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雷鳥編
237.崖に真っ逆さま
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体が宙に浮いている。
しかも真っ逆さまで、頭が下になって浮いている。
飛行魔術で失敗するとよくあることだと聞いたことがあるが、今回は魔術なんて一切使っていない。
ルカ達は揃いも揃って宙に浮いていた。
もちろんただ浮いているわけじゃない。
むしろ空中に投げ出され、重力の束縛の下に引き寄せられようとしている。
難しいことを言って説明しようとしたが、要するにピンチだ。
ルカ達は崖から転落した。
「いやぁ、マズいことになったね」
ルカは呑気に腕を組んでいた。
まさか全員が糸を体に巻き付けていたことをすっかり忘れていたなんて。
不覚というよりも凡ミス。ルカは軽く頷いて納得した。
「まあ、こういうこともあるよね。うんうん」
「呑気に納得しないでよね!」
シルヴィアが激怒した。
崖から転落したルカ達はこのままではぐちゃぐちゃになってしまう。
にもかかわらず余裕そうにしているのは、ルカ達が魔術師だからだ。
「大丈夫だよシルヴィ。私達魔術師だよ? この程度余裕だってー」
「そういう倫理観が欠如した言葉は止めなさい。それにライだって飛べないでしょ!」
「飛べないけど壁になら張り付けるよ?」
ライラックは《粘着の糸》で壁に張り付くことができる。
けれどそれをしないのは全員を一本の強力な糸でくくっているからで、1人が変なことをすると全員に負荷が掛かるのだ。
「でも誰が崖に落ちたのかな?」
「私は落ちていませんよ」
「私もです。ルカさんは?」
「質問した私が落ちたと思う?」
責任を追及するわけではない。
けれど誰がやったのか気になったので目配せすると、シルヴィアが視線を落とした。
如何やらシルヴィアが崖から半歩出してしまったらしい。
「まあそれはいいとして、飛べる人は飛んで。ライラックはシルヴィアにでもくっ付いて、ダリアは私に掴まって」
「は、はい!」
とりあえず飛び慣れしているルカとシルヴィア、ブルースターの3人で2人をサポートする。
ダリアは嬉しそうにルカの手を握ると、そのまま抱きついた。
ライラックも糸をシルヴィアの体に巻き付けると、「にひひ」と笑っていた。
「それじゃあ下に降りるよ」
「ちょっと待って、如何して上に登らないの?」
シルヴィアはルカの言葉に疑問を抱いた。
如何して上に戻ろうとしないのか。その真意があやふやで、よくわからない。
「いや、上に言ったらダメだよ。罠が張り巡らされているだろうから、奇襲で一番上の奴を叩かないと」
上から登ってもう一度同じ道順で進んでも、密猟者達はおそらく準備をしているはずだ。
小細工にしかならないがたくさんの罠を張り巡らせて妨害してくるはず。
そんなものにいちいち付き合っていたら日が暮れてしまう。
けれど山頂まで一気に飛ぶと急激な気圧の変化が襲ってくる。
飛び慣れていない2人やシルヴィアにはかなりきついはずだ。
後遺症を持たれても困るので、今回は比較的安全かつスピーディーな行動方針に切り替えた。
「だから一番下に降りるよ。下からなら急げば奴らよりも上を取れるから」
「それはいいけど、下に降りるってことはまた歩くのよね?」
「しかも長い距離をね。でも全員強化系の魔術を遣えば体力の消費も減るから余裕だよ」
ルカの発想はかなりアバウトで大胆な脳筋作戦だった。
けれど今更文句を言える人はいないので、作戦を飲み込む。
「ん? 下の方、凄いね」
「ライ、急に何言っているのよ。そこ何てまだ見えない……えっ?」
ライラックが指を差すと、崖の壁際に木が生えていた。
如何してこんなところにと思ったのは一瞬で、シルヴィアの頬が青く染まる。
白い白骨化した頭蓋骨が葉っぱのベッドの上に転がっていた。
昔崖から転落した人のものだろう。かなり時が経っているようで、肉片も残っていない。
「ちょ、ちょっと。これは怖いわね」
「一般人はこうなるってことかな。でも変だね」
「何が変なんですか、ルカさん?」
ダリアがルカに質問した。
ルカは今の一瞬チラ見した骨に違和感を覚えたのだ。
本当細かいもので、目を凝らしていないと見出せない。
むしろ意識の外側のようなもので、ブルースターは片鱗を見ていた。
「削れていましたね。左腕」
「そうだよ。時間が経ったり自傷したからと言って左腕だけがあんな風に抉れるとは思えない。むしろ刺し傷でもなく、アレは啄み傷だね」
「啄み? ってことは何、もしかしてモンスターの仕業ってこと?」
ライトニングバード以外で飛行系のモンスター。
そう言えば危険モンスターリストに登録されていた鳥型モンスターが一匹いた気がする。
「みんな急ぐよ。最悪重力を反転させてでも急ぐから」
「ちょっと急に何言いだすのよ」
「そうだよ。目の色変えちゃって……!?」
ルカが切羽詰まったように早口になったので、シルヴィア達は不思議そうになる。
けれどライラックは気が付いた。背後からバサバサと空気を切る音と接近する殺気に敵意を示す。
ルカとライラックが気が付いた崖下の敵。ゆっくりと死神の嘴を見せる。
ソイツが迫っていたのだ。
しかも真っ逆さまで、頭が下になって浮いている。
飛行魔術で失敗するとよくあることだと聞いたことがあるが、今回は魔術なんて一切使っていない。
ルカ達は揃いも揃って宙に浮いていた。
もちろんただ浮いているわけじゃない。
むしろ空中に投げ出され、重力の束縛の下に引き寄せられようとしている。
難しいことを言って説明しようとしたが、要するにピンチだ。
ルカ達は崖から転落した。
「いやぁ、マズいことになったね」
ルカは呑気に腕を組んでいた。
まさか全員が糸を体に巻き付けていたことをすっかり忘れていたなんて。
不覚というよりも凡ミス。ルカは軽く頷いて納得した。
「まあ、こういうこともあるよね。うんうん」
「呑気に納得しないでよね!」
シルヴィアが激怒した。
崖から転落したルカ達はこのままではぐちゃぐちゃになってしまう。
にもかかわらず余裕そうにしているのは、ルカ達が魔術師だからだ。
「大丈夫だよシルヴィ。私達魔術師だよ? この程度余裕だってー」
「そういう倫理観が欠如した言葉は止めなさい。それにライだって飛べないでしょ!」
「飛べないけど壁になら張り付けるよ?」
ライラックは《粘着の糸》で壁に張り付くことができる。
けれどそれをしないのは全員を一本の強力な糸でくくっているからで、1人が変なことをすると全員に負荷が掛かるのだ。
「でも誰が崖に落ちたのかな?」
「私は落ちていませんよ」
「私もです。ルカさんは?」
「質問した私が落ちたと思う?」
責任を追及するわけではない。
けれど誰がやったのか気になったので目配せすると、シルヴィアが視線を落とした。
如何やらシルヴィアが崖から半歩出してしまったらしい。
「まあそれはいいとして、飛べる人は飛んで。ライラックはシルヴィアにでもくっ付いて、ダリアは私に掴まって」
「は、はい!」
とりあえず飛び慣れしているルカとシルヴィア、ブルースターの3人で2人をサポートする。
ダリアは嬉しそうにルカの手を握ると、そのまま抱きついた。
ライラックも糸をシルヴィアの体に巻き付けると、「にひひ」と笑っていた。
「それじゃあ下に降りるよ」
「ちょっと待って、如何して上に登らないの?」
シルヴィアはルカの言葉に疑問を抱いた。
如何して上に戻ろうとしないのか。その真意があやふやで、よくわからない。
「いや、上に言ったらダメだよ。罠が張り巡らされているだろうから、奇襲で一番上の奴を叩かないと」
上から登ってもう一度同じ道順で進んでも、密猟者達はおそらく準備をしているはずだ。
小細工にしかならないがたくさんの罠を張り巡らせて妨害してくるはず。
そんなものにいちいち付き合っていたら日が暮れてしまう。
けれど山頂まで一気に飛ぶと急激な気圧の変化が襲ってくる。
飛び慣れていない2人やシルヴィアにはかなりきついはずだ。
後遺症を持たれても困るので、今回は比較的安全かつスピーディーな行動方針に切り替えた。
「だから一番下に降りるよ。下からなら急げば奴らよりも上を取れるから」
「それはいいけど、下に降りるってことはまた歩くのよね?」
「しかも長い距離をね。でも全員強化系の魔術を遣えば体力の消費も減るから余裕だよ」
ルカの発想はかなりアバウトで大胆な脳筋作戦だった。
けれど今更文句を言える人はいないので、作戦を飲み込む。
「ん? 下の方、凄いね」
「ライ、急に何言っているのよ。そこ何てまだ見えない……えっ?」
ライラックが指を差すと、崖の壁際に木が生えていた。
如何してこんなところにと思ったのは一瞬で、シルヴィアの頬が青く染まる。
白い白骨化した頭蓋骨が葉っぱのベッドの上に転がっていた。
昔崖から転落した人のものだろう。かなり時が経っているようで、肉片も残っていない。
「ちょ、ちょっと。これは怖いわね」
「一般人はこうなるってことかな。でも変だね」
「何が変なんですか、ルカさん?」
ダリアがルカに質問した。
ルカは今の一瞬チラ見した骨に違和感を覚えたのだ。
本当細かいもので、目を凝らしていないと見出せない。
むしろ意識の外側のようなもので、ブルースターは片鱗を見ていた。
「削れていましたね。左腕」
「そうだよ。時間が経ったり自傷したからと言って左腕だけがあんな風に抉れるとは思えない。むしろ刺し傷でもなく、アレは啄み傷だね」
「啄み? ってことは何、もしかしてモンスターの仕業ってこと?」
ライトニングバード以外で飛行系のモンスター。
そう言えば危険モンスターリストに登録されていた鳥型モンスターが一匹いた気がする。
「みんな急ぐよ。最悪重力を反転させてでも急ぐから」
「ちょっと急に何言いだすのよ」
「そうだよ。目の色変えちゃって……!?」
ルカが切羽詰まったように早口になったので、シルヴィア達は不思議そうになる。
けれどライラックは気が付いた。背後からバサバサと空気を切る音と接近する殺気に敵意を示す。
ルカとライラックが気が付いた崖下の敵。ゆっくりと死神の嘴を見せる。
ソイツが迫っていたのだ。
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