316 / 733
聖夜編
314.バイトの内容はハートフル?
しおりを挟む
ルカは無垢な笑顔で無理やり黙らせた。
余計なことを言おうとしたので仕方が無かったが、サンタ・ク・ロースは外れた入れ歯を付け直す作業で大変そうだった。
そんな中でシルヴィアとダリアが戻って来た。
二人ともこの状況が飲み込めず、一段と重たくなった空気に押し潰されそうだった。
「な、何よこれ」
「空気が重たいですね。お茶を淹れてきました。皆さんも如何ですか?」
ダリアが空気を換えようとして、トレイに乗せたカップを全員に差し出した。
ルカ達も受け取り一口啜ると、口の中いっぱいに茶葉の爽やかな味が広がった。
「これは高級な茶葉ですね」
「そうだね。かなり飲みやすい」
「ふぉっふぉっ。歳を取るとのう、喉に引っかからない飲み物の方が良いんじゃよ」
サンタ・ク・ロースは老体を患っていた。
ルカ達にとっては飲みやすいお茶でも、ゆっくり喉に詰まらせないようにしていた。
「大変ですね」
「そうじゃよ。だからこそ、ナタリーに頼んだんじゃ」
話が見えてこなかった。
今のところただ悪態を付いただけなので、印象最悪だろうとルカは思っていた。
「それで、サンタさん。私達を呼んだ理由と言うのは?」
口火を切ったのはブルースターだった。
サンタ・ク・ロースは顔を上げると、胸を撫でていた。
それから一呼吸を入れると、ゆっくり大事な話をした。
「ナタリーに頼んでやって来てもらったのは他でもない。この街の、クリスマスを盛り上げるためじゃ」
「「「クリスマスを盛り上げる?」」」
それだけでは意味が分らなかった。
とは言えサンタ・ク・ロースはこの街の市長なので、そう言った役職的な意味で言えば納得できた。
けれど話はそういう事ではなさそうだ。
「お主らが想像しているのは市長としてのクリスマスに手伝いじゃろ。それは違う。儂の役割は市役所の他の者が代わりを引き受けてくれるはずじゃ」
「それじゃあ何を?」
「クリスマスは聖なる夜に執り行われる祭りということになっておるじゃ。そしてこの祭りにはある伝統があっての。子供たちにプレゼントを届けるんじゃ」
「「「プ、プレゼント?」」」
話があまり見えてこなかった。
困惑するルカ達にサンタクロースは概要をよりまとめて話してくれた。
如何やらこの街では日頃良い子にしている子供たちにプレゼントを届ける風習がある。
期日は十二月二十五日の深夜。二十四日と二十五日の間。その僅かな期間の間に、光りの速度で朝までに届けるそうだ。
「そ、それがバイト? 私達が呼ばれた理由?」
「うむ。子供の夢を守る立派な仕事じゃよ」
確かにハートフルだとは思った。全員無言で黙ってはいたが、何も悪いことではなかった。
しかしダリアが気になっていることを言った。
「そのお仕事は市役所の方々ではダメなのでしょうか?」
「ダメではないが、それでは夢が無い。そうは思わんか?」
「た、確かに……」
ダリアも納得した。
普通の人が届けるよりも魔術師が内緒で届けた方が夢はあった。
「なーるほどね。つまりバレないようにプレゼントを届けろってことか」
「そうみたいね。でも今までは如何やっていたのかしら?」
「如何やってって?」
「簡単な話しよ。私達は五人だけど、今までは……ってまさか!」
シルヴィアはサンタ・ク・ロースを見た。
「うむ」と自信ありげだった。
「いかにも、儂が一人でやっとったぞ」
それは凄かった。老体に鞭を打ち、子供達のために頑張っていたんだ。
シルヴィアとダリアは単純に「凄い」と口走った。
それが嬉しかったのか、サンタ・ク・ロースはニヤニヤしていた。
「ひ、一人でって!? 如何やって?」
「儂の魔法じゃよ。お主は体感したじゃろ?」
サンタ・ク・ロースはブルースターに視線を合わせた。
心当たりがあることが一つあったので、「もしかして?」と考えだした。
「あの時、急に私の魔術が威力を増したのは……」
「そうじゃよ。これも儂の魔法があってこそじゃ」
ブルースターは謎が解けて口を開けていた。珍しい表情だった。
先程までは助けられた感覚はあったものの、如何やって助けて貰ったのか分からなかった。
話の流れで何となく助けられたと思ったのだが、改めて確信に変わった。
「あの、失礼ですがサンタ・ク・ロースさんの魔法はどんな物でしょうか?」
「ん? 気になるか?」
「はい。魔力を増幅させる魔法だとは思いますが……すみません。出しゃばりました」
ブルースターは興奮気味だったが、すぐに抑え込んだ。
魔術師も魔法使いも自分の武器を教えたくはなかった。
とは言え詳細を開示することで、その力を何倍にも膨らませることもできたので、一概に悪いとは言えなかった。
けれどそう易々と教えてくれる訳でもなかった。
だけどサンタ・ク・ロースは自分の魔法に付いて少しだけ教えてくれた。
「良いじゃろう。どうせ理解はできんからの。儂の固有魔法【聖灰】は魔力を飛ばしたり引き寄せたりできるんじゃ。原理に関しては秘密じゃがな。ふぉっふぉっふぉっ」
サンタ・ク・ロースは楽しそうだった。
しかしながらルカはその固有魔法を知っていたので、(だけどあの魔法は……)と内心心配していた。
余計なことを言おうとしたので仕方が無かったが、サンタ・ク・ロースは外れた入れ歯を付け直す作業で大変そうだった。
そんな中でシルヴィアとダリアが戻って来た。
二人ともこの状況が飲み込めず、一段と重たくなった空気に押し潰されそうだった。
「な、何よこれ」
「空気が重たいですね。お茶を淹れてきました。皆さんも如何ですか?」
ダリアが空気を換えようとして、トレイに乗せたカップを全員に差し出した。
ルカ達も受け取り一口啜ると、口の中いっぱいに茶葉の爽やかな味が広がった。
「これは高級な茶葉ですね」
「そうだね。かなり飲みやすい」
「ふぉっふぉっ。歳を取るとのう、喉に引っかからない飲み物の方が良いんじゃよ」
サンタ・ク・ロースは老体を患っていた。
ルカ達にとっては飲みやすいお茶でも、ゆっくり喉に詰まらせないようにしていた。
「大変ですね」
「そうじゃよ。だからこそ、ナタリーに頼んだんじゃ」
話が見えてこなかった。
今のところただ悪態を付いただけなので、印象最悪だろうとルカは思っていた。
「それで、サンタさん。私達を呼んだ理由と言うのは?」
口火を切ったのはブルースターだった。
サンタ・ク・ロースは顔を上げると、胸を撫でていた。
それから一呼吸を入れると、ゆっくり大事な話をした。
「ナタリーに頼んでやって来てもらったのは他でもない。この街の、クリスマスを盛り上げるためじゃ」
「「「クリスマスを盛り上げる?」」」
それだけでは意味が分らなかった。
とは言えサンタ・ク・ロースはこの街の市長なので、そう言った役職的な意味で言えば納得できた。
けれど話はそういう事ではなさそうだ。
「お主らが想像しているのは市長としてのクリスマスに手伝いじゃろ。それは違う。儂の役割は市役所の他の者が代わりを引き受けてくれるはずじゃ」
「それじゃあ何を?」
「クリスマスは聖なる夜に執り行われる祭りということになっておるじゃ。そしてこの祭りにはある伝統があっての。子供たちにプレゼントを届けるんじゃ」
「「「プ、プレゼント?」」」
話があまり見えてこなかった。
困惑するルカ達にサンタクロースは概要をよりまとめて話してくれた。
如何やらこの街では日頃良い子にしている子供たちにプレゼントを届ける風習がある。
期日は十二月二十五日の深夜。二十四日と二十五日の間。その僅かな期間の間に、光りの速度で朝までに届けるそうだ。
「そ、それがバイト? 私達が呼ばれた理由?」
「うむ。子供の夢を守る立派な仕事じゃよ」
確かにハートフルだとは思った。全員無言で黙ってはいたが、何も悪いことではなかった。
しかしダリアが気になっていることを言った。
「そのお仕事は市役所の方々ではダメなのでしょうか?」
「ダメではないが、それでは夢が無い。そうは思わんか?」
「た、確かに……」
ダリアも納得した。
普通の人が届けるよりも魔術師が内緒で届けた方が夢はあった。
「なーるほどね。つまりバレないようにプレゼントを届けろってことか」
「そうみたいね。でも今までは如何やっていたのかしら?」
「如何やってって?」
「簡単な話しよ。私達は五人だけど、今までは……ってまさか!」
シルヴィアはサンタ・ク・ロースを見た。
「うむ」と自信ありげだった。
「いかにも、儂が一人でやっとったぞ」
それは凄かった。老体に鞭を打ち、子供達のために頑張っていたんだ。
シルヴィアとダリアは単純に「凄い」と口走った。
それが嬉しかったのか、サンタ・ク・ロースはニヤニヤしていた。
「ひ、一人でって!? 如何やって?」
「儂の魔法じゃよ。お主は体感したじゃろ?」
サンタ・ク・ロースはブルースターに視線を合わせた。
心当たりがあることが一つあったので、「もしかして?」と考えだした。
「あの時、急に私の魔術が威力を増したのは……」
「そうじゃよ。これも儂の魔法があってこそじゃ」
ブルースターは謎が解けて口を開けていた。珍しい表情だった。
先程までは助けられた感覚はあったものの、如何やって助けて貰ったのか分からなかった。
話の流れで何となく助けられたと思ったのだが、改めて確信に変わった。
「あの、失礼ですがサンタ・ク・ロースさんの魔法はどんな物でしょうか?」
「ん? 気になるか?」
「はい。魔力を増幅させる魔法だとは思いますが……すみません。出しゃばりました」
ブルースターは興奮気味だったが、すぐに抑え込んだ。
魔術師も魔法使いも自分の武器を教えたくはなかった。
とは言え詳細を開示することで、その力を何倍にも膨らませることもできたので、一概に悪いとは言えなかった。
けれどそう易々と教えてくれる訳でもなかった。
だけどサンタ・ク・ロースは自分の魔法に付いて少しだけ教えてくれた。
「良いじゃろう。どうせ理解はできんからの。儂の固有魔法【聖灰】は魔力を飛ばしたり引き寄せたりできるんじゃ。原理に関しては秘密じゃがな。ふぉっふぉっふぉっ」
サンタ・ク・ロースは楽しそうだった。
しかしながらルカはその固有魔法を知っていたので、(だけどあの魔法は……)と内心心配していた。
0
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる