1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

文字の大きさ
430 / 733
聖夜編

426.消えた男と残された遺体の謎

しおりを挟む
 ルカとドリアードは神妙な顔付きになった。
 ここまで積み上げて来た明るい空気が一変する。
 一体何処に消えてしまったのかと思うくらい、重苦しい雰囲気が漂った。

 ルカとドリアードが気にかけているのは孤児院を襲った誘拐犯の連中だ。
 おそらく今回だけではない。
 以前からこの手の犯罪に手を染めていたに違いなかった。

「ルカさん、貴女はどうお考えですか?」
「如何とは?」
「今回の誘拐未遂事件、あの男達がこれまでに絡んできた事件の数々、如何お考えですか?」
「如何と言われても困るかな。ただし、あの男達が他の事件に絡んでいる可能性はゼロではないからね。仮に誘拐をしていなかったとしても、未遂という結果は生まれた。それだけで十分だよ」

 ルカは特に興味を抱いていなかった。
 むしろ考えるところはそこではなく、ルカが頭を使う余地はない。
 この事案は町や国が頭を悩ます話で、ルカが関わる方がおかしかった。

「確かに、誘拐未遂自体は起こってしまった結果」
「そういうことだよ。問題は他の事件に加担している場合。国際問題にもなりかねないからね」
「やはりそうですか」

 如何考えても、国際問題の筈だ。
 ダリアも後でスカーレット王国にこの話を持ち帰る予定らしい。
 そんな中、ルカ自身は面倒に巻き込まれなければと、心から願っていた。
 もちろん手伝えることはあるかもしれないが、そこまで手を貸す義理は無いのだ。
 だからだろうか。前以って釘を刺すことにした。

「悪いけど、私に頼らないでね。なにもしてあげられないし、する気も無いから」
「ん? 貴女は非情な人間ですね。同じ種族でありながら、その態度」
「仕方ないよ。結局他人は他人。人間は大勢の意見には従うが、個としての力は著しく非力。だから他人に何て興味は無いし、目を向けている時間はない。自分も大事にできないし、他人のことも大事にできない、憐れな生き物なんだから」

 ルカは人間賛歌を口にした。否、人間の愚かさを強調した。
 するとドリアードは不敵な笑みを浮かべた。
 当たり前だ。精霊と人間では根本で違う面があるのだ。

「烏滸がましい考えです」
「そうかな。私は私の考えを準じているだけだよ?」
「それが烏滸がましいんですよ」

 ルカは自分の考えを間違っているとは言わなかった。
 人間誰しも自分なりの考えと根拠を持っている。
 だからルカはドリアードに咎められても頑固なまでに自分の根拠を突き通した。

「まあそれはいいとして、男達への尋問は如何なってるのかな?」
「続いていますよ。とは言え、いくら問おうが欲しい情報は吐きませんがね」
「だろうね。それじゃあなにか分かったことはあるの?」

 ルカはここまでの話を聞いていなかったのか、あまりにも矛盾することを尋ねた。
 するとドリアードは食い付くことはせず、淡々と呟いた。
 如何やら最初から理解してくれていたらしい。

「私の能力を使って分かったのは、やはり逃げた男の行方です」
「そうだよね。取り逃したこと、シルヴィに散々怒られたよ」

 ルカもドリアードも一番危惧していたのは逃げた召喚士だ。
 もっとも、本当に召喚士だったのかすら危うい。
 あれだけ卓越した魔術の使い手だ。召喚士は建前と見てもおかしくは無く、ライラックの攻撃をわざと食らい、意識がモンスターに向いている隙に逃げる算段と整えていたとしか思えないのだ。
 全く、賢くて実力もある程度備えた魔術師は面白くて厄介だ。

「それで見つかったの?」
「私のこの反応で見つかったと思っているの?」
「思ってないよ。どうせ見つかってないんでしょ?」
「ムカッ!」

 ドリアードは怒っていた。眉根を寄せていた。
 ルカは可愛いなと思ったが、口に出すとブチ切れされそうなので敢えて無言を貫く。
 しかしドリアードはその隙を見逃さず、ルカを非難する。

「そういう貴女は見つかったんですか?」
「いいや、流石に私は世界の全てを見通す目もあらゆる生物を探知する力も持ってないよ。それに興味もないからね」

 ルカは自分のことを顕著に見てはいなかった。
 だからだろうか。おごり高ぶることもなく、冷静に無理なものは無理だと伝える。

「それで私を非難したんですか?」
「とは言え、魔力の断片は覚えたよ。魂の一部、波動くらいは感じたかな」

 次に会ったら見間違うことはないだろう。
 ルカは自信満々に笑みを浮かべていた。

「それくらいなら私も感じ取りましたよ」
「えっ、本当? 凄いね、もうそこまで進んでたんだ」

 ルカは素直に驚いた。流石はこの町の市長であり大地の精霊だ。
 おまけにルカに教えてくれたのは、それに伴う不思議な事件だった。
 ムッと唇を噛むと、ルカに知恵を借りたい素振りを見せる。

「ただ、おかしなことに途中で魔力の波動と断片がプッツリ消えていたんです」
「消えてた? へぇ、隠すのが上手いんだね」
「そうではなく、別人の魔力に・・・・・・すり替えられていた・・・・・・・・・んです・・・
「はっ? すり替えるってなに、まるで別人みたいな言い方だね」
「そう言うことですよ。私が見つけたのは大地に横たわる男の遺体。あまりに不自然な状況で、貴女を知恵を借りたいんです」

 ドストレートに申し出喰らってしまった。
 とは言え不思議なこともあるものだ。今の時代にそんな不可思議な真似をするなんてと、ルカは紅茶を飲みながら、ティーポットから新しい紅茶を注ぐのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ

蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。 とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。 どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。 など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。 そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか? 毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...