠えだ。
 ヒョウガは奥歯を噛むと、目の前の巨影を睨み付けた。

「まさか、ロックウォーヴルフか」
「のようですね。忌々しい」

 ロックウォーヴルフ。
 それは決して魔物(※モンスター)ではない。ましてや魔獣でもない。
 更には幻獣などでもない。完全に人間の作り上げた妄想だ。

「ロックウォーヴルフは、確か魔術師が作り上げた妄想の具現化だった筈だな」
「あまり詳しくはありませんが、恐らくは」

 ヒョウガはあまり人間社会の魔術に関心を持っていない。
 そのせいか、ゴードの言い分には中途半端に返す。

「ヴォー――――ン!」
「「うおっ!?」」

 ロックウォーヴルフは、ヒョウガとゴードに襲い掛かる。
 けたたましい遠吠えで、二人を含めた多くの人間の耳を潰しに掛かる。
 鋭い爪が振り掛かると、地面を抉り取った。

「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 たくさんの人間が吹き飛ばされた。
 宙に巻き上げられるのは、冒険者だけではない。密猟者もまとめてだ。
 巻き添えにあってしまった人間達は体をズタズタに引き裂かれると、真っ赤で滲んだ飴を降らせた。

「テンヨコオレ。《ウラノパコス》」

 ヒョウガは手をパッと合わせた。
 魔術に扮した魔法を唱えると、自分から二メートル上空が凍る。
 氷の傘が生まれると、血の雨を疎ましく受け止めた。

「(ドン、ドンドンッ!)ううっ、重い……」

 ヒョウガは唇を噛んだ。
 氷の傘の上に重たい何かが大量に乗る。
 恐らくは死体だろうが、興味はない。

「お、おい、アンタ大丈夫か!?」
「問題ありませんよ」

 ゴードは心配した。
 ヒョウガが強力な魔術を使っていると思い込んでいた。

「それより、ロックウォーヴルフをどうにかしないとマズいですよ」
「そうだな。だがよ、どうするんだ、あんな化物」
「確かに化物ですね。ですが人間が生み出した化物は、本物の化物にはなり得ませんよ」

 ヒョウガは深い言葉を送った。
 まるでルカのようだが、当然ルカの受け売り。
 そんなことをゴードは知らないのだが、ヒョウガを介してルカを見る。

「アンタ、やっぱりルカの寄越した助っ人だな」
「ええ、そうですが?」
「確認だ。確認。んじゃ、あの化物をとっちめるぞ!」

 ゴードは肩をグルグルと回した。
 肩甲骨辺りの筋肉が音を立てている。
 目の色に殺気が混ざり合うと、ロックウォーヴルフを戦いに行く。

「んじゃ、ちと行って来るぜ!」

 ゴードはヒョウガの協力を仰がなかった。
 ギルドマスターとして、自力で解決しようと目論む。
 もちろん、ヒョウガは一切邪魔をする気はない。
 
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ゴードは腹の底から声を上げた。
 一切逃げる気がなく、体勢を前傾に崩す。

「ヴァ―――――ン!」

 ロックウォーヴルフは吠えた。
 ゴードを委縮させようとするも、まるで効いていない。

「そんな威嚇、俺に効くかよ!」

 ゴードの目の奥に殺意が宿っている。
 殺伐とした空気を切り開くと、地面を大きく蹴った。
 たった一蹴りで、とてつもない高さまで跳び上がる。

「魔術を使わない人間、あの高さまで跳び上がるなんて……信じられませんね」

 ヒョウガはゴードの身体能力に唖然とした。
 ただでさえこの世界の人間は元々の素養が高い。
 そのおかげか、タダでは死なないのが常識なのだが、ゴードの身体能力の高さは異常だ。

 魔術の一つも使っていない。ましてや精霊の力も借りていない。
 元より持っていた身体能力を高めると、悠々と三メートルは地面から離れる。
 まさか直接殴りつけに行くのだろうか? 否、そんなバカ気た真似をするなんてこと……とは、この世界では言えない。

「おんどらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、くたばりやがれよなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 腕に装備したガントレットに魔力が集まる。
 魔導具の力で体外から魔素を吸収した。
 飲み込んだ魔素を魔力に変換すると、拳の破壊力を高める。

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 一気に全開放。
 ガントレットに覆われた拳を叩き付けると、ロックウォーヴルフの顔が罅割れる。
 それだけに留まることはなく、全身に亀裂が走ると、体がボロボロと音を立てて崩れ落ちた。

「ヴゥオォォォォォォォォォォォォォォォン!」

 ロックウォーヴルフも鳴き叫んだ。
 けれど何かがおかしいことにゴードは気が付く。
 手応えが思った以上に無い。

「おいおいどうなってんだ? 今ので崩れるんじゃねぇのかよ!」

 ゴードの一撃は大したものだった。
 けれどロックウォーヴルフの体は崩れ落ちているが、同時に再生もしている。
 そのせいか、ダメージは多少あるものの、すぐさま元の姿を形成する。

「ヴァー――――ン!」
「嘘だろ。結局、元通りじゃねぇか」

 ゴードはつい絶句してしまった。
 自信を削ぐような現実感に蝕まれる。
 ロックウォーヴルフ。只の妄想の化物は決して崩壊しない。

「おいおい、マジかよ。避けれねぇ」

 鋭く尖った爪が振り下ろされる。
 ゴードは避けようとするも、それは大き過ぎた。
 ただ左右に避けるだけだと間に合わない。ましてや魔力を大量に消費した反動がある。久々に本気を出したせいか、老いた体が付いて行けない。
そう悟ると、心臓が唸りを上げ、汗を掻かされていた。
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