1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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雷鳥編

238.ドリルハゲタカ

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 ソイツはいた。
 鋭く尖ったくちばしをして、黒い羽をはためかせて急加速して迫っていた。

 目の前に現れた鳥の嘴はドリルのように鋭く、全てを貫くためにできている。
 それだけじゃない。頭の毛はなく、無駄な空気抵抗を生まないで、敵を嘴で貫き啄むためのあった。
 如何やらルカ達は面倒な相手に出くわしてしまった。

「ル、ルカさん!」
「ちょっと、如何してこんなところに居るのよ。って、居る方が当たり前よね」

 ダリアとシルヴィアが叫んだ。
 ルカは表情一つ変えないながらも、面倒だなと素直に思う。

 あのモンスターは鋼のように硬いドリル上の嘴を持っていて、魔法すら反射してしまう。
 魔術なんてあのモンスター相手には通用しない。
 もちろん遠距離攻撃限定だった。

「ドリルハゲタカ。確かに面倒な相手だし、転落して落ちている手前環境相性は最悪。だけど……ねっ!」

 ルカはみんなの代わりに戦うことにする。
 空中で体を制御して、《スカイウォーク》を発動した。

「とりあえず私が倒すから、みんなは先に降りていて」
「ちょっと、1人でやるの!」
「まあ見ててよ。魔術で相手してみるから」

 ルカは手をパンと合わせた。
 手のひらの中で風を集めて指先に集中する。
 イメージするのは風を纏った刃だ。けれどそれだけでは足りない。
 もっと、もっと強いイメージを膨らませるためルカは別の要素を足した。

「ここに残り二つの要素。一つは全てを断ち切る絶対的な炎。そしてもう一つは全てを狭間に落とし込む力の本流」

 風で形成した刃に炎を纏わせて酸素を爆発させる。
 轟々と音を立てながら、バチバチと火花が散った。
 
 けれど何かが違う。
 ここにはルカの得意な魔法が魔術として混ぜられている。

「爆発で時空間に歪みを起こす。これが私の《ディストーション・ブレード》!」

 ちょっと決め顔でルカは言ってみた。
 右腕に集めた風の刃がオレンジ色に変わり、今では赤紫色に変わっていた。
 火花が雷のようになり、空間を切り裂く。

「はい、お終い」

 ルカが右腕を振り下ろすと、トリルハゲタカは危険を感じ取り、嘴をドリルのようにした。
 このまま向かってくるようで、ルカは「面白い」と不敵な笑みを浮かべる。

 ドリルハゲタカが体を窄めて一本の槍状になった時、嘴のドリルは真価を発揮する。
 全ての魔魔法を貫く一撃に変わり、魔法使いの命を奪う。
 致命傷を与えられ再起不能になった魔法使いをルカは何人も知っている。
 まさしく並みの魔法使いでは相手取ることもできない強敵だった。

 が、こんなことで折れてはいけない。
 ルカは逆にひしゃげるぐらい折る気でいた。

「負けないよ。だって私の時空魔法をそのドリルじゃ破れない」

 振り下ろした刃は空間に歪みを生んだ。
 大きな裂け目を生み、ドリルハゲタカは飲み込まれた。
 嘴は飲み込まれ、開いた裂け目から脱出することが叶わない。

「ふぅ。ドリルハゲタカは近接で倒せるんだよね」

 いつも以上にくたびれた。
 ルカでも慣れない魔術を魔法のように構築するのはかなり大変な様子で、額から汗が零れる。
 けれどそれ以上でもそれ以下でもなく、ルカの取ってはベストな形で新しい必殺技を会得できたと満足した。

「シルヴィたちは大丈夫かな? 無事に降りられたらいいけど……まあいいよね」

 ルカは心配することを止めた。
 シルヴィアたちはルカが思う以上に強い。
 《スカイウォーク》でゆっくり崖の下に降りる際、急に亜空間から話したそうな声が聞こえた。

『重力ヲ操ル気ハナイカ?』
「バルトラ? それもいいけど、私ができることだからね。借りなくても大丈夫かな」
『ツマラナイ』
「つまらない? 珍しいことを言うね」
『オ前ノ亜空間ハ居心地ガ良イ。ダガツマラナイ』

 つまり外に出たいようだ。
 そうすれば力を貸してくれるらしいけれど、バルトラをそのまま外に出すのはあまりに危険。
 しかも肉体はこちら側の世界には存在しない。
 今あるのは魂だけで、肉体を与える必要があった。

「本当で力を貸してくれるんだよね?」
『問題無イ。悪魔ノ契約ハ命ノ契約』
「だろうね。命を懸ける気はないけど、ちょっと面白いかも」

 ルカは少し考えてから表情を緩めた。
 するとバルトラは『期待シテイル』と言い残し、亜空間の中に消えた。
 何がしたかったのかわからないが、そうこうしていると地面が見える。
 どうやらシルヴィア達も無事に降りられたらしく、ルカの姿を確認し安心していた。

「あっ、やっと降りてきた」
「ルカさん、ドリルハゲタカは!」
「もちろん倒したよ。それより凄いね。まさか下からでも上に登れるようになっているとは……もしかして昔からこの山はこの道を使っていたのかな?」

 ルカが崖下に降り、周りを見回すと気がかりなものがあった。
 最近は点検されていないものの、昔使われていたであろうロープや楔が落ちている。
 錆び付いて金属がボロボロになっていたが、直近五十年ぐらいだとルカは推測した。

「何だ、結構最近までこのルートは使われていたんだね。もしかして、上から落ちる人が多かったから同時に使われなくなったとか?」
「ルカって時々怖いこと言うわね。それに五十年って最近かしら?」
「最近だよ。それに五十年の根拠はある」
「根拠って何ですか? もしかして、この硬貨でしょうか?」

 ダリアが拾ったのは銀色の硬貨だった。
 硬貨とは言ってもお金としての価値はない。むしろ記念メダルのようなもので、シルヴィアは納得した。
 むしろ飛びついた。

「それって今から四十五年前に配られたペイルアベントの限定メダルよね!」
「ペイルアベント?」

 知らないワードが飛び出した。
 けれど聞く程でもなさそうなのでスルーすると、わかっていないルカ達にシルヴィアは短く語った。
 ペイルアベントは人の名前で、有名な魔術師らしい。
 けれどその名前に聞き覚えが若干あるルカは首を捻ってしまっていた。
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