150 / 733
ワインナリー編
150.残念な男達
しおりを挟む
その夜。
「それじゃあナレハさんミヨン。よろしくお願いします」
「うん。気を付けてね」
「……夜間は危ないから、くれぐれも気を付けてね」
ルカはナレハとミヨンに念押しされていた。
顔を詰め寄られ、目で威圧される。そんなに危ないだろうかと自分で心配になった。
「念押ししなくてもわかりましたよ」
ルカは口角を上げながら、ナレハとミヨンに手を振った。
隣にはナタリーの姿がある。
2人は一度ブルーベンに戻ることにした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ナレハの営むワイン工房は品質の良いワインで有名だ。
世界中のレストランでも扱われるような代物が多く、赤と白の両方を作っている。
しかし普段並ぶものは品質を落としたリーズナブルなものから、一流ホテルでも使われる高級品。模造で作ることができないとされ、一般的には同一のワインとして区分化されていた。
けれど男達は知っていた。
一般には出回ることのない最高級品のワインは貯蔵庫の一番奥の部屋に保管されていると。
そのために下見をし、今日この日に結構することにした。
「おい急げ」
「そんな焦んないでくださいよぉ」
「馬鹿、声を出すな。気づかれるだろ」
「ひいいっ!」
悲鳴を上げる男。
ニット帽を被り、小太りと言った印象のある男はピッキングを急いだ。
彼が兄貴と慕う細身の男は周囲に警戒している。
《サンドパウダー》で姿を覆ってはいるが、結局は小細工でしかない。
速くここをおさらばするためにも、いただくものはいただかないといけない。
「おい、まだか!」
「もう少しですよぉ。おっ、開きましたよ」
「よし。今は人が来ない。とっとと盗み出すぞ」
男達は意気揚々と貯蔵庫の中に侵入した。
しかも今いるのは最奥。にもかかわらず、簡単なピッキングで開けられるとは思ってもみなかった。
ここ最近襲ったワイン蔵で一番ざるかもしれない。
「にしても何でこんなにちょろいんでしょうかね?」
「さあな。盗まれないと高をくくっていたんだろうよ」
「にしても変でしたぜ? 罠の1つも無くなってたんで」
「さっき出て行った2人が来たから安全のために解いておいたんだろうよ。おい、そんなことよりもさっさとワインを探せ!」
「ひええっ!」
男達はワインを漁り始めた。
どれもこれも滅多にお目にかかれない代物ばかりで興奮する。
特に背の高い男は根っからのワイン好き。
盗みを働くようになったのも、珍しいワインを飲むためだ。
その過程でバイヤーとしても有名になった。あくまでも裏組織間でのやり取りに限るが。
「チッ! 何だこの蔦は。邪魔だな」
「兄貴、こっちにもありますぜ。にしてもこの蔦、まるで生きているようですよ」
「生きている? そりゃ蔦は生きているだろ」
「そういうことじゃないんですよ。……動いてますぜ」
「蔦は動くんだよ」
背の高い男は小太りの男を殴りつけた。
すると激しい痛みで頭を抑え、背の高い男は蔦を睨む。
確かにコイツの言っていることも間違ってはいない。
何せここには太陽光はない。夜間の間は光合成が行えないので、酸素ではなく二酸化炭素を吐き出す。それぐらいの知識は持っていた。
しかしこの蔦には休んでいる様子がない。
それはまるで……
「生きているのか、この蔦は……」
男は喉を鳴らした。
重たい唾液が食道を下りていく。
ゆっくりと手を伸ばしてワインに手を掛けた時。
「その通りです」
声が聞こえて来た。
男は指を話すと全身を伸びてきた蔦に絡めとられた。
「くっ!」
「兄貴ぃ!」
「逃がしませんよ。既にお2人は宿木ですから」
冷たい声がした。
部屋の中に充満するのは、威圧感とは違う何かだ。
今まで感じたことのない強烈な死の香りが漂い始める。
男達は震えあがり、見えてきたのは薄っすらと笑むナタリーの姿だった。
「それじゃあナレハさんミヨン。よろしくお願いします」
「うん。気を付けてね」
「……夜間は危ないから、くれぐれも気を付けてね」
ルカはナレハとミヨンに念押しされていた。
顔を詰め寄られ、目で威圧される。そんなに危ないだろうかと自分で心配になった。
「念押ししなくてもわかりましたよ」
ルカは口角を上げながら、ナレハとミヨンに手を振った。
隣にはナタリーの姿がある。
2人は一度ブルーベンに戻ることにした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ナレハの営むワイン工房は品質の良いワインで有名だ。
世界中のレストランでも扱われるような代物が多く、赤と白の両方を作っている。
しかし普段並ぶものは品質を落としたリーズナブルなものから、一流ホテルでも使われる高級品。模造で作ることができないとされ、一般的には同一のワインとして区分化されていた。
けれど男達は知っていた。
一般には出回ることのない最高級品のワインは貯蔵庫の一番奥の部屋に保管されていると。
そのために下見をし、今日この日に結構することにした。
「おい急げ」
「そんな焦んないでくださいよぉ」
「馬鹿、声を出すな。気づかれるだろ」
「ひいいっ!」
悲鳴を上げる男。
ニット帽を被り、小太りと言った印象のある男はピッキングを急いだ。
彼が兄貴と慕う細身の男は周囲に警戒している。
《サンドパウダー》で姿を覆ってはいるが、結局は小細工でしかない。
速くここをおさらばするためにも、いただくものはいただかないといけない。
「おい、まだか!」
「もう少しですよぉ。おっ、開きましたよ」
「よし。今は人が来ない。とっとと盗み出すぞ」
男達は意気揚々と貯蔵庫の中に侵入した。
しかも今いるのは最奥。にもかかわらず、簡単なピッキングで開けられるとは思ってもみなかった。
ここ最近襲ったワイン蔵で一番ざるかもしれない。
「にしても何でこんなにちょろいんでしょうかね?」
「さあな。盗まれないと高をくくっていたんだろうよ」
「にしても変でしたぜ? 罠の1つも無くなってたんで」
「さっき出て行った2人が来たから安全のために解いておいたんだろうよ。おい、そんなことよりもさっさとワインを探せ!」
「ひええっ!」
男達はワインを漁り始めた。
どれもこれも滅多にお目にかかれない代物ばかりで興奮する。
特に背の高い男は根っからのワイン好き。
盗みを働くようになったのも、珍しいワインを飲むためだ。
その過程でバイヤーとしても有名になった。あくまでも裏組織間でのやり取りに限るが。
「チッ! 何だこの蔦は。邪魔だな」
「兄貴、こっちにもありますぜ。にしてもこの蔦、まるで生きているようですよ」
「生きている? そりゃ蔦は生きているだろ」
「そういうことじゃないんですよ。……動いてますぜ」
「蔦は動くんだよ」
背の高い男は小太りの男を殴りつけた。
すると激しい痛みで頭を抑え、背の高い男は蔦を睨む。
確かにコイツの言っていることも間違ってはいない。
何せここには太陽光はない。夜間の間は光合成が行えないので、酸素ではなく二酸化炭素を吐き出す。それぐらいの知識は持っていた。
しかしこの蔦には休んでいる様子がない。
それはまるで……
「生きているのか、この蔦は……」
男は喉を鳴らした。
重たい唾液が食道を下りていく。
ゆっくりと手を伸ばしてワインに手を掛けた時。
「その通りです」
声が聞こえて来た。
男は指を話すと全身を伸びてきた蔦に絡めとられた。
「くっ!」
「兄貴ぃ!」
「逃がしませんよ。既にお2人は宿木ですから」
冷たい声がした。
部屋の中に充満するのは、威圧感とは違う何かだ。
今まで感じたことのない強烈な死の香りが漂い始める。
男達は震えあがり、見えてきたのは薄っすらと笑むナタリーの姿だった。
10
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる