1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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悪魔教会編

183.儀式の準備

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 ルカとライラックは流石に怒りに駆られていた。
 しかしここで派手に暴れるわけにはいかない。
 後で必ず助けると決意し、ルカとライラックは粗暴を控える。
 代わりに敵視した目を男に向けた。

「犠牲ですか」
「そうだ。ここにいるのは全部生贄だ」
「生贄って、同じ人間ですよ」
「だからどうした。刃向かう奴は誰であろうと容赦はしない。例えこの身を犠牲にしようとも」
「死なばもろともってことですか。そんな特攻を許すような同志たちですか」
「特攻は最後の手段だ。使える者、使えない者の線引きは重要になる。そしてお前たちは良い目をしている」

 嬉しくもない。ルカとライラックは怒りをより一層強めた。
 こんな場所にいてもいいことはない。
 ルカとライラックは早く立ち去ろうと思っていた。しかし情報がまだこの先にある気がするので、仕方なく我慢する。
 一旦考えることを止めて、男に付いて行くことにした。もう助ける選択肢はない。

「付いて来い。良いものを見せてやるよ」
「「良いもの?」」

 どうせ見るに堪えないようなものだろう。
 ルカとライラックの思考が重なったが、アイコンタクトで意思疎通を図る。

『どうするのー?』
『このまま背後から襲えば楽に倒せるだろうけど、見張りがいないとも限らない』
『多分いるよ。ほら、あそこの牢屋。こっちを見てるよー』
『だね。仕方ない。ここは我慢して付いて行こう。絶対にバレないようにね』
『わかってるって。正直、ぶっ殺したい気分だよ』
『そんなこと口にしたらダメだよ』
『わかってるよ』

 ライラックは狂気を含んだ目を男に向けている。
 それにしても勘が鋭い。確かに牢屋の中には明らかに待遇の異なる男がいた。
 気配を常に飛ばして血走った目でルカ達を睨みつけている。
 どうやら怪しまれているようだ。

「行くぞ」
「うん」

 ルカとライラックな教徒のふりを徹底した。
 くぐってきた場数と修羅場の数が違う。ルカとライラックは全くバレることなく、男の後を付いて行った。

「同志、この先には何が」
「見ていればわかる。この先だ」

 男は不敵な笑みを浮かべる。明らかに不穏な空気が流れていた。
 階段付近の牢屋にはまだ生にしがみつく様子が強く残されていた。
 けれど奥に進めば進むほど、死に近い臭いが立ち込めている。
 どんよりとした陰惨な気持ちが積もっていたので、ルカ達は怪訝な表情を浮かべていた。
  
『死んでいるね。多分本当に死んでるよ』 
『明らかに腐敗した人間の死体を放置してる。そのせいで衛生面が酷い』
『ルカ見てよ。血が凝固してる』
『マズいね。細菌が繁殖しているかもしれない。絶対に近づかないでね』

 これ以上進みたくない。シルヴィアなら吐いている。
 けれどルカとライラックは気持ち悪かったが表情に一切出すことはない。
 心の中でだけ弔い、今はひたすらに歩みを進めた。
 すると発狂が聞こえてきた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! がぁっ! ……ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ルカとライラックは立ち止まった。
 この先で何かが起きている。男が立ち止まったのを見て、その先に答えがあると悟った。

「早く来い、同志よ」
「「は、はい」」

 流石に歩みが止まった。2人とも顔が引きつっている。
 今にも泣き出しそうになる目の下は赤く腫れていた。
 悲しみを一手に引き受けてしまったルカにライラックは優しく肩を叩く。
 ルカも気を取り留めると、怒りが込み上げてきた。

「あの、これは何ですか?」
「儀式の準備らしい。俺も詳しくは知らない」
「知らないで片付けていい問題ですか! これは獣人の倫理からもはみ出しているはずです」

 ルカは本性をさらけ出して抗議した。
 しかし聞く耳は持ってもらえず、右から左に流されてしまう。
 今ルカ達の目の前で行われているのは非人道的な行為。磔にされた人間が実験道具として使われている光景だった。
 その横には猫の死体が転がっている。
 どうやら想像以上に悍ましいことをしているのはもはや完全に把握された。

「同志、この人たちは」
「俺たちの考えに賛同しなかった連中だ。ここではこうして贖罪行為をしているらしい」
「傍らの猫の死体は」
「この街の野良猫だ。他にも犬や鳥もいるらしい」
「どうしてこんな真似を。贖罪とは言え、流石にやり過ぎではないでしょうか」
「教祖様の考えることは俺たちには理解できない。そういうことだ」

 いいや理解できる。これは悪魔を呼ぶための準備だ。
 動物を殺してその体を人間に移植する。そうすることで、人為的にキメラを生み出すことになる。
 ルカとライラックは空気に耐えられなくなった。
 悪魔召喚の器を作り出すなんて、千年前にもなかった話だ。
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