1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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悪魔教会編

182.暗い通路と鉄格子

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 ルカとライラックは階段を下りていた。
 緩い傾斜の石階段だ。かなり古いものなのか、それとも急造品なため造りが粗いのか、かなり歩き難い。
 先導してくれている男の人の後ろをついて歩いているが、明かりがないと何も見えない。

「暗いですね」
「そうだな。ここは暗くてじめじめした陰気な場所だ」
「ここが本拠地。日陰ですね」
「今の俺たちは世間的に見れば日陰な存在だ。とは言え、この革命が終われば俺たちが日向になる」
「お言葉ですが、スカーレット王国に至っては……」
「そうだな。この国と獣人の国では例外だ。だが獣人を軽蔑している国は崩壊するだろうな。奴隷制度も無くなる」
「奴隷……」

 一部の独裁国家には奴隷と言うものがある。
 ほとんどの国で人権問題になるため奴隷制度はなく、スカーレット王国はその類に厳しい。

「まだそのような人権問題があるのですね」
「そうだな。俺はその国にいた。何とか命からがら逃げてきたが、俺の家族はみんな殺されたよ」
「それは……」
「同情はするな。弱く見える」
「すみません」

 この人は他の教会の人間とは違う。
 目の奥は既に腐っているが、心だけは自意識を保っている。
 まだ救い出せる見込みがあると、ルカは手を差し伸べようとしたが、ライラックに腕を掴まれた。首を横に振って、関わるなと言っている。

『どうして? まだこの人は助け出せる』

 ルカはアイコンタクトを送った。
 この辺は昔から変わっていない。同情の意識が芽生えているのかもしれない。

『無意味なことをしないで欲しいなー。それが敵の作戦かもしれないんだよー』

 一方のライラックはかなりの現実主義者で、リアリストだった。
 差し伸べようとした手をきっぱりと断ってしまう。
 それだけ敵の裏を読むことに意識を割いているようで、ルカの範疇を優に超えていた。

「同志、この先には何があるのですか」
「何って本拠地に決まっているだろ」
「そうではありません。これだけ隠すようなことをしているというのは、世間の目を欺くため。本当の目的はどのようなものでしょうか?」
「それは俺も詳しくは知らない。ただここは革命のための拠点だ」
「革命……その革命とは、一体どのようなことですか」

 ライラックの執拗な問答に男は怪訝な素振りを見せる。
 とは言え、一瞬魅せたライラックの瞳は黒く澱んでいたことで納得してくれたのか、不敵な笑みを浮かべて笑っていた。

「そうだな。付いて来い、少し見せてやる」
「ありがとうございます」

 どうやら情報が少しだけ抜けたらしい。ライラックのおかげとは言え、いささかルkは狂気すら感じた。その手はいつでも目の前のこの男を——

「まああくまでも一旦でしかない。もう少ししたら見えてくるはずだ」
「見えてくる? はっ!」

 ルカは声を上げてしまった。
 2人の視界に飛び込んできたのはそこまで広くなく、むしろ狭い通路だった。
 階段を下りた最下層には陰気な魔力が充満していて、左右には蝋燭が幾つも立っている。鉄の檻のようなものも同時に存在していたが、そこはまるで地下牢だ。
 さらには鼻を抑えないと居られない程、強烈な臭いが立ち込めていた。

「同志、ここは一体」
「見ての通り地下牢だ。居住区にもなっている」
「地下牢が居住区ですか。ではこの臭いは」
「それは見ればわかる」

 男に言われ、ルカとライラックは鉄格子の向こう側を覗いてみた。
 すると項垂れた人間がいる。
 獣人のような動物の特徴はなく、水ぼらしい格好で閉じ込められていた。

「誰かァ……誰かァ。水を……くだサい……」
「あの……」
「人間! 人間人間人間人間!」

 鉄格子を掴んでガンガンガンと揺すっていた。
 あまりの狂気に敵意すら感じるが、まさしくその通りだった。
 目の奥は教会の人間の誰よりも死んでいて、奥が空洞のようになっている。
 額からは血のようなものが流れていたらしいが、既に凝固して固まっているようだ。
 頬はこけ、腕はやせ細って木の枝のようになっている。おまけに臭いもきつい。

「これは一体……」
「同志、こちらには獣人がいますよ」
「獣人! 同志のはずではないのですか!」

 別の牢の中には獣人の女が閉じ込められている。
 子供と一緒なようで、まだ目の奥には生きる希望がある。
 教会の人間ではないのか、何処か雰囲気が違っていて、死に腐ってはいない。

「貴女達、いつまでこんなことを繰り返すつもりですか」
「こんなこと?」

 初耳な話題が飛び出してきた。
 ライラックと一緒にルカは耳を傾ける。

「こんな非人道的な真似、いつまでもこの国が放っておくわけがありません。早くこのような行いは止めるべきです」
「お母さん……お母さん……」

 ルカは我慢の限界に来ていた。流石にこれは悪魔の前に人間がする所業ではない。
 ライラックもここまでの態度を改めて、奥歯を強く噛み締めていた。
 目の奥には怒りが宿っている。

「ここにいるのは俺たちの考えに従わなかった連中と生贄になりそうな人間どもだ」
「生贄ですか」

 ルカは怒りを顕わにする手前、もう少しだけ弁解の余地がないか尋ねる。
 けれど既に性根まで腐っている連中の言葉はルカ達の心には毒として吸収されるだけだ。
 男の口は腐っても尚動いていた。
 聞いているだけで気分を害されるものだ。

「この先の革命には必要な犠牲だ。ここにいるのは不良品ばかり何だよ」
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