1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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転入生編

15.ブルホーン

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 現れたのはとんでもなく巨大なイノシシ。
 しかし体毛は青い。青とは言っても濃い青ではなく淡かった。

「な、何でこんなところに魔獣が!」
「違うでしょ。あれはモンスター。ってか、早く逃げないと!」

 ライラックは指先から糸を出した。
 瞬時に判断して木々の枝々に張り巡らせて距離を取る。

「私だけじゃ厳しいよねー」
「主を迎えるは風の窓。風の音を聞かせ、我らを飛ばせ。—《ウィンディ》!」

 シルヴィアは魔術を使った。
 その直後。シルヴィアを抱えるライは後ろからの強烈な風の勢いに押されてイノシシから距離を取る。あまりに速い。ライラックじゃないと耐えきれないかもしれない。しかしイノシシも負けてはいない。
 猛烈な風に押し負けず、長く白い牙をひっさげ突進して突き抜けた。

「どうなってるの、まだ追いかけて来る!」

 シルヴィアは目を丸くする。
 そんな中、ライラックは糸を無数に張り巡らせて距離を取ることに必死になる。しかしイノシシの方が速い。このままじゃ追い付かれる。

「それにしても何でこんなところに……」

 ライラックは背後に気を付けつつ、考えていた。
 すると嫌なアナウンスが森中に響いた。

『ピンポンパンポーン! ——緊急放送です。現在、西の森は危険ですので速やかに退避してください。第三魔獣管理庫からブルホーンが逃げ出したため、現在捜索中。速やかに非難し、森から離れてください。繰り返します——』

 シルヴィアとライラックは放送を聞いてしまった。
 耳の奥に響く先生からの放送内容。二人は絶句してしまった。体の力が全身から抜けるとともに、助けは来ない。それを悟らされた。
 そんな中、

「そんなぁー……」

 シルヴィアは項垂れた。
 ライラックはチラッと背後を凝視して、チィッ!と舌を鳴らした。

「とにかくこのまま取れるだけ距離取るね」
「お願い」

 ライラックは可能な限りの罠を張った。
 それから森の奥に逃げ込んだ。


 何とか距離を取った二人は、地面に四つん這いになった。
 消費魔力の大きいものは使っていない。それでも疲れるのは変わりない。

「如何する、シルヴィ」
「とりあえず距離はある程度稼げたけど、そのうち追いついちゃうよ」
「じゃあ逃げる?」
「多分匂い覚えられちゃったから……」
「無理かー」

 ライラックにはお手上げだった。
 これ以上できることもない。そんな中、

「ちょっと待って、早くない?」
「まさかもう!」

 シルヴィアは嫌な気配を感じ取った。
 むしろ魔力の余波に近い。とんでもない魔力圧だ。これがモンスターのものか。

「如何する。流石に今の私達じゃ……」
「やるしかないでしょ。行くわよ!」
「あーもう!」

 シルヴィアは風の魔術を、ライラックは鋼鉄製の糸を瞬時に魔力で練り上げる。
 いつでも来い。その意気でいたところ、急に森の奥地から音がした。
 それはまるで木々をなぎ倒すみたい。

 ドスッドスッドスッドスッドスッ——

 威圧感。
 吹き抜ける冷気。真っ直ぐ吹き抜ける風。それを受けた二人は、ブルホーンを待ち構えた。

「主を迎えるは風の窓。打ちひしがれるは、眩き風。—《ストリーム・ウィンド》!」
「縫合魔糸。行けっ!」

 二人は思い思いの魔術を行使する。
 しかし適当ではない。巧みな連携で、糸は風の力を借りて高速の鞭に早変わる。それは凄まじい威力である。が……

 カーン!——

 二人の攻撃はブルホーンの牙に弾かれる。
 しかもそれだけではない。鼻息一つで吹き飛ばされた。

「嘘でしょ!」
「こりゃヤバいねー」

 二人は一歩後ずさる。
 ライラックは睨みつけ、シルヴィアは深く目を瞑った。

(このままじゃ……)

 シルヴィアは諦めかけていた。
 だけどそんな時、ブルホーンの体が吹き飛んだ。

「「えっ!?」」

 二人は目をぱちぱちさせた。
 瞬きをして状況を把握すると、そこには見慣れた人がいた。

「大丈夫、怪我とかしてない?」
「ルカさん……如何してここに」

 そこにいたのはルカだった。
 しかしルカはシルヴィアの質問を通してこう述べる。

「そんなの助けるため以外に理由なんている?」

 空気が静寂に取り込まれた。
 それはカッコつけでも何でもない。ルカの本意だった。
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