1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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悪魔教会編

202.ライラックと狩人③

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 お互い無言でジッとしていた。
 押し黙っているのではない。お互いに間合いを読み合い、距離を取っている。
 ライラックも教会の幹部服を着た何者かも、どちらにせよお互いの強さを実感していた。
 とは言え、ライラックは常に優位に立っている。

(さてと、どうやって遊ぼうかなー)

 ライラックは不敵な笑みを浮かべてしまった。
 しかしすぐに気を取り直し、表情の緩みを硬直させた。
 強張った表情と緩んだ表情が入り混じり、完全な無を演出していた。

「喋らないの?」

 ライラックは無言なままだったが、一応話しかけてみた。
 しかし口を利いてくれる雰囲気はなく、ライラックはつまらなそうにしていた。
 まだお互いに攻撃はしない。

「ねえ、この小屋は何? ビックリさせるためのものじゃないよね?」

 相変わらず無言を貫いていた。
 とは言えそれだけ冷静かつ相手を目を見て話さないことから、こちらの誘導について来ようとしない訳だ。なかなか手強い相手になりそうだ。

「さっきの強い言葉。殺気が混じってたね。あっ、別にかけてないよ?」

 面白くなかったのか、やっぱり無言だ。
 挑発にも乗ってこない当たり、機械人形なんじゃないかと疑いそうになるが、若干足が動いた。流石に棒立ちはしんどいはずだ。

「それに教会に服を着こんでいるみたいだけどさー、華奢な体つきなんだね」

 急に殺気が込み上げてきてライラックは当てられる。
 しかし当のライラックは一切怯むことはない。脈拍すら変化せず、至って平穏を味わっていた。

「女の人がそんな殺気を放ったら、みんな怖がっちゃうよ?」

 試しに挑発をしてみた。
 すると今度は明らかな殺気を放ち、ライラックを一蹴しようと試みている。
 けれどライラックにはまるで効かず、その口が塞がることはなかった。

「もしかしてお姉さんってさ、自分が女だから教会に加担してるのかな?」
「……」
「おっと、首が少し上がった。ビンゴだね」
「……」
「今度は下げた。わかりやすいね。じゃあもう少し挑発をしようかな。お姉さん、何か差別的なこと受けたんでしょ。獣人が一部の国ではいまだに差別されてるみたいだから、その影響で、性別による差別とかもね」
「……」
「未だにそんなのがあるなんておかしな話だよね。男も女も関係ないのに。だって屈強な男の兵士をぶっ倒しちゃう強い女の人もいるんだよ?」
「……黙れ」
「えっ、何か喋った?」
「黙れと言ったんだ」
「そっかそっかー。まあこの国にいる限りはそんな心配も要らないもんね。でもさー、困るんだよね。この町で悪さをされると、私のやることも増えるから正直面倒なんだー」

 ライラックはギョロっと瞳を浮かべた。
 まるで睨みつけるような、嘲笑うかのような、ライラックの瞳は人の嫌がることを見据えているようで気持ちが悪かった。

「だからさ、そう言うの止めようよ。差別を終わらせるためにたくさんの命を失うなんて無意味な話しでしょ?」
「何が言いたい」
「だからね、私には関係ないの。周りを巻き込まないで欲しいってことだよ。お姉さんもそれが本心なんでしょ?」

 ライラックは既に本心を理解していた。
 罠による攻撃あくまでも牽制。毒矢はやりすぎな気もするが、それでもライラックにはまだ呑気で悠長だと思った。

「それの本当で恨んでいるなら直接叩けばいいでしょ?」
「それができないから力に頼る。抗えないから全てを壊す。それが戦争だ」
「結果論だね。誰の目的でも他人を巻き込むような争いには何の価値もない。血を流すような行為って、全部が全部無意味なんだよ。人の血の上で成り立っている部分は合っても、知恵を持っているのに力で解決しようとするなんて、馬鹿げているって話なんだよね」

 ライラックはもっとものことを言い出した。
 これ以上無駄な争いに関わる必要はない。
 それを終わらせる武器が言葉だ。言葉は最大の武器になる。
 人の心を動かすのも逆に貶すのも、全部言葉の力が関わっている。
 その思いを信じて、ライラックは得意な糸による戦闘を避けていた。
 何故なら目の前にいる女には、まだ戻ってくる見込みがあるからだ。

(ルカの考えを参考にしてみたけど、これで降伏してくれたらいいんだけど……)

 ライラックは望み薄な可能性に賭けてみた。
 けれどダメだった。ライラックの言葉を受けて、女は奥歯を噛んで前歯の犬歯を剥き出しにした。

「お前に何がわかる」
「何もわからないよ。わかる気もない。同じ立場には立てないからねー」
「だったら黙っていればいい。黙って、黙ってここで消え失せればいい!」

 静かな平穏が一瞬で崩れ去ってしまった。
 小屋の中に心からの叫びが上がり、瞬く間に戦闘体制に移行した。
 ライラックも意識を切り替えて糸を出そうとしたが、それよりも何倍も速く目の前に銀色の鏃が放たれていた。どうやらボウガンを仕込んでいたらしく、華奢な体を気にしていたのはボウガンを装備していることを気付かれたくなかったかららしい。

「なかなかやるね。でも、私には通用しないよー」

 けれどライラックはいつも通りの態度で放たれた矢に対抗した。
 糸を展開すると、銀の鏃を全て叩き落としていた。
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