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聖夜編
394.ダリアと小男①
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炎の壁を境にして、ダリアは小男チッチと迎え合っていた。
ダリアは《剣錬成》で新しく剣を構え、チッチはナイフをクルクルさせている。
リーチの差は圧倒的。けれどダリアは油断の一つもせず、大きく距離を取っていた。
「シルヴィアさん、そっちはお願いしますね。私はこの方を必ずや倒して見せますから」
「はぁ? この俺を倒すって言ってんすか?」
「はい、そのつもりですよ」
「そんな野無理だっつーの。この俺に勝てると思うなよ、女! さっきは油断したが、今度はそうはいかねぇっすよ」
チッチは得意のナイフ捌きでダリアに攻め込む。
ベルトから何本ものナイフを取り出すと、早速投げ付けて来た。
「死ねっす!」
「そんなの効きませんよ」
チッチが投げ付けて来たナイフを長剣で払い落とした。
あまりにも手応えが無い。ダリアは囮だと推察すると、目の前にはチッチの姿が無くなっていた。あまりにも一瞬の出来事すぎて周囲を見回すと、右側から殺気を感じ取った。
「こっちですね!」
「なっ!? この俺の殺気に気が付いた!?」
ナイフと長剣がぶつかり合う。
火花を散らし金属音が響き渡る。
けれど力の差は歴然で、金属の密度の問題もあり、ダリアは簡単にチッチを跳ね除けた。
「ど、如何なっているんすか? なんで俺の殺気に気が付けるんすか!」
「殺気に気が付けるですか?」
「そうっすよ。敵にこんなことを言いたくはないけどっすね、俺はこう見えて盗賊。しかも腕は二流以下でも、殺気を殺すことに関しては一流以上っす。そんな俺の殺気を感知できるなんて、バケモンっすよ!」
動揺の色が強く出ていた。如何やらダリアの隙を生む作戦ではないらしい。
とは言え殺気に気が付けた理由なんてもの、明確にダリアには定まっていない。
魔眼も使っていない今において、殺気に気が付けた理由は一つしか考えられなかった。
「私が死の香りを知っているからですかね?」
「はぁ? なんだそりゃ」
「貴方、人を殺めたことはあるんですか?」
「はぁ? あるに決まってんだろ。そりゃもう、何人もな!
「…我を忘れて人の命を殺めたことはないんですか?」
「あるわけねえだろ。邪魔立てするなら殺すだけっすよ!」
チッチは新しく取り出したナイフを赤い舌で舐めた。
剣の鉄分が口の中に広がる。新品はいい。けれどもっと血の味に染まった時の方がいい。
チッチは邪悪に染まった瞳を爛々とさせ、ダリアのことを嘲笑うみたいに舐め回した。
「そんな傲慢で愚かな方に私は負けるわけにはいかないですね」
「なに言ってるんすか? アンタはここで死ぬんすよ」
チッチは持っていたナイフを突きつけてダリアに飛ばした。
先程と全く同じ攻撃。これなら余裕で躱せる。
ダリアもそう思い身を逸らして攻撃を回避しようとした。
直線的な投げナイフくらいは剣で捌かなくても良いと高を括っていたのだが、何故か投げナイフは直線的ではなくゆっくりと軌道を変えてダリアを追尾した。
「はっ!? 《スカーレットファイア》!」
軌道を変えて追尾して来たナイフを、ダリアは炎の魔術で溶かしてしまった。
しかしそれが仇となった。ナイフが溶けたのはいいが、注意を散漫にしてしまったせいでチッチの姿を見失う。
敵の姿を視界から外した覚えはない。けれど殺気が先程よりも薄くなり、ダリアの意識の外側に逃げてしまった。
「何処に行ったんですか?」
キョロキョロ周囲を見回してみた。
しかしチッチの姿は無い。影も形も見当たらないが、ここから逃げたとは思えない。
シルヴィアとクブに隔てる炎の壁。
それを超えることなど、上を渡るか下に潜るしかない。
「上か下……まさか!」
「死ねっすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
上を見上げると、チッチが降って来ていた。
ナイフを下に向け、ダリアを標的に貫こうとする。
脳天目掛けて落下してくるので、ダリアは咄嗟に魔術を使って守った。
「《スカーレットバリア》!」
ダリアのことを守るように炎のバリアが発動した。
チッチのナイフは炎で溶かされてしまいふいうちは失敗に終わる。
対するダリアも予期せぬ魔力の消費に指先が震えていた。
魔法剣士らしくもない取り乱しように先生に笑われてしまうと口元を拭う。
「もう少しだったんすけどね! なかなかしぶといっす」
チッチは不意打ちが失敗に終わったにもかかわらずまだまだ余裕そうだった。
ダリアはその素振りに違和感を感じた。先程、腕は二流と言っていたがこれではまるでそれすら嘘。動きも何もかもが一流で、綻びのようなものが見えなかった。
「コレはマズいですね……それでも、私は……」
長剣を杖に使い姿勢を保つ。
やけに奪われる体力に意識が朦朧とする中、鼻腔の奥を嫌なものが劈く。
「うっ! これはまさか……毒!?」
ダリアが苦戦している理由が全て解った。
いつの間にかチッチによって撒かれた体に影響のある毒素が全身を駆け巡っていた。
指先が震えるのも、動きや注意が鈍るのも全てに合点が行った。
けれどそれが分かった所で体中の毒素を取り除くことはできないので、ダリアは苦戦を強いられることになっていた。
ダリアは《剣錬成》で新しく剣を構え、チッチはナイフをクルクルさせている。
リーチの差は圧倒的。けれどダリアは油断の一つもせず、大きく距離を取っていた。
「シルヴィアさん、そっちはお願いしますね。私はこの方を必ずや倒して見せますから」
「はぁ? この俺を倒すって言ってんすか?」
「はい、そのつもりですよ」
「そんな野無理だっつーの。この俺に勝てると思うなよ、女! さっきは油断したが、今度はそうはいかねぇっすよ」
チッチは得意のナイフ捌きでダリアに攻め込む。
ベルトから何本ものナイフを取り出すと、早速投げ付けて来た。
「死ねっす!」
「そんなの効きませんよ」
チッチが投げ付けて来たナイフを長剣で払い落とした。
あまりにも手応えが無い。ダリアは囮だと推察すると、目の前にはチッチの姿が無くなっていた。あまりにも一瞬の出来事すぎて周囲を見回すと、右側から殺気を感じ取った。
「こっちですね!」
「なっ!? この俺の殺気に気が付いた!?」
ナイフと長剣がぶつかり合う。
火花を散らし金属音が響き渡る。
けれど力の差は歴然で、金属の密度の問題もあり、ダリアは簡単にチッチを跳ね除けた。
「ど、如何なっているんすか? なんで俺の殺気に気が付けるんすか!」
「殺気に気が付けるですか?」
「そうっすよ。敵にこんなことを言いたくはないけどっすね、俺はこう見えて盗賊。しかも腕は二流以下でも、殺気を殺すことに関しては一流以上っす。そんな俺の殺気を感知できるなんて、バケモンっすよ!」
動揺の色が強く出ていた。如何やらダリアの隙を生む作戦ではないらしい。
とは言え殺気に気が付けた理由なんてもの、明確にダリアには定まっていない。
魔眼も使っていない今において、殺気に気が付けた理由は一つしか考えられなかった。
「私が死の香りを知っているからですかね?」
「はぁ? なんだそりゃ」
「貴方、人を殺めたことはあるんですか?」
「はぁ? あるに決まってんだろ。そりゃもう、何人もな!
「…我を忘れて人の命を殺めたことはないんですか?」
「あるわけねえだろ。邪魔立てするなら殺すだけっすよ!」
チッチは新しく取り出したナイフを赤い舌で舐めた。
剣の鉄分が口の中に広がる。新品はいい。けれどもっと血の味に染まった時の方がいい。
チッチは邪悪に染まった瞳を爛々とさせ、ダリアのことを嘲笑うみたいに舐め回した。
「そんな傲慢で愚かな方に私は負けるわけにはいかないですね」
「なに言ってるんすか? アンタはここで死ぬんすよ」
チッチは持っていたナイフを突きつけてダリアに飛ばした。
先程と全く同じ攻撃。これなら余裕で躱せる。
ダリアもそう思い身を逸らして攻撃を回避しようとした。
直線的な投げナイフくらいは剣で捌かなくても良いと高を括っていたのだが、何故か投げナイフは直線的ではなくゆっくりと軌道を変えてダリアを追尾した。
「はっ!? 《スカーレットファイア》!」
軌道を変えて追尾して来たナイフを、ダリアは炎の魔術で溶かしてしまった。
しかしそれが仇となった。ナイフが溶けたのはいいが、注意を散漫にしてしまったせいでチッチの姿を見失う。
敵の姿を視界から外した覚えはない。けれど殺気が先程よりも薄くなり、ダリアの意識の外側に逃げてしまった。
「何処に行ったんですか?」
キョロキョロ周囲を見回してみた。
しかしチッチの姿は無い。影も形も見当たらないが、ここから逃げたとは思えない。
シルヴィアとクブに隔てる炎の壁。
それを超えることなど、上を渡るか下に潜るしかない。
「上か下……まさか!」
「死ねっすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
上を見上げると、チッチが降って来ていた。
ナイフを下に向け、ダリアを標的に貫こうとする。
脳天目掛けて落下してくるので、ダリアは咄嗟に魔術を使って守った。
「《スカーレットバリア》!」
ダリアのことを守るように炎のバリアが発動した。
チッチのナイフは炎で溶かされてしまいふいうちは失敗に終わる。
対するダリアも予期せぬ魔力の消費に指先が震えていた。
魔法剣士らしくもない取り乱しように先生に笑われてしまうと口元を拭う。
「もう少しだったんすけどね! なかなかしぶといっす」
チッチは不意打ちが失敗に終わったにもかかわらずまだまだ余裕そうだった。
ダリアはその素振りに違和感を感じた。先程、腕は二流と言っていたがこれではまるでそれすら嘘。動きも何もかもが一流で、綻びのようなものが見えなかった。
「コレはマズいですね……それでも、私は……」
長剣を杖に使い姿勢を保つ。
やけに奪われる体力に意識が朦朧とする中、鼻腔の奥を嫌なものが劈く。
「うっ! これはまさか……毒!?」
ダリアが苦戦している理由が全て解った。
いつの間にかチッチによって撒かれた体に影響のある毒素が全身を駆け巡っていた。
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