1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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聖夜編

387.火の刃、夜を切る①

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 ルカ達は夜の町を駆けていた。
 孤児院の方を見つめ、あらゆるものを無視して走る。
 《フライ》を全力で使用し、姿も見せず、音も発しないギリギリのラインで飛行していた。

「ちょっとルカ!」

 そんなルカに怒鳴りつける様に声を掛けたのはシルヴィアだった。
 その隣にはダリアも居る。
 二人共待ち合わせ場所の広場に向かう道中で、急に反対方向に飛んで行くルカを見かけて追いかけてきたのだ。

「なに、シルヴィ?」
「聴こえているなら返事くらいしなさいよ」
「ごめん」
「謝らなくていいわ。それより何かあったのよね?」

 シルヴィアは神妙な面持ちでルカに尋ねる。
 眉根を寄せ、きっとそうだと言わんばかりの表情を見せる。
 けれどこれも経験上仕方がない。ルカが何の意味もなく険しい表情になるはずがないのだ。
 これまでの経験が活きたのか、シルヴィアはある程度推測した。

「この先、孤児院よね?」
「そうだよ。今から向かっているんだ」
「どうせそうよね。それで、何かあったの?」
「さあね。でも、あった可能性もあるから向かっているんだよ」

 あまりにも漠然とした回答にシルヴィアは怪訝そうだった。
 しかし何かあってからでは遅い。何かある前に行動できたのは、それだけ予期していたからに違いない。
 千年間の経験がルカを馳せらせ、本当なら後で向かう予定だった孤児院にひた走らせるのだ。

「ルカさん、魔眼を使いますか?」

 ダリアはルカに尋ねる。するとルカはいつもなら、「必要だと思ったら使ったら?」と促すような口ぶりを見せる。けれど今は違った。
 クルリと振り向くと、コクリと首を縦に振っている。

「頼めるかな?」
「はい!」

 ダリアは頼られたことを嬉しそうに元気よく答える。
 すると目の色が真っ赤に染まる。おまけに髪の色も赤に変わる。
 まるで炎を体現したようなダリアの姿を確認すると、急に「えっ!?」と悲鳴を上げる。

「如何したのよ?」
「ルカさん、この魔力って……」
「ダリアも気付いた? この魔力、相当黒いよ」

 ルカが言うように黒い魔力がどんよりと流れ込んでいた。
 その中でも特に凶悪なものが一つある。
 探知した限りだと、一番相手にしたくはない敵で、今からそれと交戦になるかもしれないと思うと緊張感が血管を突き上げる。

(それにしても空気を伝って町の方まで……嫌だな)

 ルカは苦しい表情を起こす。
 しかしシルヴィアはルカに言った。

「孤児院があるんでしょ? 黒い魔力が悪者って言うのは分かったわ。だけどね、子供達の鮮血で染める気は無いんでしょ?」
「もちろんだよ」
「だったら如何するか決まっているわよね」
「それも決まってる。全力で叩くよ」
「ふん、仕方ないわね。ダリアもいいわね?」
「任せてください。私の炎と剣は皆さんを助けるためにあるんです!」

 とても頼もしいことを言ってくれた。
 ルカもシルヴィアも急ぎ孤児院へと馳せ参じる。



 一方その頃、ライラックとブルースターは広場にやって来ていた。

「あれ?」
「皆さん居ませんね?」

 二人はルカ達が居ないことに首を捻る。
 しかしブルースターは何かあったのではと推察し、キョロキョロと魔力の跡を辿る。
 何か異変があれば分かるはずだと悟ったものの、ルカの前では無力。
 対してライラックは得意の糸を使い空気を震わせ音を伝う。

「うーん、こっちかなー?」
「分かったんですか、ライラックさん?」
「多分ねー」

 ライラックは糸を回収した。
 それからブルースターに方向を示す。

「こっちかなー、こっちから音がするんだよねー」
「音? 私には聴こえませんが?」
「まあ、振動だからねー。音って言っても完全に聴こえるわけじゃないけどさー。ほら、音って糸とか使うじゃん? それみたいな感じかなー?」
「……本当に便利な糸ですね」
「まあねー。でもさ、こうなるくらいなら誰かに糸を引っ付けておけば良かったよー」

 必要無いと思い、あえて付けなかったことが災いした。
 しかし音が分かるのなら追えないことはない。
 ブルースターはライラックに提案する。

「皆さんを追ってみましょうか」
「そうするー? 確かにさー、ドンドン離れているんだよねー」
「では尚更ですね。ライラックさん、私に掴まってください」
「オッケー」

 ライラックは糸を飛ばして、ブルースターに巻き付けた。
 腰の所に見えない糸が巻かれ、ブルースターはその部分にだけサンタ・ク・ロース用の衣装に備えられていたベルトを当てる。

「これで《オーロラウィング》が使えますね」
「それじゃあ行ってみよー!」
「はい、《オーロラウィング》」

 ブルースターはオーロラ色の翼を背中から展開した。
 偉大なる輝きが夜を鮮やかに彩る。
 そのまま空へと舞い上がると、夜の町の静寂を掻き切った。

「こちらの方角でしたよねー」
「そうだよー」
「それでは行きますね」

 ブルースターは《オーロラウィング》をはためかせて飛んだ。
 ライラックもしっかりと腰に纏わり付くと、振り落とされないように細心の注意を払って力を込める。
 二人がルカ達に追いつくのは少し後になる。その頃には、ルカ達は戦っていることをこの時の二人はまだ知らない。
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