1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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悪魔教会編

199.ダリアと得物⑤

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 ダリアの付き出した細身の剣がマーリングの心臓に突き立てられた。
 しかし間一髪のところでダリアは寸止めし、マーリングを威圧と殺気だけで戦意喪失させると、そのまま押し倒して勝利をもぎ取った。

「私の勝ちですね」
「……どうして殺さない」
「殺すなんて物騒な真似しなくても人はわかり合えるんです。それに私は、まだ貴方から事情を聴いていないんです。殺すなんてことできませんよ」

 ダリアはお人好しさを発揮していた。
 しかしマーリングは既に敗北している。故に今更反撃しようとは考えもしなかった。
 だからこそ、マーリングは素直にダリアに話し出す。

「俺の故郷は知っての通り港町だ」
「海域の剣士ですもんね。そこで何かあったんですか?」

 ダリアは話を真剣に聞くことにした。
 いつの間にかお互い正座になっていて、完全に戦いが剣から言葉になっている。

「スカーレット王国とはまた違う場所に俺の故郷はある。そこで俺は漁師として海に出ていた」
「漁師さんだったんですね。もしかしてお魚が捕れなくなったんですか?」
「いいや、魚は捕れている。今も十分なほどにな」
「では何故教会に加担するんですか? 魚が売れているのでしたら、収入としても満足が行くはずですが?」
「売れればな。だが魚をこのまない国も多い。スカーレット王国は多種多様な人間がいるが、内陸部の人に遠方の海の幸は合わないらしい。しかも鮮度も保てず、買い取ってもくれない。俺たちだって散々苦労して鮮度を保てるように予算をつぎ込んでいるのに、珍しい魚故に見向きもされないんだ」
「それは死活問題ですね。ですが、それとこれ、どうして教会に繋がるんでしょうか?」

 今の話ではまだ魚が買い取ってもらえないしか話の筋が見えてこない。
 ここからはどうして教会に加担するようになったのか。
 ダリアは冷静に話しを進めていた。

「教会には恩がある。とてつもないデカい借りがな」
「借りですか? えーっと、失礼ですが教会が何をしたんですか?」
「簡単な話だ。売れ残った魚を全部買ってもらった。しかも鮮度のことも褒めてくれた上に色を付けて買ってもくれた。その交換条件として、俺は漁師組合を代表して剣を貸すことにした。金がかかっているからな、遊びじゃない。必要とあれば人だって殺すさ」

 凄い信念だった。確かに生活のためにはお金が必要になる。
 マーリングの暮らす港町はスカーレット王国でもないので支援金として援助を送ることも叶わない。
 でもだからと言って信念を売ってしまっては剣士失格だ。
 ましてや相手は人の弱みに付け込んで駒にしようとし、その上で人を殺していることを隠しているような悪魔教会だ。ダリアは珍しく腹を立て、お腹の下の底の方から煮えたぎるようにマグマが溢れる。

「許せないです。そんなやり方、私は絶対に認めません」
「認めないか。確かに俺の信念はお前の純粋な剣に任された。最後の一瞬は、俺も本気だったのにな」
「そうです。だからもっと信念を貫いてください。それに売り上げだって……」
「少なくとも流通の限りじゃ可能でも受け入れられはしない」

 ダリアは八方塞がりになってしまった。
 仮に同じ状況に立たされたとして、ダリアならどうするか。
 必死に頭を回していると、不意にルカならどうするかを考えだしていた。
 ルカならこの状況をどうやって打開するのか、ダリアは必死に頭を回して脳をフルに使った。

「例えば権力者の援助。それから自分の地位の向上、後は真っ当ではない新しい道を開拓すること……はっ!」

 ダリアは閃いた。
 マーリングはダリアの真剣さに感化され、自分から尋ねていた。

「何かわかったのか?」
「わかったんじゃなくて閃いたんです。マーリングさん、騎士になってはどうですか? 王国の騎士です。そこで優秀な活躍を納めればマーリングさんの地位も向上して故郷の港町で捕れた魚も売れるはずです。優秀貴族が精を出す食べものだって知れたら、きっと売れ行きも向上しますよ」
「そんなことができたらいいがな……」
「できますよ。できなくないです。それから珍しいものを増やしてみてください。もっと人目を惹くような、それこそ馴染みやすいものです。例えば干物や魚油。後は練り物なども、流通のコストを考えればいいんじゃないですか?」

 ダリアは思いつく限りを言葉吐き連ねてマーリングに教える。
 だがそれもこれも自分の地位が向上しなければいけない。

「悪いが青い剣士。それは無理だ」
「どうしてですか?」
「俺はこの国に繋がりがない。確かに剣士の間では俺の名は有名かもしれないが、騎士とはかけ離れている。規律を守れるかなんざわからなぇよ……」
「気にしなくてもいいですよ。騎士だからと言って、規則に従い続けるなんてただの人形です。だから自分らしくしてください。自分を持っている人は、きっとルカさんが気に行ってくれますから」
「ルカさん?」
「私の大好きな人です。それに繋がりも問題ないですよ。今、繋がりは生まれましたから」
「何を言っているんだ?」

 ダリアは少し憚れたが喉の奥を引っ張り出した。
 無理やりに言葉に変換する。

「私はこの国の姫の1人なんです。ダリア・E・スカーレット。それが私の名前です」

 ダリアは本名を伝えた。マーリングの目は些か信じがたいものだったが、嘘をついている節はなかった。
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