1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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ワインナリー編

151.真樹を怒らせるとこうなる

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  彼らはすんなりと理解できた。
 もちろん今起きていることはさっぱりで、この蔦が何なのかはさっぱりだった。
 では何を理解していたのか。命がないことだ。

「宿木だと!」
「はい。お2人は私の蔦に触れてしまいましたね。その蔦には生命力を奪う力があるんです。寄生した相手、すなわち宿木から生命活動に必要なエネルギーを蝕み続け成長する。本当は既に苦しいのでしょう?」
「馬鹿なことを言うな!」
「そうですか? お隣の彼は、既に虫の息ですが」

 ナタリーは微笑み返した。
 男は隣の相棒に視線を落とすと、頬がこけやつれていた。
 目の奥に生気はなく、丸く太った体はどんどん枝のように細くなる。とてつもない速度で体内の生命力を吸い上げていた。

「おい、おいしっかりしろ!」
「あ、兄貴……何か、俺……気持ちよくなって……何にも考えなくていいって言うんすかね? ……あはは……」

 呂律は回っていたが、喋ることに意味を成していない。
 気持ちを無我夢中で伝えるだけで、目が据わっている。
 男の1人に意識はほとんどなく、宿木として養分にされていた。

「くそっ! 何をした」
「ですから宿木にしたんです。私の好きなワインを盗もうとする輩を放っておけませんから」
「何だと……ちょっと待て! お前のその格好、さっき外に出ただろ!」
「何のことでしょうか?」
「とぼけんじゃねぇ!」

 男は怒り狂った。
 しかしナタリーは白を切り続ける。
 雑魚相手に感情を露見させたりはしない。ルカの力無しで仕留めると決め込んでいた。

「お2人はまだ幸運ですよ。もしも“あのワイン”に手を付けていたら、今頃即死していました」
「あのワインだと? それは噂の最高級ワインのことか!」
「それはどうでしょうか。少なくとも動くことも魔術を行使することもできなくなった貴方方お2人には関係のないことです」

 確かに男は魔術が使えなくなっていた。
 ベルトの中には万が一のためのナイフが入っている。
 しかし指先すら動かせないので、いくら頑張っても無駄な足掻きでしかなかった。

「くそ野郎。こんな奴がいるなんて聞いてねえぞ!」
「そうですね。昨日来たばかりですから」
「下見の意味がねえじゃねえか! こうなったら」

 男はポケットから何かを取り出そうとする。
 ナタリーは黒い鉛玉のようなものを見つけ取り押さえる。
 おそらく爆弾の類でしょう。砂爆弾の類なら破裂させる前に叩き壊せる。

「させませんよ!」
「はっ、馬鹿め」

 男は笑っていた。
 ナタリーは一瞬身を屈めたが、蔦が絡め取ったのは確かに鉛の塊だった。
 けれどずっしりと重たい。中に破裂性の鉄鋼を詰め込んだ爆弾です。

「なるほど、そう来ましたか」
「どうだ。これなら点火した時点で爆発するぞ」
「それがどうしましたか? 死ぬのはお2人だけです」
「1本でも多くワインが壊せればお前達の苦汁の表情が見られるんだよ!」

 男は狂っていた。
 宿木にされたことで感情や思考の制御ができなくなっている。
 けれどナタリーは怯んだりしない。何故ならもう1人怒っている人がいた。

「……馬鹿な真似はさせない」

 急の貯蔵庫の中が冷たくなる。
 ナタリーの眉毛に霜が降り途端に凍り始めた。
 流石にナタリーだけに任せてはくれず、本領を発揮し始めた。爆弾は凍ってしまい、導火線に点火された火が固まって爆発する心配が無くなる。

「な、何っ!」
「やはり出てきてしまいましたか、ミヨンさん」
「……こいつらは許せない」

 白い髪が扉の裏から出てくる。
 ミヨンは青白い瞳を半月状にして男達を睨みつけると、懺悔の言葉の1つも与えることなく氷漬けにしてしまった。
 吐息1つで完全に息の根が止まり、ナタリーとミヨンは寒い部屋の中でお互いの狂気を吐き出していた。
 あまりの力の差に酷いと思いつつ、隣でナタリーの変わり身が消えたのでほっとしたルカは、夜空を見上げていた。
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