1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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悪魔教会編

200.ライラックと狩人①

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 ガサガサ——
 ガサガサ——

 草木をかき分けてただひたすらに真っすぐ進んでいた。
 所々に鋭く伸びた木の枝や剥がれ落ちた木の皮がある。
 ライラックは町の北西に位置しているこの森の中をひたすら歩いていた。
 とは言え、ここもそうだがブルースターのまとめた地図に描かれていたのはほとんどが町の外側の地図で、教会の人間はわざわざ町の外にまで儀式用の魔術陣を描いていたことになる。全く大した執念だ。

「とりあえずこの森にやって来たは見たけど……見られているね」

 ライラックは森にやってきた段階ですぐに気が付いていた。
 誰かが自分のことをジッと見ている。
 直接目で見ているわけではない。何かの魔術を狡猾に使い、遠く離れた場所から森に入って来た侵入者を迎え撃とうということだ。

「《千里眼》とか《ホーク・アイ》みたいな魔術だよね。ルカが言ってた気がする」

 いわゆる索敵専門の魔術ではあるが、ここまで視野が広いと面倒だった。
 この手の相手は大抵罠を敷き詰めているだろう。
 ライラックは警戒しながら、罠を掻い潜っていた。

「えっと、多分私ならこの辺に……」

 ライラックは無防備でしゃがみ込み、草むらをごそごそと探り始めた。
 するとそこには爆発物が埋まっている。
 ワイヤーのようにピンと張った糸が足首に当たる高さに設置されているので、おそらく引っ張れば簡単に爆発する仕組みのようだ。

「まあ、こういう系はベタだよねー。後は、そうだなー」

 ライラックは指先から糸を放った。
 人の目が捉えることのできない細さではあるが粘着力の強い糸で、反対側の木の枝にくくりつくと、そのまま力強く引っ張って葉っぱをガサゴソと振るい落とした。

「あー、やっぱり仕掛けてあったよ」

 落ちて来た葉っぱの裏には金属の針が付いていた。
 細い待ち針のようだが、先端には透明な液体が塗られている。
 ライラックは試しに足元を通ったアリを見つけると、液体を垂らしてみた。

「さてとどうなるかなーって、ヤバいねコレ」

 液体が垂れるとアリが苦しみ出した。
 それから黄色に変色して体がドロドロになってしまう。
 どうやら酸性系の毒薬だったらしい。危く触れてしまうところだったので、ライラックは心から安堵した。もちろん仕掛けてあることは最初から気が付いていたのだが——

「この人なかなか粘着しそうな人だねー。でも、そっちの方が私好みかも」

 ライラックはわくわくしていた。
 ヤバいとは口にしつつも笑みを浮かべているあたり、まだまだ余裕があるらしい。
 透明な糸を絶えず展開し、近くの葉っぱを落としたり足元に注意して罠を踏む前に的確に処理している。
 その様子に気が付いたのか、それとも警戒を怠らない姿勢なのか、若干ライラックが見られている意識を疎かにした。もちろんライラックが疎かにしたからではない。向こうの方から準備を始めていた。

「そろそろ動きがあるかな?」

 そう思ったのも束の間。
 ライラックは耳元で何かが飛んでくる音を聞いた。
 空気をかっ切るような音とともに、矢が降ってくる。けれどライラックは得意の身のこなしで難なくかわし、地面に突き刺さっている矢を睨む。

「これは殺すよりも囮の矢だよねー。ってことは!」

 もう一射、矢が飛んでくる。
 けれどライラックは自分の武器を晒すことなく、矢を掴み取ってしまった。
 まるで見えているのか、ライラックは余裕で矢を掴み取り鏃を睨んだ。透明な液体が付着しているので、毒が塗られていることは確実だった。

「うわぁ、危ないなー。でーも、このくらいなら余裕だよねー」

 ライラックは目に見える挑発をしてみた。
 しかし敵はよっぽど冷静らしく、ライラックの声に反応することはない。
 それから次の矢が放たれることはなく、ライラックは罠の海城に奮闘する。

「まあいっか。他にも罠が仕掛けてあるだろうから、適当に解除してれば何かあるでしょ」

 ライラックは楽観的に考えていた。
 自分に対して殺す気で放たれた矢を手に取りへし折る。地面に掘られた落とし穴も簡単に飛び越えてしまった。
 さらには木の後ろに設置されていた罠も軽々と見つけ出すと、ライラックは首を傾げた。

「うーん、罠ばっかりだとつまんないなー。よーし、次攻められる前に私の方から先制攻撃してみよー」

 ライラックは罠を掻い潜るのに飽き飽きしながらも動きは洗練されていた。
 木の上に仕掛けてある毒矢も糸で叩き落とし、ライラックは寄り道もせずのまっすぐ進んでいた。
 若干魔力の濃度が濃くなった気がするが、ライラックは一切動じることなく不敵な笑みを浮かべていた。
 この先に誰かいると、冷静さに隠れてひしひしと殺気が漏れていたからだ。

「この先にいるねー。しかもこの気配、どっかで感じたことあるようなー。まあいいか」

 ライラックは身に覚えのある気配に感化されたが、楽しそうにしていた。
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