1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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聖夜編

401.ライラックVS召喚士

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 ブルースターは指先を銃口に見立て、ウォビュートモールを狙っていた。
 その動きを皮切りに、ライラックもアイコンタクトで伝えた作戦を敢行。
 召喚士の男に飛び掛かり、《鋼鉄の糸》を飛ばした。

「よそ見している暇、無いんじゃないかなー?」

 《鋼鉄の糸》がローブを失った男に放たれる。
 鋼鉄製のため威力も桁違い。
 当たっただけで腕は折れる代物で、扱いは難しいがライラックの手に掛かれば、まるで針の穴を縫うように動き回った。

「チッ! 来い、サラマンダラ!」

 召喚士の男は手をパンと合わせた。
 すると地面に赤い陣が描かれて発光する。
 高熱を放ちながら飛び出してきたのは、全身が真っ赤な炎に焼かれる蛇だった。

「蛇!? 仕方ないなー」

 ライラックは面倒に思いつつ、標的を飛び出してきた蛇ことサラマンダラに変更。
 《鋼鉄の糸》をお腹にぶつけてダメージを与えた。
 しかし全身が既に焼かれているせいなのか、本当は痛いはずなのにまるで苦しむ様子が無い。それどころかより一層炎を噴き出して、「シュシャァ!」と威嚇する。

「マジですかー? 痛がって強くなるとか信じられないんだけどー」

 ライラックは苦言を呈した。
 表情を濁し、眉根を寄せてしまう。
 眉間に溜まった皺だったが、すぐに肩から呼吸をして気を整えると、ブルースターに叫んだ。

「ブルースター、こっちはちょっと手こずりそうだけどさー。そっちは耐えられる?」
「任せてください。こちらのモンスターは私が抑えておきます」
「オーケー。んじゃ、とっとと倒そっかなー」

 本命のモンスター、ウォビュートモールを一旦ブルースター一人に預ける。
 その最中、ライラックは一人で召喚士を相手取る作戦だ。
 しかし召喚士の男は、「はぁ?」と疑問を投げる。

「俺に勝てる? 二対一で」
「もちろん。それくらいできないとさー、今まで生き残ってこれて無いってー」

 ライラックはこれまでやって来たことをダイジェストに振り返った。
 当然召喚士の男にそのことが伝わるはずもない。
 だからだろうか。余裕な笑みを浮かべていた。

「それじゃあ、ここからは少しだけ本気で行くよー」
「ふん。本気とは言っても所詮は……グハッ!」

 召喚士の男は本領を発揮し、サラマンダラを操ろうとした。
 しかし手を前に出した瞬間、片足が地面の中に引きずり込まれる。
 突然のことに動揺してモンスターを操ることも忘れてしまう。
 それどころかパニックになってしまった。ドンドン片足が地面の中に引きずり込まれていき、痛みが骨に直接刺激を与える。

「いっつ! な、なんだ、体が……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 脚が股関節から剥がれそうになる。
 それ程までの痛みが神経を伝い脳に伝達されていた。
 その間も骨は絶えず軋み、ドンドン体を地面の奥底へと引きずり込もうとする。
 気が付けば股間まで体が埋まり、反対の脚はピンと伸ばされていた。

「痛いでしょ。これが私の糸の一つ、《鉄潜かなぐらの糸》だよ」

 そんなのを聴きたいわけじゃなかった。
 早く何とかしないと足が変形する。
そう思った召喚士の男はサラマンダラを操ろうと手を出した。けれど手の甲に衝撃が走る。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! はぁはぁ……手が、手が……」

 ライラックは《鋼鉄の糸》を容赦なく召喚士の男の手の甲に叩き込んだ。
 何本か骨に罅が入ったようで、感覚が無くなってしまった。
 指先がピクピクと動く程度で反撃の意向も無くなる。

「どうどう? 私強いでしょー。怖いでしょー。悍ましいでしょ?」

 ライラックは召喚士の男を威圧する。
 殺気を飛ばし、全身を震え上がらせる。
 体が硬直して動けなくなり、気が付くとサラマンダラも消えていた。

「はぁはぁはぁはぁ……頼む、もう許してくれ」
「それは私に言うことじゃないでしょ? まだ反撃の余裕があるんでしょ?」

 召喚士の男は震える手と血を流す目で奥歯を噛んでいた。
 悔しいが反撃の余地はある。少なくとも召喚士の男はウォビュートモールを呼んでいた。
 コイツがいれば負けることはない。そう高を括っていた。

「悪いけどさー。アレも仕舞ってくれるかなー?」
「はっ、そんな真似するはずが……ぐはっ!」
「私、甘くないよー?」

 召喚士の男をライラックは苦しめた。
 反撃の余裕も与えない。息苦しくなると、そのまま目を回して白めになった。
 呼吸が荒くなり、気が付く間もなく気を失ってしまった。

「ありゃぁ? 気を失ってるよー。まあいっか、あのモグラも……消えて無い? なんで」

 振り返ってウォビュートモールを見た。召喚士が気を失うとモンスターも消える。そう相場が決まっていた。
 けれど振り返るとモンスターは平然としていた。
 その場に残りブルースターを追い詰めている。一体何が起きているのか召喚士の男に訊きたかったが、気を失ってしまっているので分かるわけもなかった。
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