1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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雷鳥編

232.こんな軽装備じゃ危ない

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 村長兼管理局のブルズから依頼を引き受けたルカ達学生は、いよいよ雷山に登ることにした。
 とは言え、一つだけ問題がある。
 シルヴィアは自分達の装備を心許ないと感じていた。

「ねえみんな。本当にこれで登れるの?」
「いや、登るしかないんだよ」
「そうは言っても、もう少しマシな言い訳はないの!」

 シルヴィアは寒さの余り苛立ちが募った。
 自分達の格好はかなり奇抜で、温かい服を下の大量に着こんで、その上から黒いコートを羽織っている。
 しかしコートはそれほど厚くもなく、今から雪が積もった山に足を踏み入れるとは言っても、不安だけが強烈に襲ってくる。

「大丈夫ですよ。シルヴィアさん」
「貴女はそうかもしれないわね」
「それって私が変ってことですか? 確かに先生と一緒に雪山に登ったことはありましたけど……あの時もそこまで寒く無かったですよ?」
「それはダリアだからよ」

 不安そうにしているシルヴィアを励まそうとしてダリアが声をかけた。
 しかしシルヴィアはダリアを一蹴してしまう。

 それもそのはずダリアに冬の寒さも雪の冷たさも関係ない。
 炎を使うことができるダリアにとって寒さも熱量の糧でしかない。

 そのことはルカ達も承知の上で、ライラックは後ろからダリアにその忍び寄る。
 ギュッと抱きついてムニュムニュと頬を擦り合わせた。

「うわぁ! ライラックさん?」
「本当だぁー。すっごく温かいー」

 ライラックは表情を朗らかにしていた。
 しかしシルヴィアはそんな彼女を見て睨みつける。

 熱を閉じ込めた糸を全身に巻き付けて包帯のようにしているからライラックも本当は寒くないのだ。
 その証拠に、指先まで完全に糸で覆いつくしている。
 凍傷を避け、それでも糸を使うことができるのは彼女が普段から筋トレをしている証拠だろう。

「この日のために筋トレしておいてよかったよー」
「むっ。私の風が熱風を起こせないことを知って……」
「あれ? シルヴィアって風は起こせるのに、熱風は作れないの?」
「あ、当たり前よ! だって私の風は無風から風を起こすんだもん。周囲の温度が関係して来るわ」

 シルヴィアは痛いところを突かれてしまった。
 プクッと頬を膨らませてそっぽを向いてしまう。

 ここで熱風を起こせれば少しは寒さを凌げるのに。
 自分の不甲斐なさを痛感し、シルヴィアは表情を曇らせた。

「では、気温が高すぎると風は……」
「もちろん熱風に変わるわ。でもここじゃ熱を意図的に起こしても、熱風は作れないわよ」
「寒いからね。そういう面では不便だけど……」

 ルカは黙り込んだ。
 せっかくなので登る前に閃きを与えてみることにした。

「何よ、急に黙って」
「シルヴィ。一つヒントをあげるよ」
「う、上から目線ね。でも聞いてあげるわ」

 どっちが上から目線なんだと思ったのはルカの心の中だけの話。
 それに気にも留めていないので、笑みを受けベてヒントを送る。
 今はまだ閃かなくても、そのうちわかる時が来る。

「周囲の気温で風の温度が変化するなら、風そのもので温度を変えればいいんだよ。もちろん魔力はたくさん使うけどね」

 このヒントでどれだけ変化が生まれるかは見ものだ。
 ルカはシルヴィアを試すようだったが、何かヒントになったのか、だけどそれを実行に移せない。
 力の無さを今は痛感してもらうとして、ルカは軽装備についての説明も兼ねて早速登り始めた。


 ルカ達は雷山に最初の一歩目を踏み出した。
 雪山とは言っても最初はなだらか。
 八合目以降が急斜面に変わるだけで、そこまでは非常に登りやすく、雷が落ちやすいこと以外は慣れていればまだハイキングができる。

「さ、寒い……」
「調べた限りですと、雷山は夏頃に登るのがセオリーらしいです」
「今と真逆じゃない。もう、如何して……あれ?」
「やっと気が付いた?」

 シルヴィアは前言撤回した。
 全然寒くない。むしろ心地良いほどで、ライラックもテーピングのように巻いた糸を解き始めていた。

「ちょっと如何して!? 何で寒くないの?」
「ナタリー校長が用意したものだよ? そう簡単に支障をきたすわけがないよ」

 ルカはもっともなことを言った。
 とは言えこのコートは凄い。

 長さを変えることでジャケットとしても使えるだけでなく、暑さ寒さも関係ない。
 それを可能にしている特殊繊維は普通では手に入るような代物ではなく、この素材を作れる奴は1人しかいない。

 しかも全員に与えられた特殊装備の数々。
 ルカの懐中時計を始め、それぞれの個性が活かされていた。

「まあ今回は軽装備ってことに惑わされてたね」
「そうね。今思えば、校長が用意したものだもんね」
「でもさ、最近になってこのコート着ること増えたね」
「私は始めて着ましたが、かなり良いものですね。市販化は難しそうです」

 それはそうだよ。こんなものを定期的に出されたら世の中の生地生産はお終いだ。
 パサパサと襟の部分を開いたり閉じたりした。

「でもこの生地と繊維はどうやって作っているのかしらね?」
「王国にスカウトしたいです」

 ダリアまでもこう言い張る始末だ。
 けれどそれは無理だと知っている。

 ルカはかつて彼女の作ったものが世間を揺るがせたことを知っている。
 今は何をしているのか。変な子だけど面白いと思いだした。
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