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ワインナリー編
149.畑の足跡
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今日は畑を見に来た。
ナレハが面倒を見ているという畑には、たくさんのブドウやブルーベリーがなっている。
種類は多いとは聞いていたが、まさかこの広大な畑を全部管理しているなんて、普通の人には厳しいはずだ。
しかしダークエルフだからできるのだろう。
五感が通常のエルフ種よりも高く、魔法の腕はハイエルフよりかは劣るが、それでも並の人間よりは標準スペックが高い印象がある。
「ここにはブドウだけでも5種類、ブルーベリーは20種類を栽培しています」
「凄い。これをナレハさん1人で」
「もちろん私1人では難しいですが、ナバートさん達が手伝ってくれています」
それでも尋常ではないレベルだ。
一面見渡し限りの畑に1つ1つ丁寧に苗木が植えられている。
小さい実から大きな実。房の数は少ないが、その分だけ1つの房に栄養が行き渡る。
「これだけの品種を育てる理由は、やっぱり時期ですか?」
「そうです。出荷時期をずらすことにより、一年中ワインを提供し続けられる。そのためには栽培時期を変えながら、適した時期に適した種のワインを作ることが重要なんです。もちろん長期間熟成した方が良いので、貯蔵庫には貴重な代物をいくつも保管していますよ」
「へぇー」
ナレハは生き生きとしていた。
きっと飲んで欲しい人がいるからだ。その人は多分……
「そう言えばナレハさん。今年もワインを提供してくださいますか?」
「もちろんです。最高のものを用意しています」
「ふふっ。ありがとうございます。だけど最高品質を常に提供してくれなくてもよいのですが」
「それは私のポリシーに反します。ですので今後も良いものを送らせていただきます」
何だか雰囲気が変わった。
この空気を壊してはいけないと思い、少し畑から離れるとまたしても嫌な気配を感じ取る。
ルカはナレハに断りを入れ、畑を横断するとそこには誰もいない。
「うーん。人の姿はないけど、気配は残っている。ってことは……」
草をかき分けた。
するといくつもの足跡が残っている。薄っすらとだが土が盛ってあり、魔力の残り香もする。
けれどあまりに杜撰だ。この程度なら、アルカード魔術学校の3年生以上の生徒なら誰だってわかる。
「人の足跡。しかもまだ新しい……人数は2人。1人は魔術が使えるけど、《サンドパウダー》程度ね」
土の感触が異なっていた。これは砂漠の砂だ。
サラサラとした砂で、水分を吸い尽くすのが目に見えてわかる。流石に戻しておこうとした時、首筋がひやりとした。
ミヨンの気配だ。
「ミヨン。どうしたんですか?」
「何かあったの?」
「はいありましたよ。見てください、勝手に入り込んだ人の足跡です」
背後にいたミヨンにも見えるように配慮した。
すると地面には、まだ足跡が残っている。完全に消し切ってはいないので簡単に目視できる。
ミヨンは表情を歪めた。魔力の残り香を感じ取ったからだろう。
「これは人の足跡。それに魔力を感じる」
「わかるんですね」
「感覚的に。だけど、この足跡2つある。きっと最近噂のワイン泥棒」
「ワイン泥棒? またマニアックですね」
ルカのツッコみは鈍いナイフだった。
けれどワイン工房からすれば敵視する相手で、流石にルカも許せない。
そもそもの話し、泥棒は犯罪だ。捕まえた方がいい。
「流石にここが狙われているのは見過ごせませんね。罠でも張りますか?」
「罠?」
「はい。この手の相手は必ず念入りな下見をしているはずです。そして部外者を嫌う傾向がある。おまけに共犯者がいることを考慮しいて……」
ルカはミヨンに伝えた。そのことを後でナレハに伝達してもらうが、おそらく予想として今夜だ。
他にも足跡は消された跡がある。これは間違いなく、仕掛けてくるはずだ。
何せこっちには無関係の相手が2人もいるんだから、情報にはないだろう。
ナレハが面倒を見ているという畑には、たくさんのブドウやブルーベリーがなっている。
種類は多いとは聞いていたが、まさかこの広大な畑を全部管理しているなんて、普通の人には厳しいはずだ。
しかしダークエルフだからできるのだろう。
五感が通常のエルフ種よりも高く、魔法の腕はハイエルフよりかは劣るが、それでも並の人間よりは標準スペックが高い印象がある。
「ここにはブドウだけでも5種類、ブルーベリーは20種類を栽培しています」
「凄い。これをナレハさん1人で」
「もちろん私1人では難しいですが、ナバートさん達が手伝ってくれています」
それでも尋常ではないレベルだ。
一面見渡し限りの畑に1つ1つ丁寧に苗木が植えられている。
小さい実から大きな実。房の数は少ないが、その分だけ1つの房に栄養が行き渡る。
「これだけの品種を育てる理由は、やっぱり時期ですか?」
「そうです。出荷時期をずらすことにより、一年中ワインを提供し続けられる。そのためには栽培時期を変えながら、適した時期に適した種のワインを作ることが重要なんです。もちろん長期間熟成した方が良いので、貯蔵庫には貴重な代物をいくつも保管していますよ」
「へぇー」
ナレハは生き生きとしていた。
きっと飲んで欲しい人がいるからだ。その人は多分……
「そう言えばナレハさん。今年もワインを提供してくださいますか?」
「もちろんです。最高のものを用意しています」
「ふふっ。ありがとうございます。だけど最高品質を常に提供してくれなくてもよいのですが」
「それは私のポリシーに反します。ですので今後も良いものを送らせていただきます」
何だか雰囲気が変わった。
この空気を壊してはいけないと思い、少し畑から離れるとまたしても嫌な気配を感じ取る。
ルカはナレハに断りを入れ、畑を横断するとそこには誰もいない。
「うーん。人の姿はないけど、気配は残っている。ってことは……」
草をかき分けた。
するといくつもの足跡が残っている。薄っすらとだが土が盛ってあり、魔力の残り香もする。
けれどあまりに杜撰だ。この程度なら、アルカード魔術学校の3年生以上の生徒なら誰だってわかる。
「人の足跡。しかもまだ新しい……人数は2人。1人は魔術が使えるけど、《サンドパウダー》程度ね」
土の感触が異なっていた。これは砂漠の砂だ。
サラサラとした砂で、水分を吸い尽くすのが目に見えてわかる。流石に戻しておこうとした時、首筋がひやりとした。
ミヨンの気配だ。
「ミヨン。どうしたんですか?」
「何かあったの?」
「はいありましたよ。見てください、勝手に入り込んだ人の足跡です」
背後にいたミヨンにも見えるように配慮した。
すると地面には、まだ足跡が残っている。完全に消し切ってはいないので簡単に目視できる。
ミヨンは表情を歪めた。魔力の残り香を感じ取ったからだろう。
「これは人の足跡。それに魔力を感じる」
「わかるんですね」
「感覚的に。だけど、この足跡2つある。きっと最近噂のワイン泥棒」
「ワイン泥棒? またマニアックですね」
ルカのツッコみは鈍いナイフだった。
けれどワイン工房からすれば敵視する相手で、流石にルカも許せない。
そもそもの話し、泥棒は犯罪だ。捕まえた方がいい。
「流石にここが狙われているのは見過ごせませんね。罠でも張りますか?」
「罠?」
「はい。この手の相手は必ず念入りな下見をしているはずです。そして部外者を嫌う傾向がある。おまけに共犯者がいることを考慮しいて……」
ルカはミヨンに伝えた。そのことを後でナレハに伝達してもらうが、おそらく予想として今夜だ。
他にも足跡は消された跡がある。これは間違いなく、仕掛けてくるはずだ。
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