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ナタリーの喜ばしい日常
223.「ルカさん、ご飯食べましょう!」
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「失礼します」
ルカは校長室の扉を叩いた。
急にナタリーの呼び出され困惑気味の私を前に、ナタリーは笑みを浮かべる。
「どうしたのナタリー?」
「あのルカさん。もしよろしければ、今晩ご飯を食べに行きませんか?」
「えっ? 校長と2人きりで」
「はい、2人きりです」
ルカはやはり困惑してしまった。
するとナタリーはコホンと咳払いをする。
「もちろん意味があります。この間の教会の一件。一応一段落つきました」
「そうなんだ。それじゃあ後で報告してよ。私は帰るから」
「違います。今回の教会の一件、千年前の事件を発端としたものですよね。事後報告も兼ねて、今回の末路と今後のことについて、はっきりとした結論が出たんです」
「まあ教祖は死んじゃったからね。……それって、絶対にやらないとダメ?」
「もちろんです。ルカさんには関係ない話かもしれませんが、私もルカさんに心酔する信者の1人として是非お話の機会をお与えください」
「はぁ。面倒くさいから、いいよ。そういう心酔思考、好きじゃないんだよね」
ルカは溜息を吐いた。しかしナタリーは喜んでくれたのか、笑みを浮かべて「はい」と答えた。
この心酔気味は異常だと、ルカは「やれやれ」と頭を抱える。
「それでは今晩6時に商業街の一画。赤い屋根と提灯が吊った一見すると居酒屋のような雰囲気を漂わせる食事処でお待ちしています。私の名前を言えば奥に通してくれるはずです。それでは、待っていますから」
「はいはい」
やけに注文が多いなとルカは思ってしまうのだった。
「それで来てみたけど、多分ここだよね?」
ルカは赤い屋根に同じく赤い提灯が吊るされた一見すると居酒屋のような佇まいの店の前にやって来た。
この国では学生の内はお酒が飲めない。
そのため、本来なら居酒屋に入るのはご法度なのだが、ルカは何の気なしに入ることにした。
「入ろっかな。最悪、大人のふりをすればいいもんね」
ぶっちゃけるとルカは千年間生きているので大人みたいなものだった。
とは言え、歳も取らないので見た目は変わらない。
お酒も飲まないので、提灯に仄かに灯った赤い光に誘われて、不愛想に店の中に入った。
すると、中は外の外観とはまるで違う様子だった。
居酒屋のような独特で陰鬱な空気はなく、ルカは目を丸くした。
何度も瞬きをして突っ立ってしまうのは、店の中で忙しなく動き回る女性の姿があったからだ。
「はい、麻婆豆腐に青椒肉絲ですね。こっちのお客様はオムライスですね。少々お待ちください」
「すみません、唐揚げと生ビールまだ?」
「ただいま。って、いらっしゃいませ」
あまりの忙しなさにドン引きしてしまった。
見たところ大人だけではなく子供連れの家族まで食事を楽しんでいる。
カウンター席にテーブル席。それから座敷まで用意されていて、ルカは意外に思った。
「お客様はお1人ですか?」
「ナタリーさんに呼ばれているんですが、ご来店でしょうか?」
「ナタリーさん!? は、はい。奥の座敷にどうぞ」
ルカは店員に言われて奥の座敷に通された。
カウンター席やテーブル席のさらに奥。お手洗いのさらに奥に用意されていた個室。
広々とした間取りが取られ、木製の一見すると壁のような扉を横にスライドさせた。
「あっ、ルカさん。お越しいただきありがとうございます。こちらにどうぞ」
「それはいいけど、ナタリーはどうして下座に座っているのかな?」
「はい。今回は私が呼んだ側ですので、下座に座るのが礼儀かと思いました。それに加えて、私はルカさんのことを私よりも上の存在だと……」
「馬鹿。私はそういう上下格差が好きじゃないこと、知っているよね? はぁ、チェンジ」
ルカは指をくるりとさせた。
ナタリーはショックを受けて落ち込んだが、ルカに言われたことでシュンとしつつも「はい……」と席を入れ替えた。
立場的にもナタリーの方が上座なのは間違いない。
「第一命の一つや二つ救っただけで心酔されても困るんだよね」
「そうでしょうか? 幾度となく命を救われれば、心酔しても当然だと思いますが?」
「私はそうは思わないよ。人の価値観を否定する気はないけど、その心構えはいつか自分の身を殺すことになる。一種の毒でしかないんだよ」
ルカは説教ではないと思ってはいたが、ナタリーに厳しく当たった。
上下関係なんて必要ない。むしろ私の方が下だとルカは思っていた。
「はぁ。まあいいや。それより、何も食べなかったんだね」
「はい。ルカさんが来るのを待っていましたから」
「別に先に食べていればいいのに。律儀だね」
「これもマナーですよ。さてと、何を頼みましょうか?」
ナタリーは笑みを零した。
メニュー表をルカに差し出し、そこに書かれている品数に困惑した。
「これ本当? どうやってこれだけの量を」
「このお店は昔からこうですよ。家族層にもお1人様の層にも、それこそ著名人の間でも有名なお店です。この個室を知っている人は私を含めて極僅かですけどね」
ナタリーは唇に指を当てた。
内緒ってことらしい。
ルカは校長室の扉を叩いた。
急にナタリーの呼び出され困惑気味の私を前に、ナタリーは笑みを浮かべる。
「どうしたのナタリー?」
「あのルカさん。もしよろしければ、今晩ご飯を食べに行きませんか?」
「えっ? 校長と2人きりで」
「はい、2人きりです」
ルカはやはり困惑してしまった。
するとナタリーはコホンと咳払いをする。
「もちろん意味があります。この間の教会の一件。一応一段落つきました」
「そうなんだ。それじゃあ後で報告してよ。私は帰るから」
「違います。今回の教会の一件、千年前の事件を発端としたものですよね。事後報告も兼ねて、今回の末路と今後のことについて、はっきりとした結論が出たんです」
「まあ教祖は死んじゃったからね。……それって、絶対にやらないとダメ?」
「もちろんです。ルカさんには関係ない話かもしれませんが、私もルカさんに心酔する信者の1人として是非お話の機会をお与えください」
「はぁ。面倒くさいから、いいよ。そういう心酔思考、好きじゃないんだよね」
ルカは溜息を吐いた。しかしナタリーは喜んでくれたのか、笑みを浮かべて「はい」と答えた。
この心酔気味は異常だと、ルカは「やれやれ」と頭を抱える。
「それでは今晩6時に商業街の一画。赤い屋根と提灯が吊った一見すると居酒屋のような雰囲気を漂わせる食事処でお待ちしています。私の名前を言えば奥に通してくれるはずです。それでは、待っていますから」
「はいはい」
やけに注文が多いなとルカは思ってしまうのだった。
「それで来てみたけど、多分ここだよね?」
ルカは赤い屋根に同じく赤い提灯が吊るされた一見すると居酒屋のような佇まいの店の前にやって来た。
この国では学生の内はお酒が飲めない。
そのため、本来なら居酒屋に入るのはご法度なのだが、ルカは何の気なしに入ることにした。
「入ろっかな。最悪、大人のふりをすればいいもんね」
ぶっちゃけるとルカは千年間生きているので大人みたいなものだった。
とは言え、歳も取らないので見た目は変わらない。
お酒も飲まないので、提灯に仄かに灯った赤い光に誘われて、不愛想に店の中に入った。
すると、中は外の外観とはまるで違う様子だった。
居酒屋のような独特で陰鬱な空気はなく、ルカは目を丸くした。
何度も瞬きをして突っ立ってしまうのは、店の中で忙しなく動き回る女性の姿があったからだ。
「はい、麻婆豆腐に青椒肉絲ですね。こっちのお客様はオムライスですね。少々お待ちください」
「すみません、唐揚げと生ビールまだ?」
「ただいま。って、いらっしゃいませ」
あまりの忙しなさにドン引きしてしまった。
見たところ大人だけではなく子供連れの家族まで食事を楽しんでいる。
カウンター席にテーブル席。それから座敷まで用意されていて、ルカは意外に思った。
「お客様はお1人ですか?」
「ナタリーさんに呼ばれているんですが、ご来店でしょうか?」
「ナタリーさん!? は、はい。奥の座敷にどうぞ」
ルカは店員に言われて奥の座敷に通された。
カウンター席やテーブル席のさらに奥。お手洗いのさらに奥に用意されていた個室。
広々とした間取りが取られ、木製の一見すると壁のような扉を横にスライドさせた。
「あっ、ルカさん。お越しいただきありがとうございます。こちらにどうぞ」
「それはいいけど、ナタリーはどうして下座に座っているのかな?」
「はい。今回は私が呼んだ側ですので、下座に座るのが礼儀かと思いました。それに加えて、私はルカさんのことを私よりも上の存在だと……」
「馬鹿。私はそういう上下格差が好きじゃないこと、知っているよね? はぁ、チェンジ」
ルカは指をくるりとさせた。
ナタリーはショックを受けて落ち込んだが、ルカに言われたことでシュンとしつつも「はい……」と席を入れ替えた。
立場的にもナタリーの方が上座なのは間違いない。
「第一命の一つや二つ救っただけで心酔されても困るんだよね」
「そうでしょうか? 幾度となく命を救われれば、心酔しても当然だと思いますが?」
「私はそうは思わないよ。人の価値観を否定する気はないけど、その心構えはいつか自分の身を殺すことになる。一種の毒でしかないんだよ」
ルカは説教ではないと思ってはいたが、ナタリーに厳しく当たった。
上下関係なんて必要ない。むしろ私の方が下だとルカは思っていた。
「はぁ。まあいいや。それより、何も食べなかったんだね」
「はい。ルカさんが来るのを待っていましたから」
「別に先に食べていればいいのに。律儀だね」
「これもマナーですよ。さてと、何を頼みましょうか?」
ナタリーは笑みを零した。
メニュー表をルカに差し出し、そこに書かれている品数に困惑した。
「これ本当? どうやってこれだけの量を」
「このお店は昔からこうですよ。家族層にもお1人様の層にも、それこそ著名人の間でも有名なお店です。この個室を知っている人は私を含めて極僅かですけどね」
ナタリーは唇に指を当てた。
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